『昭和堂薬局』

WhatsNew

 

子宝のための中医学的養生法

 現代のライフサイクルの変化に伴い、子づくりをする年齢が遅くなるなどによって苦労されているご夫婦に出会います。食の変化やライフスタイルの変化による過剰なダイエット、夜更かしなど、そこまでにしてきたことやもしかするとご本人だけでなく、その親御さんの若いころの生活環境も影響している可能性があります。
しかし、過去をあれこれ言っても始まりませんので、これからどんなことをしていくといいのかを東洋医学的に考えてみたいと思います。

 

 東洋医学的に生殖を主る臓腑は「腎」です。この「腎」の力が旺盛であれば妊娠しやすいのですが、腎の力は28歳ごろをピークに衰えていきます。また、この「腎」の力は個人差が大きく、もって生まれたものや成長過程での生活環境なども影響します。

 

 その他には「肝」や「脾」が関係することが多くあり、血液の流れなども影響があります。前回のコラムで生理時の養生について書きましたが、月経期などに寒邪が入り込んで冷えてしまうこともあるかもしれません。

 

 まずは、生殖に大きくかかわってくる「腎」の養生法についてお話ししたいと思います。
「腎」の五季は「冬」でこれからの季節は「腎」の季節です。寒さも厳しくなる季節ですので冷えてしまうと腎の機能が衰えてしまいますので暖かくしておく必要があります。また、偏食や睡眠不足も腎の力を弱くする可能性があります。

 

 

 

 腎を助ける食べ物としては、鹹味(塩辛い味)です。塩辛いと言っても精製塩の塩化ナトリウムではなく、ミネラル豊富な天然塩です。天然塩には苦汁が入り、苦味は腎と対極にある心を助ける味です。また、お節料理は新年を祝う日本の伝統料理ですが、腎を補う食材がふんだんに使われています。黒豆や田作り、昆布などがその代表です。

 

 最後に、食べ物は自分の体をつくるものです。インスタント食品や加工食品のような化学物質が入ったものでよいのでしょうか?食材から作った本物の食事で自分の身体を作ってあげないと、いい子孫ができないのではと思ってしまいます。


昭和堂薬局 | 2017年11月27日

 

生理の時、気を付けてますか?

 月経は女性特有の生理現象です。女性は月経の時は何かと面倒なことが多いし、生理痛や頭痛など不快な症状も多く、養生なんてと思われるかもしれませんが、自分ではたまたまと思っていることが生理の時に起こっているのです。

 

 漢方相談をしていて感じることは、女性が風邪を引くのは生理中が多く、これは月経中は血室(子宮)が開いているので邪気が侵入しやすく、また月経によって出血すると同時に気も出ていくので体を守る力も落ちているため風邪を引きやすくなるのです。

 

 月経中は、月経による出血で体力が低下している時ですから、激しい運動をして体力を消耗したり、雨に濡れて体を冷やしたりすることは好ましくありません。寒邪や湿邪などを感受して、気血の流れが悪くなり月経痛がひどくなったり、月経不順になったりしますので、月経期間中は冷えないよう保温に注意をしましょう。

 

 また、仕事や勉強で夜更かしして睡眠時間を減らすこともあまりよくありません。睡眠中に陰血は補われるので十分な睡眠が必要です。基本的には女性は男性より1時間は多く寝た方がいいと言われています。

 

 食事も節度を持って、激辛の食べ物を過食すると熱を発生するかもしれませんし、逆に冷たい物を食べ過ぎると体が冷えてしまいます。忙しいから簡単にお菓子やインスタント食品で済ませるのも可能な限り減らすよう努力してみてはいかがでしょうか。

 

 月経期間中以外も何をしてもいいわけでもなく、男性であれ養生は大切なことなのですが、女性の月経期間中は特に注意をした方がいい時期です。気持ちが昂るようなことは避けて、睡眠を十分とり、養生をしてみてください。


昭和堂薬局 | 2017年11月2日

 

中医学的にみる性差 ~女性の中医学的特徴~

 人には、男性と女性の違いがあります。解剖学的にも、生理機能的にも違いがあります。中医学において男女を陰陽で分けると男性が陽、女性が陰となっています。
また、女性には月経、妊娠、出産、授乳があり血を消耗しやすいという特徴があります。これらのことから女性にとって血が重要な要素になります。

