『昭和堂薬局』

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怖い心筋梗塞

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 「テラスハウス」出演していた31歳の男性が心筋梗塞で亡くなったことは、記憶に新しいことではないでしょうか。私の身近な人たちがこの病気で亡くなったり、意識不明になったりしたので、皆さんの予防につながってくれたらと思いこのコラムを書いています。

 

 この病気は、心筋に栄養や酸素を送っている冠状動脈が何らかの原因で通りが悪くなり心筋が壊死してしまう病気です。

 

 独立法人がん研究センターのコホート研究(疫学研究)では、約4万人の日本人のデータから魚の摂取量と心筋梗塞の関係を検討し、2006年に発表しています。これによると、高齢になるほどリスクが上がり、また魚の摂取量が多い人ほどリスクが下がっています。
 元々、魚に含まれるω3系の脂質が注目されたのは、グリーンランドのイヌイットに心筋梗塞が少なく、彼らの食生活を調べたところ、ω3系脂質を多く含む食品を摂取していたことからでした。動物実験でも、マウスに心肥大・心不全を実験的に起させ、ω3系脂肪酸の心保護作用を解析したものでは、体内のω3系脂肪酸レベルが上昇するほど心筋の線維化が抑制されたそうです。

 

 もう一方では日本人の食の欧米化でω6系脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取量が多くなっていることも、心筋梗塞を含め多くの炎症性疾患が多くなっている原因の一つだと思われます。

 

 最近では、健康番組でω3系の脂質を紹介したことでエゴマ油などのω3系脂肪酸を多く含む油が人気なようですが、今の食生活にエゴマ油をプラスするのではなく、ω6系脂肪酸が多い場合にはそれを少なくしてエゴマ油などのω3系脂肪酸を摂取して欲しいのです。

 

 我々の食生活の中でω6系の脂肪酸は多く使われています。例えば加工食品の表示に植物油脂という文字がよく出てきますが、これもω6系脂肪酸です。昔は健康にいいといわれていたマーガリンやコーヒ―フレッシュにも使われています。インスタントラーメンやカレールウなど挙げればきりがないほどです。

 

 また、現代は飽食の時代と言われています。それによる肥満も炎症系の病気になりやすくなります。肥満になってくると白色脂肪細胞がうまく働けなくなり、身体を守るアディポネクチンというホルモンの分泌量は低くなり、逆にTNF-αなどの炎症性物質を多く出し始めます。このことにより、炎症性の病気である糖尿病や血管系の病気などになりやすくなってしまうのです。

 

 自分の食生活を見直してみてください。魚は適度に食べていますか?加工食品やインスタント食品多くないですか?お腹いっぱいに食べていませんか?外食や買い弁当ばかりも問題です。

 

 健康にいい食事を目指すとよくベジタリアンになってしまう人がいらっしゃいますが、これもまたバランスの悪い食生活です。

ご自身や身内の方が食材から作る食事が基本です。どうしても買い弁当や外食になってしまう場合はサプリメントで補うことも仕方のないことだと思いますが、これも質が問題です。しかし、基本は食事で予防することが大切です。


昭和堂薬局 | 2015年12月8日

 

養生のすすめ

井上先生用 五行

 

 黄帝内経という数千年前の書籍にこんな一文があります。

「天師に問いて曰く、余聞く、上古の人、春秋皆百歳を度えて、しかも動作衰えず。今時の人、年半百にして動作皆衰うる者は、時世異なるか、人將たこれを失するか。岐伯対えて曰く、上古の人、其の道を知る者は、陰陽に法り、術数に和し、食飲に節あり、起居に常あり、妄りに労を作さず。故に能く形と神と倶にして、尽く其の天年を終え、百歳を度えて乃ち去る。今時の人は然らざるなり。酒を以て漿となし、妄を以て常となし、酔いて以て房に入り、欲を以て其の精を竭くし、以て其の真を耗散す。満を持するを知らず、時ならずして神を御す。務めて其の心を快にし、生楽に逆い、起居に節なし。故に半百にして衰うるなり。」(黄帝内経上古天真論篇)

 これは、黄帝が自分のお抱えの医師との問答を文章にしたもので、簡単に言うと「昔の人は百歳まで生きていたのに、今の人達はなぜ五十歳くらいで亡くなるのはなぜか?」お医者さんは「昔の人は養生をわきまえて、節度思って生活していたが、今の人は酒を水のように飲み、良くないことを平気でして、酒を飲んでは色事をして精気を消耗してしまい、精気を満たしておくことをしらず、一時の快楽で養生をしないので五十歳で衰えてしますのです。」と答えています。

 

 数千年前の会話なのに、今の時代にも言えることですよね。

食べ物は簡単便利なものがもてはやされて、インスタント食品や加工食品が飛ぶように売れ、身体に悪いことと気がつかずに、成長期の子供にも食べさせる。体調が悪くなって相談に来て、それを指摘され初めて気がつく、これでいいのでしょうか?

体調が悪くなると、化学物質だらけのサプリメントを飲んでみる。もっと体調悪くなりませんか?

サプリメントがすべていけないと言っているわけではありません。自然に近いものを選ぶべきですし、サプリメントを飲んでいれば、食事がむちゃくちゃでいいわけではありません。

 

 このコラムで季節の養生法を解説してきました。ちょっとそれを実践してみませんか?

もしかしたら、それだけで体調良くなるかもしれませんよ!


