『昭和堂薬局』

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎について

 「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くがアトピー素因を持つ」
 アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生し易い素因
 これが日本皮膚科学会の定義です。
 湿疹症状は、紅斑(赤み)、丘疹(ブツブツ)、水泡(水ぶくれ)、糜爛(ただれ)、痂皮(かさぶた)、鱗屑(ふけ)、苔癬化(ごわごわ)、などが混在、対称性傾向、掻痒を伴う、繰り返し再発、よく慢性化になる。

 アトピー性皮膚炎は、高度成長期の急激に変化した環境因子(食生活・大気汚染・住環境・精神的環境など)で、体内の免疫(異物排泄機能)が乱れたことにより生じた疾患です。

 人間は体の隅々まで栄養や水分が届いてはじめて健康でいられます。
 しかし、何らかの原因で皮膚に栄養や水分が届かなくなり、皮膚のバリア機能が働かなくなることにより外からの刺激を受け、皮膚表面に炎症が起きたものをアトピー性皮膚炎と中医学(漢方)では捉えます。

 子供のアトピーは、成長することにより臓腑(内臓)がしっかりしてきて自然に症状が無くなっていくのですが、偏食やあまり良くない環境の影響を受け成人しても良くならないのが成人型アトピーで、最近、このタイプが増えています。
 漢方で体のバランスと整え、同時に食習慣と生活習慣を改善して皮膚を正常にしていきます。
 食習慣の改善は、和食中心にし、脂っこいものを避け、インスタント類や加工食品を控えることです。
 生活習慣の改善は、適度な運動やのんびりとした時間を作ることです。
 アトピーの原因は人により異なります。一人ひとりの原因をとらえ、それを改善することにより80%くらいの人がよくなります。

 また、ここ10年で、中医学(漢方)の新しい考え方が、注目され始めて、アトピー改善の率が上がり始めました。
 いろいろなことをしたけど良くならない方は、一度ご相談ください。

特徴

乳幼児期の特徴
好発部位:頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に下降
頭部の脂漏、顔面部の湿潤性、紅斑、丘疹、水泡、糜爛など。
小児期の特徴
好発部位:頸部、四肢屈曲部に病変
顔面、体幹部の紅色丘疹、単純性粃糠疹(はたけ)、鳥肌様丘疹、肘窩・膝窩の苔癬、手足の落屑など。
思春期・成人の特徴
好発部位:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向
環境因子のダニ、ハウスダストなどや、ストレスが原因で起こる。
苔癬化肥厚、痒疹、紅斑、糜爛などで、顔面の難治性紅斑が多くみられる。

注意してほしい食生活・生活習慣

食べて欲しくないもの
・インスタント食品
・加工食品や保存料など食品添加物を多く含むもの

控えて欲しいもの
・動物性の油やサラダ油など

よくない生活習慣
・夜更かし
・過度な冷暖房
・忙しい生活
・運動不足 


積極的にしてほしい食

・和食(日本人に一番あっている食)
・季節の野菜や豆類・キノコ類・ゴマ類・魚(青魚)

積極的にしてほしい生活習慣

・散歩(有酸素運動)体に無理のないストレッチ(ラジオ体操・ヨガ・太極拳)
・体に力が入っていないゆるい時間をつくる
・趣味(日頃のストレスが忘れられるように集中できる心地よいこと)

生活上の注意事項

・汗をかいたら早めにシャワーや入浴で洗いながしましょう
・入浴後は、体をさっと拭きすぐに保湿剤を塗りましょう
・爪を短く切り、掻いても傷つきにくくしましょう
・皮膚になるべく刺激のない下着(絹や木綿)をつけましょう
・室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境をつくりましょう

スキンケアの重要性

正常な皮膚は角層、表皮の細胞が詰まっていて潤いも十分あり、外からの刺激に対してもバリアができているが、乾燥皮膚は細胞がスカスカで水分が容易に蒸発しやすく、外からの刺激に対してもバリアができない状態になっている。さらにアトピーでは炎症がおこり皮膚がぼろぼろになった状態であるため、皮膚の水分はさらに少なくなり外からの刺激を受けやすくなる。適切なスキンケアで水分補給や水分の蒸発を防ぐために皮膚表面に油膜をつくる必要があります。
正常皮膚と乾燥皮膚


漢方的所見

乳幼児・小児に多い
・湿型
・湿熱型

成人に多い
・乾燥型
・血虚型
・血燥生風型
・血熱燥風型
・陰虚血燥型
・陽虚浮火型

漢方治療

皮膚症状は紅斑(赤み)丘疹(ブツブツ)水疱(ジクジク)膿胞(黄色いジクジク)糜爛(ただれ)痂皮(かさぶた)鱗屑(ふけ)苔癬化(ゴワゴワ)など、多岐にわたり急性期は赤くジュクジュク、慢性期はゴワゴワ・カサカサになり急性症状と慢性症状が複雑に強く出たり弱くなったりする。図にあるように皮膚症状で熱・湿・燥の状態を判断し、それぞれの漢方薬(熱:清熱薬、湿:利湿薬、燥:滋陰薬)を合わせ、皮膚症状の変化で微調整しながら体質(胃腸虚弱:補脾)や環境因子(ストレス:疏肝)などを考慮し治癒の方向に導いてゆく。
 最近ではこれに寒さを伴うアトピー(陽虚浮火型)は新しい中医学理論(扶陽法・中医火神派)を使用すると良いケースもある。
湿疹三角形

最後に

アトピーの息子を持つ親として少し言わせてください。
 あるアトピーの闘病記を読んで思ったのですが、悪化するタイミングで対処が出来たのか、日頃の生活習慣や食生活はどうか…という点です。
 アトピーは子供が成長していくときに必ず悪化する時があるように思います。
 ある闘病記では大学受験、一人暮らしによる生活環境や食生活の変化などにより、あっという間に悪くなっていったようですし、悪くなっていくと精神的にも身体的にもかなり辛い状況になっていきます。
 私の息子も、受験期や大学生活のちょっとしたことをきっかけに悪化しましたが、幸い私の息子は、子供の頃の人(桑田真澄さん)との出会いで本人が少し努力(栄養補給の一環でサブリメントの服用・スキンケア)していること、親元から大学に通っていることで生活環境や食生活があまり変化しなかったため、早い段階で回復しました。
 自分の子供の皮膚がゴワゴワしていたり、滲出液が出てそれが乾燥してかぴかぴになっているのを見ると辛くなります。
 日本の高度成長期の弊害の一つがアトピーとして現在警告を鳴らしているのではないかと思っています。
 アトピーは悪化するとなかなか難しい病気ですし、これを飲めば、これをすれば必ず良くなるという物はないと思います。その人その人に合った方法があります。
 自分に合った食生活・生活環境の改善の方法を見つけていくことで、この先の違った人生が見つかるように思います。
 茨の道ではありますが、一緒に自分に合った方法を見つけてゆきましょう。


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。