 

 異なった側面からの見方をすると、気持ちが塞ぎ込むことで、気が停滞し、血が滞るといろいろな病気になりやすくなります。女性はその傾向が顕著であり、これは肝は血を蔵すこと、肝は条達(のびのびとする様の事)を好む性質があること、情志と深く関わっており、血の不足が肝経におよび気血の伸びやかさが失われることにより衝任(前回コラムで説明)を損傷し月経、妊娠、出産に関係する病が発生してきます。

 

 婦人科疾患において五臓のうち、肝を調節することが重要です。肝は女性の先天であるという言い方もあり、これは肝が女性の発育と生殖に携わることを表します。また肝は乳頭部を管轄していることから、乳房部の疾患も肝経に関わっています。

 

 女性は肝や血とかかわりが深いことがご理解いただけたでしょうか。
そこで、今回は、女性のよくある症状であまり取り上げられない症状の一つである「月経前に乳房部が脹る(ひどいと痛む)」に注目してお話ししてみたいと思います。

 

 月経前の乳房部の脹りは、女性のよくある症状です。しかし、この症状を訴えて来店する方はほとんどいません。しかし、この症状は女性の心身の健康や妊娠・出産に影響する可能性のある症状です。実際、子宝の漢方相談に来られる方で、高プロラクチン血症がある方のほとんどは、月経前の胸の脹りがあります。その逆、胸の脹りがあると高プロラクチン血症というわけではないのですが…

 

 生理痛や生理前の胸の脹りなどはあって当たり前と思っている方が多いようですが、健康であれば無くてよい症状なのです。その時はつらいけど生理前後だけだから我慢することはあまりいいことではないかもしれません。もしかすると何か(病気)が隠れてるかもしれないですから…


昭和堂薬局 | 2017年10月16日

 

東洋医学的女性の生理

 前回お話ししたように、東洋医学における婦人科には長い歴史に培われた理論があります。
西洋医学的教育を受けてきた我々には理解しにくい点もあるのですが、2,000年前の書物に書かれてあることが今なお受け継がれ、理論として成立しています。

 

 下の文章が「黄帝内経」上古天真論に書かれた女性の生理です。
「女子は7歳になると腎気が盛んになり、歯が生え変わって髪が長くなる。14歳になると天癸が至り、任脈が通じ、太衝脈が盛んになり月経が下るようになる。そのため子どもをつくることができる。-中略― 49歳になると任脈が虚し、太衝脈が衰え、天癸が竭き、月経が停止する。そのため子どもをつくれなくなる。」

 

 14歳ごろ初潮が来て、49歳ごろ閉経するとありますが、現代もほとんど変わりません。食事や環境の変化はありますが、私達の体は2,000年前とほぼ変わっていないのです。

 

 以上のことから月経は、天癸(てんき)・臓腑・気血・経絡が協調して子宮に作用することにより生じる現象です。これら天癸・臓腑・気血・経絡の関係が崩れるとうまく月経が起きませんし、子供もできにくくなります。

 

 天癸とは、男女を問わず人体の成長・発育・生殖に影響する精の一種です。

 

 経絡は、情報伝達ルートとなり人体の各組織・器官を結び付けており、同時に気血の運行に関与して、全身を栄養します。その中で、女性と密接な関係があるのは奇形八脈の衝脈・任脈・督脈・帯脈であり、主にその生理機能は気血の運行に対して蓄積と溢出の調節を行うことです。その中で任・衝脈は婦人科疾患に特に重要であると言われています。衝脈の衝には要衝の意味があり、臓腑経絡の血すべてが帰り、十二経絡の要衝としての役割を果たしています。また、衝脈は経絡の海であることから「血海」と呼ばれ、月経は血によって機能するため、衝脈が盛んであれば月経は正常に行われます。任脈の任には任(妊)養、担任の意味があります。任脈は全身の陰脈を妊養するとともに、女性の妊娠機能に関与しています。

 

 少しわかりづらい東洋医学用語が多く出てきてしまいましたが、体は繋がっているため、各々の組織・器官が正常に働くことが重要ですが、特に天癸(精)が充分に満ちていて、妊衝脈が機能していることで、女性の月経・妊娠・出産のコントロールができるのです。


昭和堂薬局 | 2017年10月2日

 