昭和堂薬局 | 2015年11月2日

 

やすらぎ通信 秋彼岸

通信39号昨年始めた「やすらぎ通信」のコラム第5弾です。

 

秋の養生訓

 

 秋は五穀豊穣の季節です。私たち日本人が主食としてきた米や粟、黍、稗などの穀物が実りのときを迎えます。そして、残暑が終わり、夏に疲れた胃腸の調子も整って食欲が増す季節です。空は高く、空気は澄み、健康や体力の回復には良いので、「食欲の秋」「スポーツの秋」といったりするのはこのためです。しかし、夏から冬に変わっていく過渡期であるため、日中と朝夕の気温差が激しく、同時に空気は非常に乾燥してきます。そういった面では体調管理が難しい時期でもあります。

 

 秋の三箇月は、万物が成熟し、収穫の季節である。天気はすでに涼しく、風の音は強く急で、地(ち)気(き)は清(せい)粛(しゅく)として、万物は色を変える。人々は当然早寝早起きすべきである。鶏と同じように、夜明けとともに起き、空が暗くなると眠り、心を安らかに静かにさせて、秋の粛殺(しゅくさつ)の気候の人体に対する影響を緩和(かんわ)させ、神気(しんき)を収(しゅう)徹(てつ)して、秋の粛殺(しゅくさつ)の気を和(なご)ませる。心を外にはたらかせないで、肺気を清浄に保持しなければならない。これが秋に適応して、「収気」を保養する道理である。もしこの道理に反すると、肺気を損傷し、冬になって食物を消化しきれないで下痢を病んでしまう。人が冬の潜伏(せんぷく)閉蔵(へいぞう)するという気に適応する努(つとめ)を減少させてしまうのである。

「黄帝内経」・『素問・四気調神大論』:中国伝統医学の古典より

 

○秋は「肺」と関係が深い
 秋は「肺」と関係が深く、肺は皮膚や体毛をコントロールし、肺の異常は空気の出入りする鼻に表れるとされます。また、肺は五臓の中で一番高い場所にあるので、「五臓六腑の蓋」と呼ばれ、気管やのどを通じて外界に直接接し、外気の影響を受けやすい臓器です。そのため、秋は大気の乾燥による影響を受け易く、秋に起こりやすい咳、鼻炎、喘息、皮膚のかさつきなどの症状は、乾燥した大気を取り込むことにより肺が乾くことが原因で起こるのです。

 

 また、「肺」は「大腸」と表裏の関係にあり、肺と大腸は互いに連動しています。そのため、気温が低下して皮膚が閉じると鼻や口などの呼吸器とともに、大腸も余分な水分や老廃物を体外に出さなければならず、スムーズに排泄されずに滞った毒素は、ニキビや吹き出物、シミとして皮膚に現れるようになります。このように、「肺」と「大腸」は密接な関係にあり、「肺」の支配下にある皮膚に症状が現れるのです。

 

 東洋医薬学でいう「肺」は、肺単体のことではなく、その影響を受ける皮膚や鼻、表裏一体の関係にある大腸を含めた部分を示し、そのおもな働きは、呼吸によって気(エネルギー)を取り込み、全身に運搬し、臓腑器官の働きを助け、体液を調節し維持することとされます。そのため、ひとたび「肺」が「燥邪」に侵されれば、その異常は、咳、疵、鼻づまり、くしゃみ、鼻炎、喘息、便秘、下痢、腹痛、皮膚や頭髪の乾燥など、幅広い症状として出現するのです。

 

 秋の養生は、こうした大気の乾燥から体を守り、冬に備えて免疫力を高めることが大切なのです。

 

○肺を補う辛味の食材
 辛味の食べ物は、大気の乾燥や気温の低下で働きの弱まった肺や呼吸器の負担を軽減する効用があります。「燥邪」による症状を未然に防ぎ、「肺・大腸」を補う働きをもつのが辛味の食材です。ねぎ、しょうが、わさび、唐辛子などの薬味や香辛料はもちろん、東洋医学では、大根、たまねぎ、しそ、にらなど、ほのかに辛味のある食材も辛味に配当します。ビール以外の日本酒や焼酎、ウイスキー、ワインなどのアルコールも辛味に配当されます。

 

 辛味の食材は、体を温めて余分な水分や滞った気の流れを促し、発散を助ける作用があります。お酒がストレス解消に利用されるのも発散作用があるからです。風邪の初期に、辛味の酒としょうが、卵を合わせた「卵酒」が飲まれるのも、皮膚からの熱の発散、発汗を活発にするためです。

 

 辛味はまた、大腸の働きを活性化して便通を改善する作用もあります。皮膚や呼吸器のみならず、肺と表裏一体の関係にある大腸にも働きかけて、秋に弱りやすい臓腑器官を手助けしているのです。

 

 「肺・大腸」が弱りやすい秋は、辛味の食材で自分自身を補うとともに、相剋の関係にあたる「肝・胆」を、酸味で保護する必要があります。梅干しや酢らっきょう、酢の物などの酸味の食べ物で「肝・胆」を補い、辛味の食害によって傷つくのをあらかじめ防ぐことが大切です。酸味は肝臓の働きを正常にして、疲労回復にも効果があります。

 

 辛味に酸味を添えることは、ピリッとした辛味をマイルドにする調理のルールでもあります。からしの強い刺激をマイルドにするために、からしは食酢で溶くのが基本です。焼き魚には大根おろしに加えて、すだちをしぼり、焼き鳥には七味唐辛子と一緒にレモン汁をかけるなど、辛味に酸味の食材を添える例はよく見られます。

 

○肺を潤す旬の昧覚
 辛味の食材以外にも、秋にとれる旬の食べ物には、「肺・大腸」の働きを補うものがたくさんあります。
そのひとつが梨です。年中見ることの多くなった果物のなかで、梨は店頭にのぼる時期も限られ、旬を感じることのできる数少ない果物のひとつではないでしょうか。最近は収穫が早まり、夏の果物というイメージが強くなりましたが、本来は秋が旬。9月から11月にかけて収穫されます。水分をたっぷり含み、シャリシャリとみずみずしい梨には、肌に潤いを与え、のどの渇きを止め、声がれや咳を止める効果があります。まさに「燥邪」による秋のトラブルを防ぐのにふさわしい旬の食べ物といえましょう。

 

 同じく秋が旬の果物である柿も、咳を抑え、口の渇きを止め、乾燥による呼吸器系の働きを助けます。「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、鼻やのどの粘膜を健やかに保ち、免疫力を高めるビタミンCも豊富に含み、寒さの厳しくなる冬に向けて、風邪をひきにくい体をつくるのに大いに役立ちます。

