『昭和堂薬局』

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新型コロナウイルスについて

 2019年末に中国武漢に出現し、世界中に伝播した新型コロナウイルス感染症。私たちは今までに経験したことがないウイルス感染症と共に生きていくことを強いられてしまいました。そこで、現時点でわかってきたこのウイルスについて簡単にまとめてみました。

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はコロナウイルス科に属するRNAウイルスです。コロナウイルスはヒト以外にもコウモリ、ブタ、ネコ、ネズミ、モグラ、ラクダ、トリなどの動物に病原性を示すものがたくさん存在します。これら多くのコロナウイルスは、オルソコロナウイルス亜科とレトウイルス亜科に分けられ、オルソウイルス亜科はアルファコロナウイルス属・ベータコロナウイルス属・ガンマコロナウイルス属・デルタコロナウイルス属に分類されます。そのうち以前より知られているコロナウイルスは4種類あり、ヒトの風邪ウイルスで軽症の上気道感染症の原因ウイルスでした。これらに加え、2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスと2012年にMERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルスがヒトに重篤な呼吸器感染症を起こすウイルスとして発見されました。そして今回、ヒトに病原性を示すコロナウイルスとして新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発見されました。このSARS-CoV-2はベータコロナウイルス属で、ヒトのウイルスではSARSウイルスに近い関係にありますが、野生のコウモリから分離されたコロナウイルスとは更に近い関係にあり、このコウモリのウイルスから派生したウイルスが何らかの理由でヒトに感染して流行がはじまったと考えられています。

 

 コロナウイルスは一本鎖のRNAを遺伝子とするウイルスで、ウイルス粒子はエンペローブ(脂質二重膜)に包まれています。ウイルス粒子の表面はエンペローブから突き出したスパイクと呼ばれるSタンパク質の突起物があります。コロナウイルスのスパイクは大きく王冠(crown)のように見えることが名前の由来になっています。スパイクはウイルスが感染するときに細胞上のレセプターに結合する機能を持っています。以前流行したSARSコロナウイルスはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)をレセプターとして利用していますが、SARS-CoV-2もACE2を利用していることが実証されました。このレセプターは下気道(肺胞上皮)、上気道、口腔粘膜、舌、小腸、心臓、腎臓にも発現しています。

 

 過去の重篤な病原性を持つコロナウイルス(SARS、MERS)の流行はパンデミックに至りませんでした。なぜ今回の新型コロナウイルス感染症がパンデミックを起こしたのか、それは、体内における増殖特性の差にあると考えられます。SARS・MERSウイルスは下気道(肺)で増殖していました。このためウイルスがなかなか体の外に出にくい状態でした。今回のSARS-CoV-2は下気道のみならず上気道でも増殖し、重篤化の前からたくさんのウイルス粒子が上気道分泌液に排出されていたことで、容易にウイルスが体の外に排出されてしまい、従来の感染重症者隔離策では対抗できなかったのです。(SRASはこの隔離策で収束しています。MRASはラクダがウイルスをもってしまったため完全には収束に至っていません。)


昭和堂薬局 | 2021年2月18日

 

新型コロナウイルスで大騒ぎになってますね

 最近、他の執筆活動があり、本コラムの更新が遅くなってしまいました。申し訳ありません。

 

 さて、中国武漢市で集団感染した新型コロナウイルスについて、WHO(世界保健機構)が「国際緊急事態」を宣言しました。現在、このウイルスに対する薬はなく、水際対策が中心です。(タイでHIVウイルスとインフルエンザウイルスの薬で効果があったとする報告は出ましたが…)
 不幸にして亡くなられている方々のほとんどは、高齢者や元々何らかの病気を持っている人たちのようです。
 このことから考えると免疫力が弱っていると危険であることが想像できます。
過剰に恐れるのではなく、通常のインフルエンザと同じ様な対策でいいのではないかと思います。情報に過剰に反応して、必要以上に防衛しようとしても、そのことがストレスになり逆に免疫力を下げてしまう結果にもなりかねません。
 漢方的な予防としては、外界から自分の身体を守る「衛気」が重要です。この「衛気」をしっかりさせるためには、バランスの良い食事を摂り、胃腸(脾胃)を調えることが大切です。また、「衛気」は全身に巡り、体を守るもので、ストレスをためてしまったり1日中じっとして身体を動かさないと「衛気」は滞りやすくなります。
漢方で予防する場合は、益気・清熱解毒・抗ウイルスが中心になります。益気の代表処方は玉屏風散、清熱解毒の代表処方は銀翹散、抗ウイルスの代表生薬は板藍です。
 これらの漢方も予防の一例です。これが絶対ではありませんし、各々個人の状況にもよると思います。
もう立春で、暦の上では春になりましたが、まだまだ乾燥や寒さが厳しい季節ですので、保温や保湿には十分気を付けて、過度に恐れて家に閉じこもることは避けないといけません。(春の養生は、陽気を適度に発散することです。)