婦人科と東洋医学 ~長い歴史に培われた漢方~

 古くから婦人科疾患には漢方薬がよく使われてきました。現代においても婦人科疾患は漢方薬の得意分野であることは変わっていません。これは東洋医学の歴史の中で古くから婦人科を専門科として設置し、その後長い歴史と経験を積み重ね、現在の日本や中国においても大きく貢献しています。

 

 3,000年以上前の紀元前17世紀、殷の時代の甲骨文卜辞には出産問題などが記載され、現存する古典著書「易経」に「婦孕不育」「婦三歳不孕(結婚後3年経っても妊娠しない)」などの記載があります。

 

 以前このコラムでも少し紹介していますが、2,000年以上前の最古の医学書と言われている「黄帝内経」には、女性の解剖・生理・診断などが記載されており、女性の成長・発育・老化(初潮や閉経など)のメカニズムが示されています。

 

 その後、張仲景という人の著書「金匱要略」では、月経病、妊娠病、産後病・雑病などを症候の描写や方剤治療について、現在も使用されている処方が30種類以上記載されています。2,000年近く前の処方が現在の多く使われていることは、その効果の裏付けではないでしょうか。

 

 女性には月経、妊娠、出産、哺乳といった女性特有の生理現象があります。「本草綱目」という書物には、「女性は陰の類であり、血を主とする。その血は上では太陰(月)に応じ、下では海潮に応じ、月に満ち欠け潮に満干があるように、月事も1月に1回あり、これに一致する。ゆえに月信・月水・月経という」と述べられています。

 

 「女性は血を主とし、血によって機能する。」また、「女科撮要」では、「経水は陰血であり、衝任二脈が主る。上がっては乳汁となり、下っては月水となる」と述べられており、月経の発生と調整は血の盛衰の影響を受けることを説明しています。これらのことから、女性は血の不足を起こしやすく、漢方的養生は補血が中心になります。

 

 以上のことからも、紀元前の昔から人間の体はそれほど変化していないのです。しかし、人間を取り巻く環境は激変しています。いろいろな面で便利になった現代ですが、便利になりすぎて体にとってはある意味、いい環境ではないのかもしれませんね。


昭和堂薬局 | 2017年9月13日

 

生体バリア6 ~肥満は病気の入り口~

 肥満は“カッコ悪いだけ”と思っていませんか?

 

 肥満は病気の入り口です。肥満は糖尿病や心筋梗塞だけでなく、がんを促進することが指摘されています。高脂肪食などの摂取により肥満になると、腸内環境も変化します。このことは以前からお話ししているのでご存知かもしれません。腸内細菌はグラム陽性菌のファーミクーティス門の菌の割合が増えて、グラム陰性菌のバクテロイディス門の菌の割合が減ってきます。すると二次胆汁酸を産生するグラム陽性菌が増加し、体内の二次胆汁酸であるデオキシコール酸の量が増えます。これにより腸肝循環で肝臓の間質に存在する肝星細胞が「細胞老化」を起こすことが明らかになりました。細胞老化を起こした肝星細胞は発がん促進作用のある炎症性サイトカインなどを分泌することで、肝実質細胞のがん化を促進する環境をつくることが示されました。

 

 また、以前の報告では、グラム陰性菌の細胞膜成分であるリポ多糖(LPS)が肝がん促進因子として働くとされていたが、最近の研究でグラム陽性菌の細胞壁由来成分のリポタイコ酸(LTA)が肝がん促進因子ではないかといわれています。また、このリポ多糖によって、炎症を起こしてしまう物質をつくる酵素の発現が上昇します。これらのことが、がん微小環境で抗腫瘍免疫の抑制やがんの進展につながる可能性が示されています。
(私もこのことは以前から疑問に思っており、減ってしまった菌の成分が影響することに不自然な感じがしていました。)

 

 病気になるということは、遺伝的要素や環境要因も影響するとは思います。しかし、毎日食べているものが影響していくこともあるのです。生体バリアについてこれまで、6回シリーズで話してきました。生体バリアを脆弱にしてしまう食事は高脂肪・低食物繊維食です。食事についてはその他いろいろあるとは思いますが、言い出すと限がないので今回は低脂肪・高食物繊維食をご提案させていただきます。


昭和堂薬局 | 2017年9月2日

 