 

 また、いも類や大根をはじめとする根菜類も「肺・大腸」に働きかける旬の食材です。たとえばさつまいもは口の渇きを止めて肺を潤すと同時に、便通を改善して大腸の働きも活発にします。豊富な食物繊維と緩下作用のあるヤラビンという物質の相乗効果により、腸内環境を整えて便通を促してくれます。

 

 晩秋から冬にかけうまみが増し、一年でもっともおいしくなる大根は、ピリリとした辛みが特徴の辛味の食材で、「肺・大腸」を助け、痰を切って外に排出する働きがあります。余分な熱が体内にこもって咳や痰が出る場合に有効です。また、大根が消化によいのは、でんぷんを分解するジアスターゼなどの消化酵素が豊富に含まれているからです。れんこんもまた肺を潤し、乾燥して熱を帯びた肺の熱を取り去る効果があります。れんこんの粘り気のもとであるムチンは、粘膜を保護して丈夫にする効果があるため、鼻やのどの乾燥を防いで働きを高め、病原菌の侵入を防ぎます。

 

 こうしてみると、秋にとれる旬の食べ物に、「肺」を潤し補うものが多いことがわかります。葉野菜や熱を冷ます山菜などに食効を求めた春夏の熱い季節とは、体にとって必要なものが明らかに異なるわけです。その時季にとれる食べ物は、その時季に体の必要とする養分を十分に備え、その時季に起きやすい症状を防ぐ働きをもっているのです。反対に、春夏にとれる野菜や果物類のように、水分が多く、体を冷やす食べ物は、秋口からは控えるようにしなければなりません。

 

 旬の食べ物を摂ることや日本の伝統料理にはそれぞれ意味があるんですよ。


昭和堂薬局 | 2015年9月24日

 

やすらぎ通信 お盆

通信38号

 

昨年9月にスタートした「やすらぎ通信」の第4弾です。

 

仏教では、身心一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。身体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は、似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。
前回は、東洋医学における春の養生訓をご紹介致しました。今回は夏の養生訓です。

 

東洋医学では夏の養生訓について次ぎのように述べられています。

 

夏の三箇月は万物が繁栄し、秀麗(しゅうれい)となる季節で、天の気が下降し地の気は上昇して、天の気と地の気は上下交わり合い、万物も花開き実を結ぶ。人々は少し遅く寝て少し早く起きるべきである。夏の日の長さ、暑さを厭(いと)うことなく、気持ちを愉快にすべきで、怒ってはならない。花のある植物と同じように満開にさせ、体内の陽気を外に向かって開き通じ発散することができるようにさせるのである。これがつまり、夏に適応し「長気」を保護する道理である。もし、この道理に反すると、心気を損傷し、秋になって瘧疾(ぎゃくしつ)を発することになり、「収気」に適応する能力が減少して、冬になると再び病を発する可能性がある。
「黄帝内経」(こうていだいけい)・『素問・四気調神大論』(そもん・しきちょうしんだいろん):中国伝統医学の古典より

 

夏は陽の気、言い換えると太陽の作用が最大のときであり、エネルギー(東洋医学では気といいます)も最も強くなる季節です。「木・火・土・金・水」の五行のうち、「火」にあたるのが夏。熱く、明るく、上へ上へと向かって広がり、燃えさかる「火」のイメージです。人体の中で、「火」を司っているのは「心」です。東洋医薬学には「心は血脈を司り、神を蔵し、神志を主る」という働きがあります。「心」の働きは血液循環をコントロールしています。同時に「神」の意味は人間の精神や意識・思考活動、いわば「こころ」をさします。私たちの精神活動のすべては「心」がコントロールしているのです。夏の暑さが厳しくなり、陽の気が最大になると、この「心」の働きも亢進し、オーバーヒートしやすくなります。
私たちの体は、暑くなると汗を出して体内の熱を逃がし、上手に体温を調節するようになっています。しかし汗は同時に血液中の水分とミネラル分も一緒に排出してしまうため、血液の濃度は高くなり、ドロドロと流れにくい状態になります。汗をかけばかくほど体温は下がって涼しく感じられますが、一方で心臓は、流れにくい血液を全身に運ぶためにフル活動しているわけです。
「心」がオーバーヒートすると胸が苦しくなり、脈が早く打つ頻脈や不規則になる不整脈を起こしやすくなります。血液循環も悪くなり、動悸・息切れ・不眠・動脈硬化、ひいては心筋梗塞などの心疾患につながりかねません。

 

○夏の「暑邪」と「湿邪」
東洋医薬学では夏の暑さも病因のひとつと考え、これを「暑(熱)邪」と呼んでいます。「暑(熱)邪」に侵されると、体がほてる、のぼせる、息切れがする、寝つけないなどの熱症状が出現します。汗が多くなって必要な体液やエネルギー(気)も出てしまうため、体力が奪われて非常に消耗し、熱中症などになりやすくなってしまいます。
日本の夏のもう一つの特徴が高い湿度です。この高い湿度がさらに私たちの体に悪影響をもたらします。これを「湿邪」といいます。夏季は暑さのため、冷たい飲み物や食べ物を摂ることが多くなりますが、これも胃腸にダメージを与える原因です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」といわれ、冷たい飲み物は、のど越しはいいものの、胃腸内の湿度を高めて、冷やすために働きが弱まり、消化不良、食欲不振、下痢、だるさなどの胃腸障害を起こすことになります。

 

湿度の影響は全身にもおよびます。水分の摂り過ぎで余分な水分が体内に滞るために、筋肉や関節が冷えて、むくみやだるさ、痛みを招くのです。とくに汗をかいたあとに冷房で冷えたり、長い時間、手足を冷気にさらしたりすると、とたんに四肢がだるく感じられます。湿気が筋肉や関節にとどまると、筋肉や関節が縮んでしまいこむら返りや関節痛を起こすこともあります。梅雨時などに腰痛を起こしたり、首を寝違えたりする人が多くなるのも「湿邪」の影響です。

