『昭和堂薬局』

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「濃いルーほど効く カレーとアルツハイマーの深~い関係」、この新聞記事ってホント?

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 ある新聞記事に「カレーを食べるとボケない」という記事が掲載されました。

 この記事では、「カレーを食べればボケません。少なくともボケの進行を抑えることはできそうです。そもそもカレーが注目されたのは、インド人のアルツハイマー病の有病率の低さです。米ピッツバーグ大学の研究チームがインドと米ペンシルベニア州に住む高齢者(70~79歳)の有病率を調べたところ、インド人は米国人の1/4しかなかったのです。」と書かれています。これは疫学的データであり正しいかもしれません。

 

 しかし、このあとに「辛口だろうが甘口だろうが関係ありません。ポークカレーやビーフカレーの違いもない。アルツハイマー病に効果があるとされるのは、カレーを黄色くするウコン。そこに含まれるクルクミンなのです。ただウコンには大きく分けて秋ウコン(ターメリック)、春ウコン(キョウオウ)、紫ウコン(ガジュツ)があります。クルクミンの含有量が多いのは秋ウコンで春ウコンは少ない。市販のカレールーを買うなら、成分表にターメリックと書かれたものを選ぶといいでしょう」と述べています。

ここで少し考えてみましょう。インドの人達は確かにカレーを食べていると思います。しかしカレールーを使うのでしょうか?おそらく様々な香辛料からカレーを作っているはずです。カレールーからは作っていないでしょう。市販のカレールーの成分表示を見て下さい。パームオイルと書いてあるはずです。

 

 パームオイルはトランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングの原料として使われています。しかしこのオイルの組成は飽和脂肪酸と一価の不飽和脂肪酸がほとんどで、問題になりそうなω-6系の不飽和脂肪酸は10%程度です。これを見るとそれほど問題にはならないように思いますが、炎症が関わる病気を患っている方が食事により敏感に痛みを感じてしまう場合があり、リウマチの方がカレールーから作ったカレーを食べて痛みが強くなることを経験しています。加工に使われたパームオイルは、炎症を悪化させるトランス脂肪酸が多く含まれているのかもしれません、アルツハイマーは炎症が関係している事が云われており、市販のカレールーから作ったカレーは炎症を悪化させる可能性があります。

 

 この様にたとえ新聞記事であっても記事の内容をしっかり吟味しなくてはならないことが解ると思います。もし、この記事をうのみにしてしまいカレールーから作ったカレーを毎日食べてしまったら、アルツハイマーのリスクが上がってしまう可能性があるのです。

 

 最近はインターネットやSNSが発達し巷には情報が溢れています。私達はこれらの情報に振り回され、そこで言われたものを信じて、その商品を買ってしまいがちです。しかし、その情報をきちんと読み解くとカレールーから作ったカレーを食べるのではなく、カレー粉から作ったカレーを食べるともしかするとアルツハイマーが予防できるかも知れないということなのです。この真実がどこかで歪曲したり、“クルクミン”という単語だけを見てしまうことで、この様なことが起こるのだと思います。

間違った情報に振り回されず、きちんとした真実を知りたいものです。


昭和堂薬局 | 2015年2月5日

 

また、今年もアレルギーの季節が近づいてきました。

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 花粉症が大きく話題になる季節が近づいてきました。花粉症でお悩みの方々にとっては嫌な時期ではないでしょうか?
 花粉症をはじめとするアレルギー疾患は、いまだに対症療法しかなく根本的な治療法が見出されていません。
 しかし免疫に関しての基礎研究は、この数年で画期的に進歩してきているのも事実です。免疫反応には、自然免疫、獲得免疫の二つがあります。
 

 自然免疫は、私達の体に花粉やハウスダストといった異物が入ってきた時、最初に対処する免疫反応で、この反応を担当する細胞としてマクロファージや樹状細胞があります。これらは、体内に入ってきた異物(抗原・アレルゲン)を獲得免疫系細胞(T細胞)に提示します。抗原を提示されたT細胞はこの抗原に対し免疫反応を起こします。
 簡単に免疫反応を述べると、花粉症の場合Th2細胞が抗体産生細胞であるB細胞に指令を出しIgE抗体を産生させて対応します。これによりマスト細胞などが動員されてケミカルメディエーターという物質が放出されてアレルギー反応が起こります。
 しかし実際、身体の中ではものすごく複雑な反応が起こっています。例えば、IgE抗体産生もTh2細胞だけでなくTfh細胞も関係している可能性があり、獲得免疫系細胞が動き出す前に、自然リンパ球なるものが存在することも解ってきています。(自然リンパ球と獲得免疫系のT細胞も関係性の詳細については、まだ解っていないのですが…)
この様に、部分的には劇的に進歩している免疫ですが、まだ解らないことが多く残されていて根本的な対策が見出されていないのです。
 

 そのような中、あらゆる病気に免疫が関わり“慢性炎症”という状態が病気を誘発していることも解ってきています。この“慢性炎症”は、肥満や糖尿病などの生活習慣病や自己免疫疾患、アレルギー、がん、認知症などあらゆる病気に関係しています。
 しかし、これらの病気の根本的な治療法が見出されていないのも事実です。
 最近の研究から解っている事の中でどんな事をすればこの“慢性炎症”を鎮めることができるのでしょうか?