昭和堂薬局 | 2020年2月4日

 

女性の悩みと中医婦人科

 中医婦人科から見ると、女性の月経・妊娠・出産は、臓腑・経絡・気血・天癸(てんき)が子宮に作用して成立するものです。これらの子宮の機能は女性の生理的な特徴であり、男性と異なっている点であります。
子宮は「奇恒の腑」であり「女子胞」「胞宮」ともいわれ、月経を導き、受胎と妊娠をつかさどる器官です。天癸とは腎から生じる人体の成長・発育・生殖を促す物質であり、気血は月経・妊娠・授乳の物質的基礎です。また臓腑は気血を生成する源であり、経絡は臓腑間のつながりをつかさどり、気血をめぐらせる通路です。したがって女性の生理は、臓腑・経絡・気血を基礎に置いて、臓腑・経絡・気血・天癸と胞宮との全体的な関係を理解しなければなりません。特に腎・肝・脾胃および衝任二脈が、女性の生理機能の営みにおいて重要な役割を果たしています。
※「奇恒の腑」…骨・髓・脳・脈・胆・女子胞のことを指します。「奇恒」とは「普通とは異なる」という意味であり、これらは腑でありながら臓に似た性質を持っています。
「臓」とは気血などを生み出し、貯蔵する存在です。「臓」という漢字のつくりが“蔵”になっているのは貯蔵する意味があるためです。
一方の腑は飲食物を消化・吸収・排泄するための器官であり、通常は中空の袋状の器官です。奇恒の腑はこのような通常の腑から考える「常識」から外れた存在であるため、このように呼ばれます。

 

 婦人科における腎
 腎は先天の本であると同時に元気の根であり、精を貯蔵し、人体の成長・発育・生殖の根本を為すものです。また、精は血に変化する源であり、月経や妊娠の物質的基礎です。女子は第2次成長期に入ると腎気が盛んになり,天癸が成熟するのを待って子宮が初めて機能するようになり、月経が始まり、生殖が可能となります。

 

 婦人科における肝
 肝は血を貯蔵し、疏泄をつかさどり、血海(衝脈、血の貯蔵場所)を制御する働きがありますが、その血の貯蔵および血量の調節機能は、子宮の生理機能に重要な影響を及ぼしています。

 

 婦人科における脾
脾は運化(消化・吸収)をつかさどり、気血を生成する源であるため、後天の本といわれています。同時に脾は血を体外に漏らさぬよう統率する働きがあります。すなわち脾が生成し統率する血が、直接子宮の月経・妊娠の機能に物質的基礎として作用しています。

 

 天癸は、先天の精である腎精より生じ、腎に貯蔵して後天の水穀精微(食べ物などから得られる体にとって必要なもの)によって滋養されています。人体は一定の時期になると、腎気が旺盛になり、腎中の真陰が絶えず充実して天癸が次第に成熟します。天癸は腎中に生じ、人体の成長・発育・生殖を促進する物質の一種です。天癸は子宮と密接な関係にあり、子宮の生理機能を促進し成就させるばかりでなく、月経や妊娠を正常に維持する重要な物質でもあるのです。

 

 このように、婦人科疾患に関係する臓腑は主に腎・肝・脾であることがお分かりいただいたと思います。このことを踏まえ、お悩みの症状を全身の機能調節によって改善していくことを目標に漢方薬を選んでいくことが中医学です。
 若い女性においては、機能性月経困難症、月経前症候群(PMS)、産後の体調不良、肌荒れ、便秘、頭痛、冷え症などがよく見られ、中年以後では更年期症状、自律神経失調症などの不定愁訴がよく店頭にお見えになります。これらがどうして起こっているのかを中医学的に解釈し、改善方法を検討していくのです。

 

 この考えに基かないで漢方薬を服用しているケースをよく目にします。処方薬やドラッグストアで選ぶのではなく、東洋医学の知識のある漢方薬局や漢方医に選んでもらいましょう。


昭和堂薬局 | 2019年12月2日

 