生体バリア5 ~腸内細菌由来代謝産物による生体バリア調節~

 人の腸内細菌叢は、最新の試算によると40兆個程度の腸内細菌が存在すると考えられています。これは成人の全細胞数をやや上回る数字です。腸内細菌叢は、我々宿主の消化酵素では消化できない食物繊維などを発酵分解し、二次代謝産物として多様な低分子化合物を産生します。このように腸内細菌叢は見かけ上1つの代謝器官として機能し、我々の体のエネルギー代謝に必要な栄養素や補助因子を供給しています。

 

 主な腸内代謝物である短鎖脂肪酸は、カルボキシル基をもち、炭素数6以下の飽和脂肪酸の総称で、直鎖のものと分枝鎖の化合物が存在します。直鎖の短鎖脂肪酸は、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の5つです。アミノ酸からは分枝短鎖脂肪酸であるイソ酪酸、イソ吉草酸および2-メチル酪酸などが産生されます。

 

 詳細は割愛しますが、これらの腸内細菌由来の代謝産物によって、上皮バリア機能は高度に調整(強化)されています。そのため、食物繊維などに富むバランスの取れた食事を摂取し、腸内細菌叢を健全に保つことが、上皮バリア機能の維持に重要と考えられています。偏食や抗菌剤などにより腸内細菌のバランス異常が生じると、上皮バリア機能低下により腸管壁浸潤症候群(リーキーガット症候群)の発症につながり、本来管腔内に留まるべき菌体成分や代謝物が体内に流入し、慢性炎症や感染症のみならず、自閉症スペクトラム障害やメタボリックシンドロームなどの疾患発症リスクが高まります。

 

 これまで、生体バリアについてお話してきましたが、このバリアが壊れてしまって病気になってしまうと、元の健康な体に戻すことは容易ではありません。食事はもとより、生活習慣やストレスの軽減に努め、健康な体を維持していきましょう。

 

 次回は、高脂肪食によって腸内細菌叢のバランスが崩れ、肝がんに発展していくメカニズムの最新情報をご紹介いたします。


昭和堂薬局 | 2017年8月16日

 

生体バリア4 ~生体は共生菌を調節して身体を守っています~

 これまで、3回にわたり生体バリアについてお話してきました。私たちの体を守っていく上でバリア機能が重要であることはお分かりいただけたと思います。

 

 また、健康な状態では腸内細菌叢と我々の体は共生関係を築いています。これまでこのコラムでも腸内細菌叢についてお話してきましたが、今回は我々生体が外からの異物を体に入れないようにしながら、腸内細菌をコントロールしている仕組みについて触れたいと思います。

 

 前々回に上皮細胞について簡単に触れましたが、その中でパネート細胞が抗菌ペプチドを産生していると述べました。パネート細胞は感染刺激などによって抗菌ペプチドを分泌し、病原体を死滅させます。一方で共生関係にある腸内細菌には対しては殺菌活性をほとんど示さないのです。しかし、このメカニズムが異常をきたすと腸内細菌叢の構成異常を起こし、様々な疾患の発症原因になってしまうのです。

 

 また、腸管にはIgA抗体が存在します。腸管免疫は病原体を排除するだけでなく、免疫全体の恒常性の維持に重要な役割を担っています。その腸管免疫の中で主要な要素の一つがIgA抗体なのです。腸管粘膜固有層から腸管に分泌され、食べ物などと一緒に入ってきた病原菌やその毒素と結合し中和します。もう一つの機能は、腸内常在菌を認識しそれと結合し常在腸内細菌が粘膜固有層に過剰に侵入しないようにしています。ある報告によると腸内細菌の中で腸炎を誘発する細菌とIgA抗体は結合していることが言われています。ほかの報告では、マウス腸管から単離した高親和性IgA抗体をマウスに経口投与することによって腸内細菌叢を改善し、腸炎などの病態を抑制することが示されました。

 

 人の体はいろいろなメカニズムで恒常性を維持し病気にならないようにしています。しかし、食生活や生活習慣の乱れで恒常性維持機能が壊れると病気になっていきます。人それぞれではあると思いますが、ちょっとした工夫で生体バリアを維持し病気を予防できると良いですね。


昭和堂薬局 | 2017年8月2日

 