 

 免疫学の専門書等を読んでいると、私達が日常生活で行うことで慢性炎症を鎮める可能性があることとして、腸内環境の改善と炎症を抑制する脂肪酸(油)の摂取ではないかと思われます。
 腸内細菌がT細胞を誘導していると言われています。腸内細菌の中で善玉菌である乳酸菌はTh1とTh2のバランスに関係しており、クロストリジア系の細菌がTh17細胞(自己免疫疾患に関係するT細胞)を誘導しています。またセグメント細胞が抑制能の強いTreg細胞を誘導していることが解っています。
 また、免疫が動くことにより良きにつけ悪しきにつけ炎症が起こりますが、これを終息させるためにαリノレン酸(ω3系脂肪酸)系が炎症を抑制し、免疫を終息させていきます。

 

 これらのことから、私達ができることは発酵食品の積極的な摂取と抑制系の脂肪酸であるシソ油や亜麻仁油、魚油のEPAなどの積極的な摂取です。日本人は伝統的な発酵食品や魚を多く食べてきました。しかし、現代の日本の食卓は欧米食が多くなり、それに伴い炎症を促進する脂肪酸(油)である大豆油やコーン油などの油を多く摂るようになり、発酵食品が敬遠され、その発酵食品として販売されているものも品質を簡単に維持するために菌を殺し保存料を入れて出荷しています。
 本当の意味での発酵食品ではなくなってきているのです。

 

 これらの事を解決していくには食生活の見直しが必要だと私個人は思います。自分たちが毎日食べるものですから、もう一度見直してみましょう。病気を予防する方法が見えてくると思います。
 どうしても食事の改善が難しい場合は、食に繋がる様な健康食品の力を借りるのも一つの方法でしょう。
 食事や生活環境を見直し、花粉の季節を元気に乗り切りましょう。あなたに合った改善方法を私達と一緒に考えてみませんか?ご相談をお待ちしております。


昭和堂薬局 | 2015年1月7日

 

やすらぎ通信 正月号

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9月にスタートしたやすらぎの郷霊園の「やすらぎ通信」のコラム第2弾です!

 

 仏教では、身心一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。身体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は、似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康に ついて学んでいきたいと思います。
 前回は、健康とは陰陽のバランスである事。そして、四季折々の旬の食材には季節に合った食性があるという事を紹介しました。今回は、東洋医学が考える冬の性質とその冬を元気に過ごしていくための先人の知恵についてご紹介します。

 

第2回 冬の養生訓 ~春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する~
 東洋医学では四季それぞれの特徴にあった養生法を考えます。中国伝統医学の古典の一つである「黄帝内経」・『素問・四気調神大論』には次の様に書かれています。
 「四時陰陽の変化は万物の生長収蔵の根本である。そこで聖人は春と夏には陽気を養い、秋と冬には陰気を養って、この根本に順うのである。こうして聖人は、万物と同様に、生長発育の正常なリズムを充分保てるのである。仮りにこれに反してしまうと、生命の根本が傷つき伐られて、真気もまた損なわれ、壊えてしまう。そこで陰陽四時の変化というものは、万物の生長、衰老死亡の根本だというのである。これに反すると災害をまねき、これに順えば疾病も生じない。これがつまり養生法をわきまえるということである。養生法については、聖人は着実にこれを行うが、愚か者はかえってこれに背いてしまう。」
 「冬の三箇月は万物の生活機能が潜伏閉蔵する季節である。だから河の水は氷り、地面は凍って裂ける。この時期には、人は陽気をかき乱してはならない。少し早く眠り、少し遅く起きるべきであり、起床と就寝の時間は、日の出と日の入りを基準とするがよい。心を埋め伏し、しまい隠しているかのように安静にさせる。ちょうど人に話しにくい私情があるかのように。また、すでに秘密をつかんだような愉快な気分で、厳寒を避け、温暖に保ち、皮膚を開いて汗を出すようなことをして、閉蔵している陽気に影響を受けさせてはならない。これがつまり、冬に適応して「蔵気」を養うという道理である。もし、この道理に反すると、腎気を損傷し、来春になって痿厥(いけつ)の病を発生し、人が春の生気に適応するという能力を減少させてしまう。」

 

 季節に背くようなことをすると、それぞれの季節に応じた病気に繋がると考えられています。
 冬は厳しい寒さで陽気が抑えられ、陰気が盛んになる季節です。万物が静かに落ち着いている「陰」の季節は、早寝、遅起きをし、活発な活動でエネルギーを消耗することは避け、「蓄える」ことを第一にゆっくり過ごす季節です。また、冬の寒さは自然界の邪気「寒邪」となって身体に侵入し、さまざまな不調を引き起こす原因にもなるので注意が必要です。寒邪の侵入によって身体が冷やされると、カゼ、関節の冷えや痛み、四肢の冷えなどの症状が現れます。

 