雑誌などで女性の体調に関する特集記事は多いと思います。

 女性は自分の身体に関する情報に対し関心がある方が多く、最近も女性向け雑誌に40歳以降の女性の不調について特集が組まれておりました。その記事では女性ホルモンの不足による影響の可能性がある場合、ホルモン補充療法を勧めている内容でした。
しかし、意外にホルモン補充療法を敬遠する人が多くいることも事実です。重大な病気がないのであれば、漢方という選択肢もいいのではないでしょうか。

 

 東洋医学において女性の体調変化をどうとらえていくかをご説明します。
人間の生理現象を著した東洋医学で有名な条文があります。黄帝内経という2千年前の書籍に書かれています。
その黄帝内経素問「上古天真論篇」には、「女子は七歳になると、腎気が充たされだし、歯が抜けかわり、毛髪もまた長くなってきます。十四歳になると、天癸が発育・成熟し、任脈は伸びやかに通じ、太衝の脈は旺盛になって、月経が時に応じてめぐってきます。だから子供を産むことができます。二十一歳になると、腎気が充満し、智(ち)歯(し)(親知らず)が成長して、身体の丈もまたのびきります。二十八歳になると、筋骨はしっかりして、毛髪ののびも極まります。この時期は身体が最も強壮である時期です。三十五歳になると、陽明経の脈が次第に衰え、顔面部はやつれはじめ、頭髪も抜けはじめます。四十二歳になると、三つの陽経の脈はすべて衰えてしまいます。それゆえ顔面部はまったくやつれ、頭髪もまた白くなりはじめます。四十九歳になると、任脈は空虚になり、太衝の脈は衰え、天癸は竭きて、月経が停止します。それゆえ身体は老い衰えて、もう再び子を産むことはできません。」(現代語黄帝内経素問東洋学術出版社より抜粋)と書かれています。(養〇酒のCMで使われていましたよね。)
ちょっと難しいかもしれませんが、簡単に言えば女性は7の倍数で変化していくということです。そして、14歳で生理が起きて子供が産めるようになり、28歳で腎の力が一番強くなり、少しずつ衰えて、49歳で閉経し子供を作れなくなるといっています。(2千年前も今も女性の生殖サイクルは変わらないんですね)
この女性の生殖に関わる根本的な力は腎精です。
では精を貯蔵している腎について見てみましょう。

 

 腎とは
「腎」は身体の中で最も大切な臓器の一つ。中医学では、広く生殖や成長・発育、ホルモンの分泌、免疫系などの機能を併せ持つ“生命の源”と考えられています。

 

・腎の主な働きは、生命を維持するエネルギー源「精」(成長・生殖機能)を蓄える
・体内の水分をコントロール(排尿機能)する
・酸素を体内に深く吸い込む納気機能
・骨や歯、脳、髪などの生育
・耳や尿道、肛門の機能維持

 

 このように、腎は身体全体の健康と深く関わっています。腎に蓄える精が不足し、機能が衰えると不妊症や精力の減退、更年期障害、骨粗鬆症、排尿トラブル、脱毛、健忘症、聴力の低下といったさまざまな不調や老化現象が現れるのです。

 

 加齢により男女とも腎が衰えていきます。特に女性は閉経という生理現象により、女性ホルモンが急激に減少し様々な症状が現われてきます。(個人差があります)

 

 閉経期(東洋医学では絶経期という)には、眩暈、耳鳴り、ホットフラッシュ、発汗、心悸(動悸)、不眠、煩燥して怒りっぽい、潮熱(夕刻の発熱)または顔面・目・下肢の浮腫、食欲不振、下痢または月経異常、情緒不安定などが現われます。

 

 これは“腎虚”という状態であり、さらに腎陰虚、腎陽虚、腎陰陽両虚という状態に分けることができます。閉経期における女性の3分の2以上が腎陰虚であり、残りが腎陰陽両虚です。閉経期は単純な陽虚はほとんどありません。さらに五臓の心・肝・脾に波及して、いろいろな症状を生じます。

 

 出てくる症状により漢方を選択していく必要があるため、ご相談いただくと幸いです。

 

 また冬は、五行学説で考えると「腎」にあたる時期です。腎は寒さに弱いため、身体が冷えたり不摂生な生活を続けると、機能が衰えやすくなってしまいます。積極的な養生を心がけ、腎を健やかに保ちましょう。


昭和堂薬局 | 2019年11月15日

 

妊活のご相談が増えています。

 妊活におけるご相談が増えており、ご相談に来られる方々の年齢の幅も広がっています。
 男性側に問題があるケースで漢方相談に来る方も増えてきています。

 