 

東洋医学の考え方で、夏を健康に過ごすための食べ物は、「体を冷やす」食べ物を取ることよりも、夏は熱がこもりやすいので、「体内の熱を冷ます」食べ物を取りましょうと言うことになります。体内の熱を冷ます食べ物の代表が、「苦味」の食材です。それと苦味には、物を下におろす作用(消化作用)があります。まさに夏の一杯のビールは、その代表と言えますね。
ふきのとうやうどのように、まだ肌寒い春先にとれる苦味は、体を温める温性の食材が多いのに対し、夏にとれる苦味の野菜は、寒涼性のものがほとんどです。これら苦味のある食物は、強心、消炎、止血、解熱、鎮痛作用があり、体内の熱を冷まして、夏にオーバーヒートしやすい「心」の高ぶりを鎮める効用があります。逆に働きすぎで疲弊した「心」を補い、正常に戻す作用もあるとされます。
夏の炎暑に苦味のホップが入ったビールが喜ばれ、鹿児島や宮崎、沖縄などの南の地域でゴーヤ料理が郷土食として食べられるのも、暑気を避ける生活の知恵といえるのです。

 

○胃腸を冷やす苦味の食材
体内の熱を冷ます夏にふさわしい苦味の食材ですが、摂りすぎると胃腸を冷やす食害があります。気温が低くなる秋冬はもちろん、冷え性の人や胃腸の弱い人も摂りすぎには注意が必要です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」ため、冷やしすぎは機能の低下を招きます。苦味による胃腸の冷えを未然に防ぐため、苦味には温める作用がある辛味の食材を組み合わせるのです。
しょうが、唐辛子、からし、わさび、ねぎ、しそ。これらスパイスや薬味といわれる食材は、すべて辛味に属します。スパイスの利いたカレーを食べると、顔から汗が出てくるように、辛味成分は体を温めて、体内にこもっている熱気や余分な水分を発散して体温を調節する効果があります。同時に、大腸や呼吸器を活性化させる働きもあるので酷暑のインドで、カレーが常食されるのも、暑さから体を守るための食習慣にほかなりません。たっぷり含まれている辛味が胃腸を温め、食欲を増進し、発汗を促すため、胃腸が疲れやすい夏場にはぴったりです。

 

○旬の食材で体の熱を冷ます
苦味のほかにも体の熱を冷ますのに最適なものが、スイカやトマト、きゅうり、なす、メロン、冬瓜など、夏に旬を迎える食材です。夏が旬の野菜や果物には、胃腸の働きを補い、体の熱を冷ます作用があります。たとえば、なすは「脾・胃」を補う甘味に属し、体を冷やす寒性の食材です。「秋なすび嫁に食わすな」ということわざがありますが、これは、「なすは体を冷やす作用が強いため、これから子どもを産む嫁には食べさせないほうがよい」という姑の思いやりを表したものです。ここでいう秋とは旧暦の九月頃のことで、現在の八月をさします。暑い季節には、体を冷やす寒涼性の作物が、自然に作られるようになっているのです。まさに夏の食材は、暑さから体を守ってくれるのです。水分が多く含まれる夏野菜や果物は、のどの渇きを癒すのにも最適です。汗として流れ出た水分を補充すると同時に排尿を促し、体内の水分代謝を高める効果もあります。汗と一緒に排出されるビタミンやミネラルを補うこともできます。暑さでのどが渇いたときは、冷たい清涼飲料水を飲むよりも夏野菜や果物を摂れば、体に栄養を与えながら水分補給ができるのです。私は、トマトが食べられないのですが、なぜかトマトソースは食べられます。以前母が言っていたのですが、子供のころはよくトマトを食べていたそうです。そのことを考えると、胃腸が弱く、冷え性の私は知らず知らずに体が冷える生トマトを食べず、温めて食べるトマトソースは食べていたのかもしれません。

PowerPoint プレゼンテーション

 


昭和堂薬局 | 2015年6月29日

 

夏の養生訓

 

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 子供たちの夏休みが始まる頃、私たちは夏を感じますが、今年の二十四節気では5月6日の立夏から自然界は春から夏へと変化し、6月22日が夏至にあたり昼間の長さが一番長くなる頃で、暑さのピークを迎えるのは7月23日の大暑となります。
 春から夏にかけて気温が上昇するように、夏になると私たちの身体や血を動かしている陽気も盛んになるのですが、日本は島国で周りを海で囲まれているため湿度が高く、最近ではヒートアイランド現象や温暖化などで年々暑さが厳しくなっており、室内はエアコンで冷えやすくなっていますので、体温調節が非常に難しくなってきています。

 上手に夏を過ごすことが難しい環境となりますが、この時期の養生が秋~冬の体調に大きな影響を与えるといわれています。

 

「万物は春に生じ(誕生)、夏に長じ(成長)、秋に収め(収穫)、冬に蔵す(貯蔵)」

 

 夏は成長の季節ということになります。
 夏は陽気が盛んになるため大量の汗をかき、身体にとって必要な水(東洋医学では津液といいます。)が減少する時期で、水分の補給は大切ですが、あまり冷たくないものをこまめにチョコチョコと飲むのが基本です。
 口の中や喉は外気に触れることが多いため暑さを感じて、冷たいものをついつい飲みたくなりますが、喉より先にある臓腑は冷えてしまうとその機能が低下してしまい、身体にとって必要な気・血・津液が作られなくなり、夏バテの原因となるため、冷たすぎるものの摂り過ぎは注意しなくてはなりません。
 また、夏の湿度も胃腸機能を低下させます。この時期に味の濃いものや油の強い食べ物はさらに胃腸機能を低下させ、食欲を落とし、身体を重だるくさせます。
 人間も自然界の変化に従って、適度に汗をかき、体内の陽気が皮膚を通じて外界に発散するように心がけるべきです。
この“陽気”をうまく発散しないと、身体は暑さを感じ始め、冷房や冷飲を好むようになり、これを夏中続けると下痢をするようになります。また、夏に陽気を発散しないと胸に熱がこもります。
 胃腸が冷えて胸に熱がこもると食欲不振や下痢になりやすくなるため、普段から苦味と酸味のものを適度に食べるのがよいとされています。苦味は心に入り、心の陰気を補い、涼血の働きと暑気を払う作用があります。
 甘味は湿気を助長し、多く食べれば脾(胃腸)を傷めるため、甘味は控えめにし、酸味を加えると、食欲が改善され、夏の倦怠感がとれます。