○腎(じん) ~人体の五臓の中で、冬と関係が深いのは「腎」~
 「腎」は人体の生命活動を維持する栄養物質である「精」を貯蔵し、全身に精力を与えて根気を生み出します。また、免疫力や防衛力の要であり、心身の成長発育を促す働きがあります。同時に、生殖活動を生み出します。つまり腎は人体の生命活動を維持するエネルギーを蓄え、全身にこれを供給し、健全な働きを維持する役目を担っているのです。そのため、腎が弱ると、生命エネルギーが衰えて気力、体力も低下し、活動量も落ちてしまいます。
 もうひとつ重要な働きが、腎は体内の水分を蓄え全身に分布させ、尿を生成し排泄して水分代謝を管理しています。さらに腎は、骨と髄の成長発育と密接に関係しその異常は、その窓口である耳に表れます。古典では、「腎気は耳に通じ、腎和すればよく五音を聞く」(霊枢脈度篇)とされ、腎と耳が密接な関係にあることを説明しています。

 

○冬は「鹹味(かんみ)」が必要!
 冬は腎臓が一番働く季節と述べましたが、漢方で言う「腎」を助ける味、冬に必要な味は、「鹹(かん)」という味で、これは塩辛い味です。腎臓を助ける味は「ミネラル」であると漢方の世界では言われています。現在の食塩・純度の高い塩化ナトリウム(NaCl)の味を指すのではなくて自然のミネラルを含む塩と考えたほうがよいようです。
 寒さの厳しい北海道・東北と一年を通して暖かい南九州・沖縄の食生活を比べると、大きく異なるものの1つが塩分の摂取量です。北国では味噌やしょうゆの塩分濃度が高く、漬け物や佃煮、魚の塩漬けなど保存のためにも塩をふんだんに用いた郷土料理がたくさんあります。それは、塩気の多い食べ物には、体を温める作用があるからです。血液内の塩分濃度が高まるとエネルギーの燃焼作用が盛んになり体温が上昇するのです。塩分の多量摂取は寒さに耐え、体が冷えるのを防ぐための人間の知恵なのです。冬に弱りやすい腎を補うのも、塩をはじめ味噌やしょうゆなどの塩辛い味である鹹味の食材です。鹹味は大小便の排泄に不可欠な味であり、「腎・膀胱」の機能を補い泌尿器の働きを助けて、体内の水分代謝を調整する働きがあります。腎気を養い、骨髄を丈夫に保ち衰えたエネルギーを回復するためにも無くてはならないものです。ほかの食物では取れないナトリウム、マグネシウム、亜鉛等のミネラル類の補給源でもあるのです。

 

 ところが、現在では塩分が必要以上に敵視されています。「高血圧に塩は駄目じゃないか!」といわれます。しかしながら、天然塩を代表に、バランスの取れたミネラル塩や醗酵物の塩を適量取るには問題はありません。むしろ化学薬品のような塩化ナトリウムを食塩として取ることが問題なのです。天然塩の中には、苦汁(マグネシウム)が入っており、これは心臓を守り助ける苦味となります。化学薬品の塩化ナトリウムの鹹味だけに較べ、天然塩は鹹味に苦味が入ることにより血圧を上げにくくするのです。
 また鹹味には、硬いものをやわらげる作用があり、体にできたしこりを解消する効果もあります。昔の人は肩が凝ると入浴時に塩を肩にすり込んだそうです。北国の人々は、「寒邪」によって血管も毛穴も収縮し、水分代謝をコントロールするために、「腎」に過剰な負担がかかります。それを防ぐために、体を温めて腎を保護する鹹味の食べ物を必然的に多く取り入れてきたのです。

 

先人の知恵 ~おせち料理~
 漢方の世界では、黒い色は、冬一番働く臓器、腎臓(じんぞう)を守る色とされます。おせち料理にはこうした腎(じん)を補う食材(黒豆・昆布・田作りなど)が沢山取り入れられています。

 

ゴボウの昆布巻き
 鹹味(かんみ)(塩味)の昆布でゴボウを巻いて、しょうゆと砂糖で味付けしたものです。「よろこぶ」事の多い年にと願いを込めています。昆布をはじめわかめやひじきなどの海草類には、尿の出を促して、水分代謝を高め、腎機能を補う働きがあります。鹹味の昆布に相剋(そうこく)にあたる苦味(にがみ)のゴボウを組み合わせて(塩辛いものが多いと心臓、血圧、血管に負担をかけます)心臓の働きを補うバランスの良い組み合わせです。海藻(かいそう)のぬめりをもたらす「フコイダン」という多糖類は、水に溶けやすい性質を持った食物繊維で、便通を整えると同時に、血液中のコレステロールを低下させて血圧を下げ動脈硬化を防ぐ作用もあり、この点でも相剋の「心臓」を助けています。ミネラルと結合しやすいために、過剰に取りすぎたナトリウムの体外に排出するのにも役立ちます。

 

田作り
 鹹味のごまめ(片口イワシの稚魚(ちぎょ))をしょうゆ風味の飴(あめ)炊きにした「田作り」も腎(じん)を補う一品です。かつては田畑の高級肥料として片口(かたくち)イワシが使われていたことから、豊作を願ってお正月に食べられるようになったと言われています。「田作り」には、筋骨を強くして、内臓の働きを良くして体を温め、水分代謝を促す効果があることを、人々は経験的に察知していたのかもしれません。

 