 約2千年前に記された東洋医学最古の医学書といわれている「黄帝内経」の中の「上古天真論篇」に、東洋医学における男性の生殖能力に関するメカニズムが書かれています。

 以前このコラムで女性についてはお話してさせていただきましたので、今回は男性の身体の変化について述べてみたいと思います。
「男子は八歳になると、腎気が充実しはじめ、毛髪は長くなり、歯が生えかわります。十六歳になると、腎気が旺盛になり、天癸は発育して成熟し、精気が充満して、射精することができ、男女和合して子を産むことができます。二十四歳になると、腎気は充実し、筋骨はしっかりし、智(ち)歯(し)(親知らず)が成長し、身体もまた伸びて最も盛んになります。三十二歳になると、筋肉が強壮となり、肌肉が豊かで逞しくなります。四十歳になると、腎気が衰えだし、頭髪は抜け、歯は痩せて艶がなくなります。四十八歳になると、陽気が上部で衰え、顔面がやつれ、髪ともみあげはごましおの様に色が変わります。五十六歳になると、肝気が衰え、筋脈の活動が自由でなくなり、天癸は竭きて、精気も少なく、腎臓の気が衰え、肉体疲労が極まります。六十四歳になると、歯は抜け、頭髪も落ちてしまいます。人体の中で腎臓は、水液を主り、五臓六腑の精気を受けとって蔵しているものであります。それゆえ五臓が旺盛であってはじめて、腎臓は精気を洩らすことができるのです。

 年老いると五臓がすべて衰え、筋骨はしっかりしていられなくなり、天癸もまた尽きてしまいます。それゆえ髪の色は白くなり、身体は重くなり、歩くのもおぼつかなくなって、もう再び子を産むことができなくなってしまうのです。」(現代語訳黄帝内経素問上巻 東洋学術出版より)

 

 少し難しい部分はあると思いますが、男性は8の倍数で体が変化していきます。(女性は7の倍数でした)男性は女性に比べ少し発育が遅いようです。
 東洋医学において生殖に関わる臓腑の中心は「腎」です。これは男性でも女性でも同じです。上述した男性の8の倍数での変化は、腎の力の満ち引きです。もともと人間は両親の精を授かり生まれます。この精を「先天の精」といい腎に蓄えられています。この精は、食べ物や呼吸により得られる「後天の精」でさらに充実してきます。すると、男性は16歳で、ある一定以上精が充満し、射精できるようになり子供を作れるようになるのです。2千年も前にここまでしっかり書かれていることは驚きです。

 

 冒頭でも述べましたが、子宝相談の年齢の幅が広がり、若い方も多くご来店されています。以前と比較すると若い方が増えている印象です。近年の不妊の原因は晩婚化による妊娠希望者の高齢化といわれていましたが、どうやらそれだけではないようです。
 そもそも、夫婦が性交しなければ普通妊娠はしません。当たり前ですが…。性交することは人間の本能で、ある一定の年齢層では性欲はあることが普通です。しかし、子宝相談に来る方達の中にはタイミングの時以外ほとんど性交していないケースが多いように感じます。

 

 これらを総合して考えると、精が旺盛である筈の年齢でも精が不足しているということです。ご両親からの先天の精の不足か、食べ物などから受ける後天の精の不足または何らかの原因で精を消耗してしまったのかの何れかです。

 

 日本人は島国育ちで元々胃腸が弱く後天の精が不足しやすいためか、欧米人に比べ性交回数は少ないという報告があります。

 

 妊活をお考えのご夫婦は、もう一度自分たちの食生活などを見直していただいて、それをベースに漢方で腎を中心に補っていくことが必要だと思われます。


昭和堂薬局 | 2019年11月2日

 

胃腸の弱い方の養生法

 今回は、胃腸の弱い方の養生法をお話ししたいと思います。
 日本は島国で高温多湿であるためか胃腸の弱い方が多くいらっしゃいます。この胃腸を東洋医学の臓腑でいうと「脾・胃」にあたります。ジメジメと暑い梅雨時期や季節の変わり目は特に注意が必要です。7月、8月と暑い日々が続きますが、暦の上では秋は目の前に来ています。(今年の立秋は8月8日)立秋の前18日間が季節の変わり目である土用にあたります。土用は、五臓六腑では「脾・胃」と関係が深く、また「脾・胃」が疲れやすい時期でもあります。
「脾」は栄養素や水分を吸収し全身に運ぶ「運化」という働きがあり、「胃」は飲食物の「消化」の働きがあります。食事から栄養を吸収し、生命活動の基礎物質である「気(エネルギー)」や「血」を生み出す大切な機能を担っています。