 

貝原益軒の「養生訓」でも
 「夏は、“陰気”が腹中に沈んでいるため消化が遅い。それゆえ、多く飲食してはいけない。温かい物を食べて胃腸を温め、冷水をできるだけ避けた方が良い。生もの、冷たいものは避けること。冷麺をたくさん食べないこと。脾胃(胃腸)が虚弱な人は、とりわけ下痢に注意すべきである。」としています。
 中国の古書の一つである「千金方」は「冬温かなることを極めず、夏涼しきことを極めず」と教えています。

 

 季節にあった養生を少しでも実践することで夏を上手に乗り切りましょう。
 どうしても難しいという方は漢方薬の力を借りるのも一つの方法です。店頭にてご相談ください。

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2015年6月1日

 

「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」NHKスペシャル

 

 

 NHKスペシャル「新アレルギー治療~鍵を握る免疫細胞~」が4月5日に放送されました。

 

 放送では、抑制性の免疫細胞であるTreg(Tレグ)について解説していました。T細胞という免疫細胞はいくつか種類があり、現在はTh1、Th2、Th9、Th17、Th22、Tregなどが解っています。その中で、Tregは、抗原特異的に免疫応答を抑制し、免疫寛容(無害なものに免疫応答しないこと)維持・過剰な免疫応答の抑制に働きます。Treg細胞は胸腺由来のnTreg(natural Treg)と消化管で誘導されるiTreg(induced Treg)があります。消化管では食べ物などに対して免疫寛容をし、人間と共生している腸内細菌を免疫的に無視するように働いていると考えられています。また、消化管においてグラム陰性菌のクロストリジウム属の細菌がTreg細胞を誘導していることがわかってきています。このクロストリジウム属細菌は、土壌中や動物の消化管などに成育している菌です。放送中にありましたアーミッシュの人達が原始的な生活の中で家畜の面倒を見ていることがTregが多かった理由に挙げていますが、家畜や土壌に多く成育するクロストリジウム属菌に多く接している環境だとも考えられます。しかし、現代社会で生きる我々はどうすればいいのだろうか?いきなりクロストリジウム菌を大量に浴びてしまうのは危険です。クロストリジウム属菌の中にはボツリヌス菌という危険な菌もあります。また、現在の日本の除菌ブームは異常に感じます。たしかに、食中毒を考えると、まな板や包丁などは清潔に保った方がいいと思いますが、布団などは消毒液を掛けて殺菌するのではなく日光に当てた方がいいと思います。宣伝にあるような吹き付けるタイプの消毒液は界面活性剤系の消毒液で、吹き付けた後水分が蒸発した状態で高濃度になった、この消毒液が皮膚粘膜に付着することは避けたいものです。

 

 放送中で、ピーナッツオイルが入ったスキンクリームを乳児の時に使っていてアレルギーになったことが紹介されていました。ピーナッツのアレルギーは皮膚でアレルゲンとして認識してしまいピーナッツアレルギーになることは有名です。日本でも「〇〇のしずく」という石鹸で小麦アレルギーになった人が出て話題になりました。その他、セサミオイル(ごま油)を使ってアレルギーになる人もいます。皮膚は本来、外界の刺激から守るバリアになっています。しかし、何らかの原因でこのバリアがうまく働かずに免疫に反応してしまい、それをきっかけにこれらのアレルゲンを含んだ食べ物を食べてしまいアレルギーを起こしてしまうのです。また去年、国立成育医療センターが親や兄弟にアトピーがある乳幼児のスキンケアでアトピー発症が3割減少したと発表しました。この皮膚のバリア機能を保つことでアレルギーを減らすこともできるのです。スキンケアをすることは正解なのですが、使用したものにアレルゲンになり得る成分が入っていたことでアレルギーになってしまったのです。

 

 NHKスペシャルでは、最新治療として花粉症に対する舌下免疫療法が紹介されていました。これは、少しずつ花粉を体内に入れることで激しいアレルギー反応を抑えつつ、花粉専門の制御性T細胞(Tレグ)を増やす治療法です。しかし、スギ花粉に対するアレルギーを抑えることはできる可能性はありますが、他のもののアレルギーに関して効果はありません。また、アレルギーの人は、Treg自体が少ないので、この舌下免疫療法をしても効果のない人もいます。

 

 今、自分の免疫を正常にしていくためには、腸内環境を整えて腸内細菌のバランスをよくし、腸管での免疫応答を正常にしていくことです。そのためには、バランスの良い食事を心がけ、食物繊維や発酵食品をしっかり摂り腸内環境を整えていくことです。また、病気全般に言えることですが、アレルギーや肥満、生活習慣病、自己免疫疾患、ガンなど様々な病気は慢性炎症が関係していることが解ってきています。その慢性炎症を少しでも抑えられる可能性のあるものが、ω-3系脂肪酸です。最近、健康番組でやっているαリノレン酸で亜麻仁油やえごま油に含まれます。現代人は炎症を起こす時に使われるリノール酸を多く摂り過ぎていることも慢性炎症を起こしやすくしているのです。

 

 少しでも食のバランスを考えて、病気が生まれない身体にしたいですね。
 どうしてもという方は、サプリメントなどの代用品もありますのでご相談ください。


昭和堂薬局 | 2015年4月13日

 