栗きんとん
 意外なところでは、「栗きんとん」の栗も、腎を補う鹹味に属します。クチナシの実で黄金色に色づけされた「栗きんとん」は、その豪華さからお正月の定番料理となりましたが、相尅関係で甘味の砂糖によって腎の働きが抑えられるのを、鹹味の栗によって未然に防いでいる、すぐれた組み合わせといえます。黄金の布団に見立てて金運の上昇を祈ります。

 

 おせち料理に代表される日本の伝統食はこのように理にかなった組み合わせになっています。
健やかに心穏やかな日々が送れますように祈りつつ、おせち料理をつまんでみては如何ですか。

 


昭和堂薬局 | 2014年12月26日

 

冬の養生 その二

 

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 前回、“冬は平静に落ち着いて過ごす”とお話しました。
 12月は忘年会やクリスマスなどの行事も多くなります。本来、冬は人間を含め多くの動物が、エネルギーをしっかりと蓄える“収蔵”という季節にあたります。
 気や精といった身体にとって必要なエネルギーを消耗しないようにし、しっかり元気を蓄える季節なのです。しかし年末年始はイベントが多く、不摂生をしがちになります。不摂生で体力を消耗すると、寒く厳しい季節である冬に体が適応できず風邪などの感染症にかかりやすくなります。また、冬のこの時期にエネルギーを蓄えておかないと、立春を過ぎたころ温病にかかるとされています。温病とはインフルエンザなどの感染力の強い病気を指します。

 

 また、冬は精を必要以上に漏らさないような生活を心がけなくてはいけません。冬は暖房のかけ過ぎなどで汗をかくことにより精を漏らしてしまいます。夜遅くまで起きているだけでも精を消耗しています。夜遅くまでお酒を飲んでいると、体が必要以上に温まり、やはり汗までかかなくても皮膚はゆるみ、精を漏らしていることになります。そのため、立春の頃に高熱の出る風邪を引きやすく、また精を漏らしているために抵抗力は落ち、免疫力は落ちます。
 昔の方に比べ「栄養」状態は良くなりましたが、私たち現代人は「営養」をしていない生活を送っています。

 

※営養:語源は中国に原典があり、「営食養生」という言葉で、「食を営めば生命が養われる」との意味があります。
栄養:富国強兵が叫ばれていた時代の背景を受け、「食を栄え」さすことで国民を「養い」、体力を向上させようとの狙いから作られた言葉。中国では今も「営養」であって「栄養」ではないそうです。

 

 夜遅くまで起きていることが、精を漏らすことにつながります。冬は日が短く、夜が長くなります。そのため、早く寝て、遅く起きるという夜の長さに合わせた生活が健康につながります。
 師走で忙しい季節ですが、忘年会などは極力早めに切り上げて過ごす生活が良いでしょう。

 


昭和堂薬局 | 2014年12月5日

 

大和酵素が酵素飲料の元祖です!

健康レシピ(ドレッシング)

 


 11月16日に関東むびょう研究会で酵素飲料について講演をしてきました。
その内容をご紹介しながら、酵素飲料の選び方や摂る利点について参考にして下さい。
 昭和21年大和酵素創業者である大和国生氏は、日本で初めて酵素飲料の開発に着手しました。当時は戦後の食糧難で「1人でも多くの人に、健やかに長生きしてもらいたい!」という思いで酵素飲料を開発したそうです。そして現在その伝統的な技術を受け継ぎ、大和酵素は60種類以上の厳選された材料を皮や種まで発酵させ、エキスを抽出しています。

 

 その製法は、野菜や果物など原材料を丁寧に洗浄し、ヒノキの樽の中に仕込みます。同時に糖分を配合し浸透圧を利用し、厳選された原材料から酵素やビタミン、ミネラルなどの有効成分を抽出しやすくします。そこに大和酵素秘伝の麹菌や乳酸菌、酵母などを加えじっくりと熟成していきます。この伝統的な製法の利点の一つが糖(黒糖・粗糖・麦芽糖・ブドウ糖・オリゴ糖など)の添加で、これをすることでエキス濃度が上がり保存料などの添加物が必要のない伝統的な保存方法になるのです。

 

 そもそもこの伝統的な製法の発酵とは何なのでしょうか?発酵とは有用微生物により、香りや味わい、色、栄養価をつくりだし、人が利用しやすい成分にしてくれるものです。これら発酵食品は世界各国に伝統食として存在し、発酵食品を摂らない民族はいません。また、人間は本来、腸内細菌によって自らが腸内で発酵し消化吸収の助けをしているのです。
日本にはさまざまな伝統的な発酵食品があります。味噌や醤油、納豆など多くの発酵食品が日本人の健康を支えてきました。しかし、現代のスーパーなどの店頭に並んでいるこの伝統的な発酵食品の一部は、見た目の製品の変化を嫌い、菌を殺し出荷されています。言い換えると、その製品は本当の意味での発酵食品でなくなっているのです。
そんな中、健康番組などではヨーグルトを取り上げてブームになっていますが、ヨーグルトは日本の伝統食ではありません。日本では発酵食品に酵母や麹を使ってきました。日本人にはこの酵母や麹を使った食品が体に合っているのです。
私たち人間は、たくさんの細菌と共存しています。皮膚や腸、女性では膣に到るまで常在菌がいるのです。その中で最も大きいのが大腸です。大腸に存在する腸内細菌は1000種類、数にして1000兆個、重さにして1㎏にも及びます。そして近年、添加物の摂取や除菌ブームなどで我々の腸内細菌は変化してきています。それが様々な現代病につながっているとも言われています。その腸内細菌をバランスよくしていくために発酵食品が必要なのです。