 

◆食べることは「命をいただくこと」
 「脾・胃」が元気で栄養をしっかり摂ることができれば、基本的な体力、免疫力が養われ、健康な身体をつくることができます。一方、脾胃の機能が弱くなると、食欲不振や消化不良、下痢といった症状を招き、栄養やエネルギーが不足しがちになります。また、体調を崩しやすくなり、夏バテや疲労、冷えといった不調も起きやすくなってしまいます。我々の身体は、食べ物からできています。食べることは、空腹を満たすだけではいけないのです。しっかり栄養と取って元気な身体を作るためにも、この「脾・胃」を健やかに保つことが重要です。

 

◆「脾・胃」の働き

 「脾・胃」は体内の「気」(エネルギー)・「血」を生み出す源です。飲食物を消化して栄養素や水分を吸収し、気や血に変えて全身に運びます。脾・胃が元気なら、食欲は旺盛で栄養をしっかり摂ることができるので、身体全体が元気になります。また、基本的な体力が養われ免疫力も高まるので、病気にもかかりにくくなります。反対に、脾・胃の働きが弱くなると食欲が落ち、胃もたれや消化不良、疲労感といった症状が現れるようになります。「気」の不足によって、不要になった水分を尿に変えることができず痰湿(不要な水)が溜まりやすくなり、そのため下痢やむくみなどの症状が現れることもあります。痰湿は脾・胃の機能をさらに低下させてしまうので、早めに取り除くことが大切です。脾・胃には栄養素を肺などに運び上げる働きもありますが、この機能は、内蔵を持ち上げて正しい位置に保つ役割も果たしています。そのため、脾・胃の働きが弱くなると、胃下垂など内蔵下垂の症状が現れることもあります。脾・胃は冷えに弱いため、冷たい飲食物の摂り過ぎに注意しましょう。暑い日には、食べやすいそうめんで済めせてしまいがちになります。これが逆効果。日頃から温かい食べ物、飲み物を摂るよう心がけるだけで、脾・胃をいたわることができ、夏バテにもなりにくくなります。

◆暮らしのワンポイント
・冷たいものは脾・胃の大敵です。
 東洋医学には「冷たいものは脾・胃を傷つける」という言葉があります。なるべく温かい食べ物、飲み物を摂るよう心がけ脾・胃をいたわりましょう。サラダや刺身などを食べるときは、みょうがやしそを添えるなどの工夫をしましょう。また、暑いからといって冷房で身体を冷やし過ぎてしまうこともよくありません。下がってしまった体温を元に戻すために「気(エネルギー)」が使われてしまい、気の不足を起こしやすくなります。
・暴飲暴食や脂っこい食べものは避けましょう。
 暴飲暴食はもちろん、脂っこいものの食べ過ぎや激辛料理なども脾胃の機能を低下させる原因になります。脾胃に負担のない食事を心がけましょう。
・食事に集中しましょう。
 中国には「専食」という言葉があり食事中は食べることに専念することが大切とされています。本を読んだりテレビを見たり、おしゃべりをしたり考えごとはほどほどに。食事中は「専食」を心がけましょう。
・身体を動かして食欲アップ!
 ウオーキングなど、日頃から適度な運動を心がけて。身体を動かして軽い疲労を感じると、脾胃が働いて食欲がアップします。また、冷房で冷えた体を寝るすこし前にお風呂で温めてあげると眠りやすくなり疲労回復につながります。
・朝食は消化の良いものを
 脾胃がまだ働いていない朝の食事は、温かく消化の良いものを取るといいですね。中国では「おかゆ」が朝食の定番メニューです。
・食欲がないときは香りの良いものを
 脾胃の不調で食欲が落ちているときは、香りの良い食材を摂り入れてあげると食欲増進につながります。その代表がカレーです。暑いインドで食欲を落とさない食べ物です。また、みょうがや山椒の実を薬味として使うのもおすすめです。


昭和堂薬局 | 2019年7月11日

 

不眠障害(不眠症)

 不眠障害には、3つのタイプがあります。入眠時不眠(入眠困難、初期不眠)、睡眠維持不眠(睡眠維持困難、中期不眠)、早朝覚醒不眠(後期不眠)です。睡眠時間は正常であっても、目覚めた後に回復感が感じられない不眠もあります。

 