受精 ~卵子から見た受精~

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 生殖細胞は男性の場合は性成熟後も増殖、分裂が継続しますが、女性の場合は胎児期で終了してしまいます。これが、男性は高齢になっても生殖能力があるのに対し女性は生殖期間に限りがある所以です。女性の生殖細胞は、お母さんのお腹の中にいるときが一番多く、約600万個存在しています。その後、生まれた時には300万個になります。減数分裂(染色体が半分になる分裂)は第1減数分裂前期で停止しています。そして、生殖細胞(卵母細胞)は性成熟期(子供が作れる時期)には2万個に減少し、成熟して排卵に至る生殖細胞は400個程度と言われています。周期にもよりますが30年から40年間排卵することになります。45から55歳くらいまで排卵するということです。

 

 性成熟期の卵巣では、卵胞の発育は、原始卵胞から始まります。性腺刺激ホルモンの制御を受けるようになると発育を開始した卵胞(1次卵胞)はさらに発育し、顆粒膜細胞の増殖と第1卵母細胞の容積の増加が起こります(2次卵胞)。この時期の卵胞の発育には顆粒膜細胞と卵母細胞が互いに増殖調整因子を分泌する機構が存在します。さらに発育が進むと卵胞内に、卵胞液の貯留が起こります(胞状卵胞)。生理的には通常、最も発育の早い主席卵胞のみがグラーフ卵胞(成熟卵胞)となり、脳下垂体からの一過性のホルモン刺激であるLHサージ(黄体形成ホルモンが一過性に放出される現象)に反応して、LHサージ開始から36~42時間後に排卵が起こります。

 

 一方、LHサージを受けると、胎児期から休止していた第1減数分裂が再開します。形態的には卵核胞が消失し、減数分裂は完了します。このとき分離する染色体の組み合わせにより遺伝子の多様性は増加します。第1卵母細胞は第1極体(減数分裂により排除された核)を放出し、第2卵母細胞となります。細胞内に残った染色体は直ちに第2減数分裂中期に入り、細胞は卵子となります。ここで第2減数分裂は再び休止し、精子の進入によって再開します。排卵および精子進入は第2減数分裂中期に起こりますが、正常な発生に至るためには精子の進入は排卵後12時間以内に起こる必要があるとされています。このことから、卵子の寿命は12時間くらいということになります。

 

 排卵は、卵子とその周囲に護衛艦のように卵丘細胞や細胞問マトリックス(細胞間に存在する分子構造)からなります。また、卵子の周囲には透明帯と呼ばれる細胞外マトリックスが存在し、受精において重要な役割を担っていて、多精子受精を防いでいます。

 

 精子が卵子細胞膜と融合すると卵子の第2減数分裂が再開し、染色体は分離します。これによって、卵子から子孫に受け継がれる染色体の組合せが決定します。半数の染色体は第2極体として囲卵腔に放出され、卵子側に残った半数の染色体は前核となります。前核形成は卵子内の細胞質因子により制御されるので、精子の前核形成と同時に起こります。2前核期は約12時間継続し、精子、卵子の前核はDNAの複製に伴い容積を増しながら細胞の中心部に移行し融合します。次に前核の融合により4倍体となった染色体は直ちに分離し、第1卵割を経て2細胞期胚となります。

 

 この様にして受精は成立します。受精は単純に卵子の中に精子が入ることなんですが、非常に複雑なシステムで成り立っていたのです。
 この複雑で、神秘的なシステムがストレスや食べ物の影響を受けるわけですから、実際に妊娠に適した状態はそれほど多くないんです。だから、生活習慣や食生活が重要になっていくんですね。


昭和堂薬局 | 2015年3月30日

 

やすらぎ通信 春彼岸

やすらぎ通信春彼岸号

 

昨年9月にスタートしたやすらぎの郷霊園の「やすらぎ通信」のコラム第3弾です!

 

 仏教と東洋医学

仏教では、身心一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。身体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。

前回は、東洋医学における冬の養生訓を紹介しました。今回は春の養生訓です。

 

 第3回 春の養生訓

 

~春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する。~
 東洋医学では四季をこのように捉え、それぞれの特徴にあった養生法を考えます。中国伝統医学の古典の一つである「黄帝内経(こうていだいけい)」の中の『素問・四気調神大論(しきちょうしんだいろん)』では、「四時陰陽の変化は万物の生長(せいちょう)収蔵(しゅうぞう)の根本である。そこで聖人は春と夏には陽気を養い、秋と冬には陰気を養って、この根本に順うのである。こうして聖人は、万物と同様に、生長発育の正常なリズムを充分保てるのである。仮りにこれに反してしまうと、生命の根本が傷つき伐られて、真気もまた損なわれ、壊えてしまう。そこで陰陽四時の変化というものは、万物の生長、衰老死亡の根本だというのである。これに反すると災害をまねき、これに順えば疾病も生じない。これがつまり養生法をわきまえるということである。養生法については、聖人は着実にこれを行うが、愚か者はかえってこれに背いてしまう。」と書かれています。
 この季節に背くようなことをすると、それぞれの季節に応じた病気に繋がると考えました。
 また、『素問・四気調神大論』には、「春の三箇月は、万物が古いものを推し開いて、新しいものを出す季節であり、天地間の生気が発動して、ものみなすべてが生き生きと栄えてくる。人々は少し遅く寝て少し早く起き、庭に出てゆったりと歩き、髪を解きほぐし、体をのびやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させて、生まれたばかりの万物と同様にするがよい。ただひたすらその生長にまかせるべきで、殺害してはならない。ただひたすら成長を援助するべきで、剥奪してはならない。大いに心をはげまし目を楽しませるべきで、体をしいたげてはならない。これが春に適応し、「生気」を保養する道理である。もし、この道理に反すると、肝気を損傷し、夏になって変じて寒性の病を生じ、人体がもっている夏の盛長の気に適応するという能力を減少させてしまう。」と書かれています。

 