 

 酵素とは何か?酵素は、すべての生物が生命を維持していくうえで欠かすことのできない物で、消化・吸収・代謝・排泄に関わっています。我々人間も酵素を持っています。しかし、この自分で持っている酵素には限りがあると言われています。そこで、食べた物から酵素を取り入れ節約しているようです。その良い例が、大根が持っているジアスターゼで、我々は大根を摂ることによりこのジアスターゼが消化・吸収を助けてくれるのです。
この一連の消化・吸収・代謝・排泄がうまくいかなくなると、健康を維持できなくなります。そして、その消化・吸収・代謝・排泄には、酵素はもとより腸内細菌も重要なのです。
また、今の日本は飽食の時代と言われています。いつでも、お腹いっぱい食べることが出来ます。多くの方は、食べ過ぎてしまっています。人間は長い間飢餓の時代を過ごしてきました。そしていま直面している飽食の時代に体がついてきていません。身体は摂り過ぎた栄養を飢餓に備え貯めておくシステムがあるので、食べ過ぎることで太ってしまうのです。また、人間は食べた物を消化・吸収・代謝・排泄をしなくてはいけません。食べ過ぎると、この消化・吸収・代謝・排泄を酷使することにもなるのです。その結果、酵素は浪費され腸内細菌が変化します。先ほども言いましたが、この消化・吸収・代謝・排泄のシステムがうまく働かなくなると、健康は維持できないのです。

 

 そこで、先人の教えである断食がこの消化・吸収・代謝・排泄システムに休む時間を与え正常に戻してくれるのです。そして、この断食に酵素飲料を取り入れると、酵素やビタミン、ミネラルなど最低限体に必要な物を取り入れながら断食できるのです。
日本人の食事は大きく変わってきています。日本の伝統食が敬遠され、欧米の食文化が入ってきました。また、便利で簡単早いということでインスタント食品や加工食品が開発され、多くの方に食べられるようになってきました。しかし、そこには多くの添加物が入り、我々の身体を蝕んでいます。添加物は国が許可している安全なものと思われるかもしれませんが、短期的には安全かもしれませんが、長期的(3世代くらい見ないと分からないと言われています)にはその影響はまだわかりません。また、危険性を訴える論文も出ています。自分たちの身体は自分たちで守らなければいけない時代です。うまくこの酵素飲料を取り入れ、少しでも良いい食生活を送りたいですね!

関東むびょう研究会(26.11.16)

 

 昭和堂薬局では、酵素飲料をジュースの代わりに飲むことや、ヨーグルトにかけたり、また、ドレッシングレシピなど紹介しています。講演当日はこのドレッシングをみなさんの前で作り懇親会で皆さんと頂きました。
また、酵素飲料の選び方ですが、保存料などの添加物が入っていないことと発酵した菌が生きている物にしたいですね!


昭和堂薬局 | 2014年11月18日

 

もうすぐ立冬を迎えます~東洋医学から考える冬の養生~

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 「春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する。」
中医学では四季をこのように捉え、それぞれの特徴にあった養生法を考えます。
立冬の時期は秋から冬への季節の変わり目で、昼夜の温度差、寒暖差が大きくなり急な冷え込みなどによって体調を崩しやすく、一年のうちで最も病気にかかりやすい時期とされており、その後、本格的な冬に入ると厳しい寒さによって陽気が抑えられ、陰が盛んになる時期となります。
万物が静かに落ち着いている「陰」の季節にあたり、この季節は活発な活動でエネルギーを消耗することは避け、「蓄える」ことを第一にゆっくり過ごす時期と考えましょう。

 

 中国伝統医学の古典の一つである「黄帝内経」に「冬の3か月は、これを閉蔵といい、水は凍り、地は凍って裂ける。人は陽気をかき乱してはならず、早く寝て、遅く起き、必ず日光を待ってすべきである。」とあり、江戸時代の儒学者である貝原益軒も「養生訓」で「冬は心を静かに安定させ、衣服を多く重ねたり、あるいは火で身体を温め過ぎてはならない。力仕事をして汗をかき、“陽気”を漏らしてはならない。」と教えています。
文中の「早寝遅起き」は睡眠時間を増やして身体の陽気を養うことが目的であり朝寝坊を勧めるわけではなく、日の出の時間を基準に起きるのが良いといわれています。

 

 どちらも冬は平静に落ち着いて過激なことは慎みましょうということを教えています。

 また冬の寒さは自然界の六淫の一つである「寒邪」となって身体に侵入し、様々な不調を引き起こす原因にもなるので注意が必要です。寒邪の侵入によって身体が冷やされると、感冒や関節の冷えや痛み、四肢の冷えなどの症状が現れます。
冬は陰陽五行説において「腎」との関係が深く、「腎」は生命維持の根源となる“元気”や“精”が貯蔵されている臓であり、成長や発育、生殖などと深く関わる大変重要な臓器とされているため、大事にすることが必要となります。
 腎の働きが活発であれば生命力も強くなり、元気に冬を乗り切れるのです。
食べ物に関しては、「立冬補冬」という食習慣があり、「補」は食べ物によって体調を補うことを言い、冬の寒い時期に育つ食物を、寒い季節に合った調理方法で食べることが健康な身体を育て、維持し、病気を未然に防ぐ最良の方法としています。