 不眠障害は、女性に多く、中高年によくみられる疾患ですが、不眠症のタイプによって年齢層は異なります。入眠時不眠は若年層に多く、睡眠維持不眠は中高年層で多くみられます。若年層では、夜更かしや昼夜逆転など不規則な生活習慣、中高年では、眠りつづける能力の低下という加齢による問題があります。

 

 脳の中には、「睡眠中枢」と「覚醒中枢」と呼ばれる部位があります。普段、活動中は覚醒中枢が優位で、活動中の疲労や夜になると睡眠中枢の活動が強くなり眠ります。朝になると再び覚醒中枢が活発になり目が覚めます。

 

 東洋医学において睡眠と覚醒は、陰陽、静動という異なった2つの状態が互いに入れ替わり正常な生命活動を維持することができると考えています。

 

 人体の睡眠と覚醒の交替は、陰陽が出入りする過程と捉え、陽は動を主り、陰は静を主ります。 昼間は陽気が体表に出て陽気が盛んになり、(相対的に)陰気が衰えます。夜間は陽気が体表から裏に入って陰気が盛んになって(相対的に)陽気が衰えます。それゆえに、昼間は覚醒して労働し、夜間は眠って休息するのです。 中でも、衛気という体表面を流れている気の運行が睡眠と密接に関わっています。衛気が体表面に出ると目覚め、裏に入ると眠ると考えられています。

 

 先天的に気の不足があったり、何らかの影響で、陰精を消耗すると腎水が心火をコントロールできずに不眠になります。そのような人は、腰や膝がだるくて力がなく、頭がふらついて、耳鳴り、胸が悶えて眠れないなどの症状があります。

 

 色々と考えすぎてしまうことは、心・脾を傷つけ陰血が不足してしまうので、血が心を養えず不眠になります。そんな時は、動悸・健忘・全身倦怠、疲れ易い、口淡で無味、顔につやがない、夢が多いなどの症状が現われます。

 

 飲食が不摂生で脾胃が傷つくと、衛気が陰分を正常に出入りできなくなり不眠になります。その結果、腹部膨満感、曖気、呑酸などの症状と、寝返りをうって眠れず、一晩じゅう眠れない状態が現われます。

 

 不眠の原因は多種にわたります。

 以前、睡眠は休息と考えられていましたが、それ以外に重要なことをしていることがわかってきています。「眠れない」は、漢方相談でもよく耳にする言葉です。入眠障害だけを不眠と思っている方も多くいらっしゃいます。漢方薬は、西洋薬の入眠剤や安定剤と違い1回飲んだだけでは効いてくれませんが、何となく眠れるようになることが多いです。漢方薬でバランスをとって眠れる心身を取り戻してみるのもいいのでは…。


昭和堂薬局 | 2019年6月26日

 

熱中症対策が急務です。

 今年は急激に気温が上昇しており、熱中症で搬送される方が増えているようです。
私たちの身体は気温の上昇に対応するために、汗腺を開いて汗をかき、その汗が蒸発する際の気化熱を放出することで体温を一定に保とうとする働きがあります。
汗をかくことで失われた体内の水分をこまめに補充しましょうというのは、報道等で良くお聞きになると思います。

 

 東洋医学において、汗をかくことは“津液”(しんえき/身体にとって必要な水のようなもの)を失うことであり、この“津液”が“皮毛”(ひもう/汗腺と考えてもよいでしょう)から出ていく際に“気”(エネルギー)も同時に失います。

 

 これが過度な状態になったことを“気陰両虚”(きいんりょうきょ)と呼び、本来であれば熱を冷ますはずの“陰”を失ったことで、熱を冷ますことができなくなった状態です。
この冷ますことができなくなった熱が急激に上昇した場合、意識の混濁等が発生し、いわゆる熱中症の状態となり、熱を冷ませない状態が持続的に継続されたケースが、夏バテを起こした状態といえます。
さらにこの“気陰両虚”の状態を平易な言葉に言い換えると、「汗をかいて疲れた」状態といえます。

 

 このような状態や、こうなる前に服用しておくと良い漢方薬として、“麦味参顆粒”が挙げられます。
麦味参顆粒は、人参・麦門冬・五味子という3つの生薬から構成され、人参は、補気生津(気を補い、津液を生ずる)し、麦門冬は補陰(陰を補う)、五味子は津液や陰を収斂(必要以上に漏れるのを防ぐ)する作用によって、“気陰両虚”の状態を改善してくれる処方です。

 