 このように、春は、ピンと張りつめた空気がゆるみ、しだいに日がのびてくると、自然界には春の暖かな陽気が満ちてきます。草花は芽吹き、地中からはさまざまな虫たちが顔を出し、生きものたちの命がいきいきと育まれる、生命力あふれる季節なのです。それは人間にとっても同じこと。春になると、おのずと何か新しいことを始めたくなるものです。体の中には、やる気や元気をもたらす”陽の気”が高まり、エネルギーが満ちあふれてきます。春は人間も活動的になり、それを発散するのが春の養生法です。しかし、自然の気に逆らって室内に閉じこもり、発散しないでいると、陽の気がどんどん上昇して体内に滞り、そのために上半身に異常が現れやすくなると考えます。春のめまいやのぼせ、気持ちの高ぶりによる不眠などは、春の陽気の上昇にともなう代表的な症状といえます。

 

〇肝の働きが乱れる春

 東洋医薬学では、めまいやのぼせなど、春の陽の気の高ぶりによる症状は、肝機能の異常亢進によってもたらされると考えます。東洋医薬学でとらえる「肝」のもっとも重要な働きは、血液を貯蔵し、調節することです。「肝」の働きが異常に高まると、「肝」に貯蔵されるべき血液がおさまらず、陽の気とともに上昇して、上半身に滞るようになると考えます。その結果、頭に血がのぼって、のぼせやめまい、不眠、頭痛、肩こりなどを起こしやすくなるのです。高血圧も「肝」の異常亢進による症状のひとつです。

同時に、「肝」は「思考を司る」器官といわれ、精神的な作用が強い臓器ととらえられています。ものごとを論理的に考え、判断し、実行することと「肝」は不可欠な関係にあり、ストレスなどをコントロールして、イライラや不安などの感情を是正する役目を担っているのです。さらに人体の筋肉や腱、関節を動かす働きも「肝」が支配しています。そのため春、「肝」の働きが異常になると、関節の痛みや筋肉がつるなどの症状が現れることがあります。

 

〇肝を補う酸味の食材

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 春に異常亢進しやすい「肝」の働きを正常に戻し、疲弊した「肝」の働きを補うのが、酸味の食材です。酸味とは、文字どおり酸っぱい味で、「肝・胆」をはじめ、眼や腱の働きを補い、滋養する作用があるとされます。梅干し、酢、かぼす、レモン、すもも、さくらんぼなどが酸味を代表する食材です。「酒は肝をいためる」といわれ、飲みすぎは「肝」の大敵ですが、肝機能を高め、二日酔いを解消するうえでも酸味の食材が威力を発揮します。酒の肴には、酢の物などの酸味がよく合い、梅酒やレモンサワー、ジンライムなど、お酒を酸味のフルーツで割ったものが多いのも理にかなっています。また酸味の食材には、食品の腐敗を防いで鮮度を保ち、脂肪を中和して味わいを淡白にし、食をすすめる作用があります。脂ののった青背のさばを、酢でしめた「しめさば」は、酸味の特徴を上手に生かした調理法のひとつといえましょう。酸味は腐りやすいさばの保存を可能にし、脂っこさを消して、さっぱりとした味に変えてくれます。

 

 古くから日本人は、ものごとの大事なことを「肝腎」といい、味加減や健康度を表すのに「塩梅(あんばい)」と呼んで、「肝」を補う酸味を重視してきました。ところが、今日の日本の食生活を見ると、梅干しや食酢、緑色野菜の摂取が激減しています。加えて、有機酸の補給源であった柑橘類などの果物も、甘味の強いものが求められるようになり、酸味の少ない、甘味優先の果物に品種改良されるようになりました。梅干し、ゆず(実)、かぼす、レモンなど、酸味の食材は決して主役になりえるものではありませんが、だからこそ意識して、季節の酸味の食材を取り入れる必要があると思います。とくに酸味の代表ともいえる梅干しは、梅を塩漬けにすることで、鹹味(かんみ)の塩が「腎」を補い、辛味のしそが「肺・大腸」を助けるなど、これだけで三味が補えるすぐれた食品です。肝臓の働きを活発にすると同時に、利尿作用を高めて腎の働きを補い、腸の働きを整えて便秘を防ぐ効果もあります。古来より「梅干しは三毒を絶つ」といわれ、水分代謝障害、血行不良、消化不良を予防する効力があるとされるのも、酸・鹹・辛の三味の働きによるものです。おにぎりやお弁当に梅干しを入れるのも、すぐれた殺菌力を利用して、ごはんが腐敗するのを防ぐために考え出された生活の知恵です。かつては「1日1個梅干しを食べれば病気にならない」といわれ、どこの家庭でも梅干しが常備されていました。塩分の摂りすぎによる弊害が強調され、洋食がふだんの食卓にのぼるようになると、しだいに影をひそめていきましたが、いま再び、効能豊かな梅干しを食べる習慣を取り戻したいものです。

 

  旬の食材

 日本には、四季があり四季の変化に応じて食物は成長し実りのときを迎えます。その四季折々の食べ物が旬の食材です。食べ物は季節と切り離せないものであり、私たちは春夏秋冬それぞれの季節に合わせて生み出される自然の恵みを巧みに取り入れてきました。しかし、今の日本では、ハウス栽培や冷凍・冷蔵技術の発達により、一年中同じ食材が手に入るようになりました。冬に、本来は夏にしかとれないトマトやきゅうりが食卓にのぼることも珍しくありません。かつての日本では、四季の変化に合わせて育まれる旬の食材によって、誰もが季節の移り変わりを実感していたのです。栄養をたっぷりと含んだ旬の恵みを取り入れることによりその季節を乗り切る力を得ていたのです。

 

 春の伝統料理
 「たけのこの木の芽あえ」に「若竹煮」や「うどとわかめの酢みそあえ」いずれも春の訪れを感じさせてくれる伝統料理です。これら古くから受け継がれる日本の料理には、春に起こりやすい症状を防ぐための知恵が見事に生かされています。
たけのこやうどなどの苦味の食材には、陽の気や血液の高ぶりを抑えて熱を鎮める作用あります。ただし、苦味の食材は、摂りすぎると体を冷やすことがあります。とくに、冷え性や水分代謝の悪い人、胃腸の弱い人は摂り過ぎに注意が必要です。