 

【体を温める効果のある食べ物】
生姜・唐辛子・かぶ・かぼちゃ・ねぎ・にんにく・たまねぎ・にんじん・ごぼう・にら・赤身の肉・卵など
季節にあった養生を少しでも実践することで冬を上手に乗り切りましょう。

 

 どうしても難しいという方は漢方薬の力を借りるのも一つの方法です。店頭にてご相談ください。

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2014年10月28日

 

ホントにうつなの?

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 最近、メンタル疾患の相談が多くなっている気がします。
 「メンタル疾患が多くなっているのは、今に始まったことでない!」といわれそうですが、最近更に増えている気がします。精神疾患の診断基準が19年ぶりに変わったばかりで、その境界線の判断が難しくなったとも言われています。

 

 思い出したのが2年前に読売新聞に載っていた「おかしな医師たち」というコラムです。その一部を紹介します。

 

 「社会不安障害(社交不安障害)は完治します! 薬で完治します!」
 社交不安障害の治療をテーマに、製薬会社が主催したマスコミ向けセミナーで、講師を務めたクリニック院長はそう連呼した。この「薬」とは、SSRI(抗うつ薬)を指す。2009年10月、SSRIのパキシルが社交不安障害の治療にも使えるようになったことを受けて、院長が臨床での使用経験をマスコミに披露したのだ。
 社交不安障害は、人前で話をしたり、人と食事をしたりする時に、強い不安や恐怖に駆られる病気だ。「恥をかくのではないか」という不安が大きくなり、手足の震え、動悸、赤面、尿意などの症状が現れる。このような状況を避けようとして、日常生活に支障を来たすこともある。だが、過度の緊張で失敗することは誰にでもあるため、過剰な診断や投薬の恐れが懸念されている。
 SSRIが社交不安障害に効く仕組みは解明されていないが、脳の扁桃体などに作用して、不安感の暴走を抑える働きがあると考えられている。ただ、薬はあくまで対症療法で、完治のためには人前で場数を踏み、自信をつけることが欠かせない。その過程で、認知行動療法や森田療法などの精神療法が効果を上げることも多い。
 セミナーでは、この院長の暴走が続いた。
「なかなか結婚できない男性は、社交不安障害の可能性が高い」
「受験で緊張する学生は、試験前にぜひ薬を飲んで欲しい」
 一体、何百万人を患者にするつもりなのだろうか。集まった記者たちは唖然とし、厳しい質問を浴びせた。
「精神科医が薬を使い過ぎることに批判が高まっている。どう思うか」
「この薬の効果は、偽薬とあまり差がないように見える」(偽薬とは、小麦粉などでできた薬効のないニセ薬のこと。薬を飲むという行為だけで安心する人もいるため、偽薬でも本物の薬並みの効果が現れることがある)
 それでも院長は「薬が効きます。完治します」と繰り返すばかりだった。
 SSRIは様々な副作用が報告されている。若い人が服用すると、感情の高ぶりや自殺企図などの恐れもあることは以前ふれた。試験前に安易に飲むような薬では、決してない。
 「試験は緊張してあたり前」「周りもみんな緊張している」「失敗は成功のもと」。受験生に必要なのは、薬よりもまず、そうした当たり前の助言だろう。
 突然、病気の疑いをかけられた「結婚できない男たち」のことも忘れてはならない。彼らの気持ちを、ここで代弁させていただこう。
「大きなお世話だ!」

 

以上が2年前に読売新聞に掲載されたコラムの抜粋です。
 すべての精神科医がこうだとは思いませんが、心の病の診断は難しいのだろうと思います。しかし、私のところに相談に来る方々は精神科や心療内科に通っているものの治らない人がほとんどで、私見となりますが、薬の種類や量がどんどん増えていったり、うつ病と言われて納得していない人など、その治療方針や薬に不満があるようです。実際、この人ホントにうつなの?と思う人もいます。

 

 東洋医学で鬱(うつ)証は、身体にとって不要なものが存在する「実証」と身体にとって必要な物質が不足している「虚証」に分けます。関連する臓は、「肝」・「心」・「脾」です。相談に来られる方は虚証の方が多い様です。年齢的に若い女性は「脾」(≒胃腸)が弱く元気ややる気といった「気」の生成不足によって気分を上げられないために欝証になっている場合が多く、50歳前後の人は「心」にとって必要な物質が不足して、「心」の中に存在する「神明」(≒高次神経や意識・思考)の安定ができないために起こる心陰虚が多いと思われます。

 

 生活環境などの違いで単純に判断することはできないのですが、東洋医学に基づいて治療を進めていくと、少しずつ改善していきます。
あくまでも私見ですが実証タイプの人はお医者さんの薬が効く人が多く、虚証の人はあまり効かないのかもしれません。
精神科や心療内科に通院しているが良くならない方は東洋医学を用いて本来の自分を取り戻してみませんか。