 この暑い時期に携帯している水筒の水やお茶に混ぜて少しずつ服用しても効果的でしょう。
水分の補給について、暑く喉が渇いたからといって一気にがぶ飲みをしてしまいがちですが、これは胃内の酸性度が一時的に中性に近づくため、胃内の酸性度を元に戻そうと過剰な胃酸分泌を促し、結果として胃壁を荒らしてしまう恐れあります。
水分を摂る際には“ちょこちょこ、ちょいちょい”と飲むのがお勧めです。

 

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2019年5月28日

 

子供の心身に影響する授乳期の母と子の関係

 人間を含めた哺乳動物の子供の発育で最も特徴的なものの一つとして、出生後の哺乳を中心にした母親と子供のつながりが強いことが挙げられます。
 この期間に子供が母親から受ける様々な刺激は、その後の成長に大きな影響を与えています。虐待やネグレクトといった幼少期の環境的ストレスによって、成人期の気分障害や不安障害が引き起こされることなどが報告されています。また、幼少期の長期的なストレスによって肥満や糖尿病、心疾患など様々な病気の発症率が上昇することがわかってきています。

 

 動物実験では早期離乳という、ある種の育児放棄のような状態をラットやマウスにしたところ、早期離乳群の仔は通常離乳群の仔に比べて、社会的接近の減少や探索動作の低下、低体重を示すという報告がされています。
 また早期離乳時には、心拍や体温などの自律反応が高くなることが認められました。また、早期離乳マウスでは成長後の不安行動の増加やオスの攻撃行動の増加が観察され、早期離乳の雌マウスでは、自分が母親になった際に、排泄を促すためや母乳を飲むように促すための仔をなめる行動の時間が短縮されました。

 

 この変化についての詳しいメカニズムは省きますが、幼若期にストレスを受けたことで、ストレス内分泌系の亢進により副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)の放出が亢進し、不安感が増強しています。この中枢神経系への影響は大きく、永続的であると言われています。

 

 また、これらの体の変化により腸内細菌叢が変化します。この腸内細菌の変化が更にストレスの影響を永続的にしているのです。一方で、母子間で伝達される乳酸菌類は、子供の中枢発育を促します。(この発育メカニズムは、まだ解明されていません。)

 

 この事実は、現代社会に大きな影響を及ぼしかねません。現代社会では共働きはそれほど驚くことではなくなってきています。しかし、母親が子供に与える影響は大変大きく、その子の将来にも関わってきます。これ以上は薬屋のブログでなくなってしまうので止めておきますが…

 

 このような現代社会環境から、未来のある子供達を守っていくためには、子供と接する時間をなるべく多くすることと、食生活などを疎かにせず、腸内環境、特に腸内細菌叢を健全な状態に保っておくことが大切になります。将来的には、虐待やネグレクトで苦しんでいる方々に、特定の腸内細菌叢が使われる可能性も出てきているようです。


昭和堂薬局 | 2019年4月15日

 

善光寺さんの「やすらぎ通信」のコラムを2年ぶりに担当しました。

日野にある横浜成寿山善光寺さんの「やすらぎ通信」のコラムを担当したので、内容をご案内いたします。

 

 2年ぶりに「やすらぎ通信」でコラムを担当することになりました。 以前やすらぎ通信で四季の養生法を中心にお話しました。今回は東洋医学的にどうして病気になっていくのか。また、養生の基本的考え方をお話しします。

 

 2千年前の書籍に「黄帝内経(こうていだいけい)」というものがあります。この書籍は、東洋医学最古の医学書と言われていて、東洋医学の基礎がここに書かれています。2千年前に書かれたことが、現代に受け継がれ、いまだに利用されていることに驚かされます。現代の日本では、西洋医学が最も身近な医学になっているので、東洋医学の考え方はわかりにくいかもしれませんが、2千年もの間、色褪せることなく連綿と受け継がれてきた東洋医学の「知恵」こそ、現代社会に必要な事なのだと私は思っています。人間の体は、基本的に「24時間眠らない社会」に対応できるようにはなっていないのですから…

 

 黄帝内経生気通天論(せいきつうてんろん)には次のように書かれています。
「昔から、人の生命活動と自然環境には、極めて親密に相い通じる関係があり、生命の根本は陰陽(いんよう)にもとづくと考えられている。おおよそ天地間、四方上下の内にあるものは、人の九竅(きゅうきょう)、五臓(ごぞう)、十二関節を問わず、すべて天の気と通じているのである。天の陰陽(いんよう)は変化して地の五行(ごぎょう)を生み、地の五行もまた天の三(さん)陰(いん)三(さん)陽(よう)に応じている。もし人がこのような天・地・人相応の法則に常に反していると、邪気(じゃき)が人体を損なうことになる。」
 このことは、人間は自然界からかけ離れた生活をすることはできないこと、人間と自然界との関係は非常に密接なものであることを述べています。