生体バリア3 ~粘液層の役割~

 前回、前々回生体バリアについてお話ししました。今回は粘液層についてお話ししたいと思います。


 消化管は内なる外といわれ、食事などと一緒に侵入してくる病原菌や共生する細菌から組織を守るため、消化管粘膜は多量の粘液で覆われていることが明らかになりました。特に多くの腸内細菌が存在する大腸では外粘液層と内粘液層の二層に分かれていて、分厚い粘液が粘膜を覆っています。粘液層を構成するムチン分子が密に結合している内粘液層では腸内細菌がほとんど存在せず、この内粘液層が腸内細菌と腸粘膜を分離していることが明らかになりました。

 

 この粘液層を構成するムチン分子は、腸上皮細胞の一つである胚細胞から産生され、その胚細胞は腸内細菌が多く存在する大腸に多く、産生される粘液量も多いため、大腸では分厚い粘液層が腸管上皮を覆っています。この粘液層の生成・分泌のメカニズムも明らかになりつつあり、食事や腸内細菌叢の変化も粘液層の恒常性とバリア機能に影響を与えていることが明らかになっています。動物実験ではありますが、低繊維食を食べさせたマウスでは、粘液層のムチンを分解する腸内細菌が増加し、それにより大腸粘液層の厚みが薄くなり、病原性細菌に感染しやすくなるという報告があります。このように粘液層の恒常性は食事や腸内細菌など様々な因子により制御されています。また、この粘液層の恒常性がうまくいかなくなることにより、炎症性腸炎などの腸管の炎症に繋がっていくのです。

 

 以上のことからも、食事の重要性は明らかです。今回の食事については低繊維食ですが、腸内環境の悪化要因という意味では、高脂肪・低繊維食ではないかと思います。特にジャンクフードを食べる機会が多い若い年齢層は要注意ですね。


昭和堂薬局 | 2017年7月19日

 

生体バリア2 ~各上皮細胞の働き~

 前回のコラムでは腸上皮細胞は6種類の細胞からできているとお話ししました。その上皮細胞は、生体バリアシステム構築のため、細胞間接着が強固になっていて上皮細胞シートが構築されています。その上皮細胞シートが強く結びついていることによって、容易に外からの異物を内に入れないようになっているのです。

 

 では、6種類の細胞の解っている働きを簡単にご説明します。
(吸収上皮細胞・胚細胞・パネート細胞・タフト細胞・M細胞・腸内分泌細胞)

 

 吸収上皮細胞は、その名の通り栄養素の吸収が主な役割です。一方で吸収上皮細胞は腸管上皮細胞の中で一番多い細胞で、防御機能も備わっていて、後でお話しするパネート細胞ほどではないのですが抗菌ペプチドを産生し、免疫細胞を活性化するサイトカインを産生しています。

 

 胚細胞はムチンを産生することで粘液層を形成し、腸管上皮細胞に微生物が接着しないようにしています。(次回、もう一度、ご説明します。)


 パネート細胞は、抗菌ペプチドを大量生産することで細菌感染に対する生体防御に貢献しています。また、パネート細胞は、腸陰窩部に存在する腸管上皮幹細胞ニッシュ(微小環境)の維持にも必要な細胞です。


 タフト細胞は、存在自体は以前より認識されていたのですがその役割はまだわかっていません。しかし、昨年(2016年)に2型自然リンパ球という免疫細胞を活性化するサイトカイン(IL-25)を供給していることが明らかとなりました。

 

  M細胞はパイエル板をはじめとする腸管関連リンパ組織を覆う上皮細胞層に分布し、微生物などの抗原を捕捉し免疫細胞にすみやかに受け渡すことで、抗原特異的な免疫応答を惹起しています。


 腸内分泌細胞は、生体バリアに直接関係していませんが、消化管ホルモンなどを分泌して健康維持に貢献しています。

 

 簡単に説明しましたが、これらのシステムが非常に重要で、細胞間接着が弱まってしまったり、腸管上皮幹細胞から6種の上皮細胞が適正に分化せず、極端にどれかの細胞が少なくなってしまうと我々の体の存在すら危ぶまれてしまいます。
腸上皮細胞は3~4日のサイクルで入れ替わると言われています。食事による食物繊維や細菌が刺激になり、これら上皮細胞は正常に分化し、正常に機能するのです。


昭和堂薬局 | 2017年7月3日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。