昭和堂薬局 | 2014年10月10日

 

やすらぎ通信

 

やすらぎ通信(平成26年秋彼岸)表やすらぎ通信(平成26年秋彼岸)裏

今回、横浜日野にある善光寺さんからの依頼で、井上家のお墓があるやすらぎの郷霊園の「やすらぎ通信」にコラムを掲載したのでご紹介します。

 

◆仏教と東洋医学

 お釈迦さまは医者の王様の意で、医王と言われることがあります。
 『医王の目には百草みな薬なり』と言われる事もあり、お釈迦さまが薬草に関する知識を利用して多くの人々の病気を診ていられたあります。
 仏教では、心身一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。

 

1回 ~東洋医学的身体のバランスとは~

◇陰と陽

 東洋医学では身体のバランスを示す“ものさし”の一つに「陰」と「陽」があり、世の中に存在するすべてのものは、この「陰」と「陽」との二つの要素から成り立っていると考えています。
成長と老化-2-2 天は陽・地は陰、熱は陽・寒は陰、夏は陽・冬は陰、男は陽・女は陰といった具合です。この陰と陽の関係は相手がいなければ自分もいない、例えば「天」がなければ「地」はありません。逆に「地」がなければ「天」もありません。お互いに協調し合い、ときに相手を抑えたり、ときに抑えられたりしています。陰が強く雨ばかりでも、陽が強く晴ればかりでも豊かな実りは得られません。この様に陰陽は変化し合いながらバランスを取っているのです。
 人は、男女の交わりで生まれます。具体的にいうと陽である男性の精子と陰である女性の卵子が交わることで新しい命が生まれてきます。
 これとは逆に、人の死とは陰と陽の交わりが無くなり、陰陽が乖離してしまうことで、人は亡くなっても物質(陰)はそのままで、エネルギーである気(陽)が無くなった状態なのです。そして、身体から離れていった陽気が三途の川を渡っていくのではないでしょうか。この先は善光寺さんお任せします。
これを踏まえて考えてみると、人間の健康とは一体どんな状態なのでしょうか。

 

◇健康とは

 体の働きを「陰」と「陽」でみると、基本となる陰は物質、陽は機能と捉えることができます。機能である陽の働きは物質代謝やエネルギー代謝、成長などで、陰である物質は機能を支える物質(例えば血)です。この陰陽のバランスが保たれていると健康といえるのです。このバランスが崩れることにより人は病気となってしまいます。
 では、陰陽のバランスの崩れとはどんな状態なのでしょうか。
 なんらかの原因により、陰陽のどちらかが強くなる、もしくはどちらかが弱くなって起こります。簡単にいうと陽が強くなる、または陰が弱くなると熱症状が起こります。陽が弱くなるまたは陰が強くなると冷え症状が起こります。

 

◇自然のバランス

 この陰陽のバランスの崩れが自然界で起こっている事柄として地球温暖化が挙げられるでしょう。これは環境破壊などでオゾン層が薄くなり陽である日差しが強くなったことや陰である地表をアスファルトで覆い隠してしまった事による地球の熱症状なのです。
 しかし、自然界もこの状態を元に戻そうとする力があります。熱せられて乾いてしまった地表を潤す雨は人間が利便性だけを追求し作り上げたこの異常な状態を戻そうと過剰反応を起こし、その結果ゲリラ豪雨や集中豪雨という形で天災という災害(病気)を生んでいるのではないでしょうか。

 

◇先人の知恵

成長と老化-2-1 人間もだんだんと年をとっていくと陽であるエネルギーが不足し始めます。そこに冷房や冷たい物の摂り過ぎで陽を損傷して冷えが起こり、いろいろな病気が起こってくるのです。
 日本には、“年寄りの冷や水”という諺があるように、だんだん年を重ねていくと冷えるような行為は慎まなければいけないのです。
 日本には四季があり、四季折々の食べ物があります。その食べ物にも体を温めるもの、体を冷やすものがあります。簡単にいうと夏採れるものは体を冷やし、冬に採れるものは体を温めます。しかし、現代ではスーパーの店頭で季節を感じられなくなっていますよね。冬でも夏野菜のトマトやキュウリ、なすなどが店頭に並び、日本料理のお店でも冬のメニューに普なすを使った料理が出ることもあります。このような食事は陰陽のがランスから見ると違和感があります。
 「なすを食べる時は生姜を添える。」これは、夏になすで冷えすぎないために生姜を添えて陰陽のバランスをとっている先人の知恵。冬はもともと寒くて体が冷えているのに、更に体を冷やす食材をとってバランスを崩すこともないかと思います。その様な見方で生活習慣を振り返ると意外に体を冷やしている事に気がつきます。先人の知恵、日本の伝統食を見直して元気な生活を送れるようにしたいですね!