 

 現代社会においても、我々は自然、四季の中で生活しています。しかし、冷暖房などで夏冬の気温の差がそれほどない環境で生活しています。夏の屋外は暑く、室内は冷房で涼しくなっています。この冷房の影響を受けて夏に体が冷えてしまう方が多くいらっしゃいます。また、冷蔵庫の普及で一年中冷たい食べ物や飲み物が摂れてしまうことも冷えにつながります。

 

 食べ物は季節感がなくなり、スーパーなどでは四季を感じにくくなっています。今はどんなものでも一年中手に入りますから、便利といえば便利なのですが…。本来、食べ物にも温める食べ物、どちらにも傾いていない物、冷やす食べ物があるのです。このバランスを欠いてしまうと体の陰陽のバランスも崩れてしまいます。基本的に夏に寒く感じるほど冷房をきかせるたり、冬に汗をかくほど暖房をきかせてしまうと体調を崩しやすくなりますし、外(がい)邪(じゃ)の影響を受けやすくなります。夏は汗腺(かんせん)を開いて汗をかくことによって体の熱を発散していますし、冬は汗腺を閉じて体の熱を奪われないようにしているのです。

 

 このように、季節によって食生活や生活習慣を変えていくことで、陰陽のバランスが取れて健康を保つことができます。次に、陰陽について簡単にご説明します。

 

○陰陽(いんよう)

 東洋医学では、自然界すべての物を陰陽に分けます。太陽は陽、月は陰、昼は陽、夜は陰、男性は陽、女性は陰といった具合です。何となく感覚的には、陰は暗い、冷たいというイメージです。陽は明るい、温かいというイメージです。体の働きから陰陽をみると、物質=陰、機能(エネルギー)=陽です。陰陽をきちんととらえようとすると複雑になるので、こんな感じでイメージしていただくと良いと思います。この陰陽のバランスが崩れると病気になります。では、陰陽のバランスの崩れとはどんなものかといいますと、何らかの原因で、陰陽の「どちらかが強くなっている」または「どちらかが弱まっている」状態です。実際の病気はもう少し複雑な場合が多いのですが…。

 

 東洋医学では、食べ物や薬を「四気五味」という性質と味で分けます。性質は「寒・涼・熱・温」の4つがあります。これを四気といいます。そして五味とは「辛(しん)・甘(かん)・酸(さん)・苦(く)・鹹(かん)(しおからい)」です。そして、「四気五味」が組み合わさっていろいろな性質の食べ物があります。例えば、甘くて冷やすものには、きゅうり・トマト・茄子・西瓜などがあります。このように食べ物にはいろいろな性質があり、伝統的な食べ方は、このバランスを利用して健康的な食生活が遅れるようになっているのです。

 

 黄帝内経生気通天論には、五行説に基づいて五味のバランスについて次のように書かれています。 「陰精が生み出される源は飲食の五味にあります。しかし精を収蔵する五臓は、逆にまた飲食の五味の超過によって損傷もします。 酸味(すっぱい)のものを多食すると、肝気が大いに盛んになり脾気は衰渇するのです。 鹹味(しおからい)のものを多食すると、大骨損なわれ肌肉は萎縮し心気は抑鬱します。 甘味(あまい)のものを多食すると、心気煩悶し安定せず顔は黒ずみ、腎気は平衡がとれない。苦味(にがい)のものを多食すると、脾気は潤沢でなくなり消化は悪く胃部は膨満します。 辛味(からい)のものを多食すると、筋脈は傷れ弛み精神も同時に損なわれます。 このようなわけですから飲食の五味の調和に注意すれば、骨格はゆがまず、筋脈は柔軟で調和し、気血は流通し、腠(そう)理(り)は緻密(ちみつ)でしっかりとし、骨気は剛強となります。人は養生法則を慎んで厳しく守れば天与の寿命を享受することができるのです。」 以前書かせていただいた「四季の養生法」は、この五行説にのっとった季節の五味についてのお話でした。日本には四季折々の旬の食べ物があり、その食べ物には「四気五味」に分類され、そのことに基づいて食生活を送っていくことで体のバランスが良くなっていくのです。

 

 今回は、基本的な東洋医学の養生の考え方でしたが、次回(やすらぎ通信の次回号は6月ごろを予定しています)からは、体質別の養生についてお話します。


昭和堂薬局 | 2019年3月16日


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