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これを防ぐため、苦味には、体を温める辛味の食材を合わせてバランスをとる必要があります。苦味を摂りすぎると、辛味が支配する「肺・大腸」の働きが阻害されるため、苦味には辛味を添えて「肺・大腸」の働きを補うと同時に、苦味の摂りすぎによる体の冷えを防ぐことになるわけです。たけのこは辛味の木の芽と合わせ、うどは同じく辛味のからしであえるのも、苦昧による弊害を防ぐためであり、実に理にかなった調理法といえます。私たちの祖先は古来より、こうした食の特性に気づき、食害を予防するための組み合わせに配慮してきたのです。
 私たち日本人は、もう一度旬を感じ伝統食を見直す必要がありそうですね。

 


昭和堂薬局 | 2015年3月17日

 

「NHKスペシャル」で“腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー”が放送された!

 

文書

月22日の「NHKスペシャル」で“腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー”が放送されました。

 

 近年、腸内細菌の解析技術が飛躍的に進歩し、多くの病気との関係が解ってきています。この番組でも、肥満、糖尿病、がん、皮膚のシワや腸が脳を支配しているなど腸内細菌と病気の関係を放送していました。しかし番組の中で、肥満に対して良い働きをする短鎖脂肪酸を腸内細菌が出すと表現していましたが、短鎖脂肪酸は食物繊維を原料として腸内細菌が作り出すものです。同じ様にエクオールというシワにいい成分を腸内細菌が出すと言っていますが、これは大豆イソフラボンから腸内細菌によって作り出されるもので、決して何もないところから腸内細菌が吐き出しているものではないのです。これらを作り出す菌が腸内にいても食物繊維を摂らない人には短鎖脂肪酸はできませんし、大豆製品を食べない人にはエクオールはできないのです。

 

 最近の研究でどんな細菌が何をしているかまでは解ってきていますが、その菌をどうやって増やすのかが解明されておらず、1000兆個あるといわれている他の菌とのバランスの問題もあります。

 放送で紹介されているように健康な人の腸内細菌を移植すればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そのことによってどんなことが起こるか分かりません。こうしたことから、治すことが出来ない難病に試験的に試されているのです。

 

 少し否定的なことを言ってきましたが、実際に腸内細菌が非常に重要なことは事実なのです。では、どうしたらいいのか?今私たちができることは、食物繊維や発酵食品をしっかり摂るなどバランスのいい食生活です。その食生活が腸内細菌のバランスを良くしてくれるのです。

 

 すぐに成果は出ないかもしれませんが、少しずつ体は変化していきます。少し食生活を見直してみましょう。

食生活はなかなか変えるのが難しい方はご相談ください。


昭和堂薬局 | 2015年3月4日

 

精子側から見た受精

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受精は精子と卵子が卵管膨大部で成立します。この受精に至るプロセスは精密に調整された神秘的な現象です。
今回は、この受精という神秘的な現象を精子の側から見ていきます。

 

 精子の形成は、精巣において脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンによって開始されます。この分裂を開始する精原細胞はほぼ一生、細胞分裂により供給されます。ここが卵胞と違い男性がいくつになっても妊娠能力があるところです。精原細胞は第1・第2減数分裂を経て半数体の遺伝物質DNAを持つ円形精子細胞になります。ここで遺伝的多様性が形成され、次世代に莫大な組み合わせの遺伝子を伝えることが可能となります。円形精子細胞は受精に適した形態変化、すなわち核の凝縮、先体や鞭毛の形成などを経て精子となります。精巣精子は、本来は充分な運動能力や卵子への進入能力をまだ持っていません。すなわち精子は精巣で形成された後、精巣上体を移動する過程で機能的成熟を果たします。

 

 射出された精子あるいは精巣上体精子は、充分な運動性を持っていても直ちに卵子に進入することはできません。通常精子は女性生殖路を移動してはじめて卵子と出会うので、この過程で受精能を獲得する仕組みを備えています。受精能獲得は精子にプログラムされた一連の生化学反応です。精子細胞内での反応は詳しくはわかっていない部分がありますが、受精能獲得は形態変化ではとらえられない受精に向けての機能変化と考えられています。この変化として精子の運動性(鞭毛の大きな振幅と非対称性)の変化があります。この運動は、透明帯(卵母細胞の細胞膜を取り囲む糖タンパク質)進入において物理的推進力となると考えられています。

 

 精子の受精に向けての形態変化としては、受精能獲得に続く先体反応です。これは卵子への進入に必須の反応で、精子細胞膜と先体外膜が複数の部位で膜融合を起こし先体に含まれる酵素などが放出されます。それによって、透明帯に自らが通過できる狭い通路を形成しながら前進し囲卵腔に達します。精子は囲卵腔に到達すると運動を停止し、卵子の微絨毛により卵子細胞内に取り込まれます。この時、細胞膜の融合が起こります。通常卵管膨大部には複数の精子が到達するので、複数の精子が卵子の細胞膜と融合する可能性が生じる。余剰の精子は表層反応(または透明帯反応)により透明帯で拒絶されます。次に卵子細胞質内に取り込まれた精子は、頭部が膨潤して膨化精子頭部を形成します。膨化精子頭部は雄性前核となり、卵子から発生した雌性前核と融合して最終的な受精の成立となります。

 

 このように精子は精巣で造られただけでは受精することが出来ず男性の体から女性の身体を進んでいくことで、変化していき最終的に受精することが出来るのです。このメカニズムを見ただけでも緻密に制御されていて、なんと神秘的なんでしょうか。
この精子側から見た受精だけでも、これだけ複雑に制御されているため、ちょっとしたことでなかなか妊娠しないこともわかる気がしますよね!
何気なくやっている生活習慣や食生活を見直してみることも重要なんですよ!


昭和堂薬局 | 2015年2月18日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。