昭和堂薬局 | 2014年9月18日

 

運動が体にいい理由 その2

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適度な運動を続けていくと、身体は大きな変化をしていきます。
簡単にその変化を紹介すると…

 

神経系
運動によって認知機能が改善します。有酸素運動は特に高齢者の組織力や計画能力、注意力を改善します。
免疫系
定期的な運動は体を炎症から守ります。しかし、過剰な運動は病原体から体を守る免疫力を弱める恐れがあります。
骨格筋
ウエイトトレーニングとバランス運動によって骨折や転倒を予防できます。有酸素運動で筋肉の効率が上がり、日常の疲労が軽減されます。
遺伝子への影響
身体活動レベルの変化によって特定の遺伝子のスイッチがオン・オフされることがわかってきました。その影響は多くの場合、穏やかなものですが広範囲の細胞で起こります。
内分泌系
運動は体のインスリンへの反応を改善し、別のホルモンであるアディポネクチンの量を上昇させます。これらの結果、糖尿病やメタボリック症候群のリスクを減らします。

 

もう少し具体的に運動が認知機能や心血管系、糖尿病にどのような影響をもたらしているのかをみることにしましょう。

 

運動によって集中力や思考力、判断力が高められることがわかってきました。これは、60代70代の120人を対象とした調査により、脳の海馬という記憶をつかさどる領域が大きくなることが示されました。この海馬という部分は神経細胞が生まれ変わることが出来る部分で、その後、動物実験では新しい神経を成長させる脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が運動により高められることが示されました。この運動による脳の変化が認知機能に影響していたのです。

 

以前から、運動により心血管系のリスクが減ることは言われていました。これまではこの血管系には、運動により血圧が下がり、血中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)は増え、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が下がることによると考えられていましたが、運動によるこれらの効果は非常に時間がかかることがわかってきました。また、LDLは濃度の高さよりもLDLの大きさが重要であることがわかってきました。この変化は、運動によりリポたんぱくリパーゼという酵素が脂肪組織や筋組織で活発に働くようになり、LDL分子の大きさを小さくしているようです。これは、コレステロール値が同じ人でも運動量が違えばリスクも違うということです。

 

もう一つが、血糖値に対する作用です。運動が習慣になると、骨格筋に負荷が増え、エネルギー源としてブドウ糖が必要になります。長期的には運動により骨格筋の筋線維がブドウ糖をより効果的に利用できるようになり、筋力が増します。また、運動が日常的に行われるようになると、筋肉はインスリンに敏感に反応するようになり、少ないインスリンでも血糖値が抑えられるようになるのです。

 

現代人の飽食と運動不足は、肥満の増加の原因として社会問題化しています。食べるものはいくらでも手に入り、交通機関が発達したことでほとんど歩かなくても生活できる世の中です。運動は少しの工夫でできるものです。ジムに行かなくても通勤や買い物の時に乗り物ではなく歩いてみるのも良いのではないでしょうか。

 

参考図書;日経サイエンス2014年7月号


昭和堂薬局 | 2014年9月1日

 

運動が体にいい理由

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 みなさんは、運動が体にいいことは知っていると思います。
では、「どう体にいいのか」「どんな運動をするといいのか」ということまで認識している方は少ないのではないでしょうか。

 アメリカの大規模調査に基づく「米国運動ガイドライン」の最新版(2008年発表)では、早歩きなどの穏やかな運動を少なくとも1日30分間、週5日以上、あるいはジョギングなどの激しい運動を週75分間、それに加えて30分間の筋力トレーニングを少なくとも2日行うことを推奨しています。

 有酸素運動は筋肉が必要とする酸素を著しく高めるタイプの運動で、肺の活発な働きが求められます。一般的にはこのタイプの運動が健康にいいと言われています。しかし、ウェートトレーニングやバランストレーニングなど、動きの少ない運動にもそれなりの効果があります。
 
 では、どのぐらいの運動が穏やかな有酸素運動で、どのくらいからが激しい運動なのでしょうか。簡単な見分け方としては、「会話テスト」があります。

 穏やかな運動を始めると、心拍数が上がり呼吸が荒くなってきます。体を動かしながら会話や歌が歌えるうちは、まだ穏やかな運動といえます。しかし、一度に一言二言しか発せられなくなると激しい運動です。

 運動をしていくと、神経系は体の器官を活発にし、意識が鮮明になり、心拍数が上がり、呼吸が速まり、軽く汗をかき始めます。それと同時に筋肉の血管が拡張し、酸素を豊富に含む血液が筋肉に行き渡るようになります。

 筋肉細胞に入った酸素は、ミトコンドリアという器官に取り込まれ、そこで酸素を使って食べ物から消化分解されて作られるブドウ糖からエネルギーを作ります。この酸素を使ってできるエネルギーは酸素を使わなかった時の約20倍のエネルギーになります。

 また、運動を続けていくとブドウ糖の在庫がなくなり、脂肪が燃焼されるようになります。こうした体内での燃焼が起こると、乳酸や二酸化炭素などが発生し、これらが血液に入って濃度が上がってくると脳や肺、心臓でさらに生化学反応がおこり、老廃物の除去がより効果的に進むようになって体の負担を減らします。

 運動が日常的になると、大きな負荷に体が順応してスタミナが増します。1回の呼吸で多くの酸素を取り込み、1回の心臓の拍動で多くの血液を送り出すようになります。こうした変化は米国のガイドラインくらいの運動を数週間続けていくと現われ、健康増進につながります。

 次回は、もう少し詳しく運動が体にどんな作用を及ぼすのかをお話したいと思います。


昭和堂薬局 | 2014年8月22日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。