東洋医学的に見て健康とはどのような状態をいうのでしょうか? それは経絡・臓腑・器官などの働きが正常で、バランスもとれている状態や、気・血・津液(水)・精が過不足なく滞ることなく巡っている状態のことになります。 以前「四季それぞれの養生法」を書きました。春は、発生の季節です。すべてのものが芽生え、天地間の万物は生き生きと栄える季節。この時期の養生法は、日が長くなってくるので、朝早く起きてゆったりと散歩干して、春に芽生えた万物と同じように心身ともに生き生きと発散させることが大切です。今回は四季のリズムではなく、1日のリズムに注目し、東洋医学的に時間と体の関係についてお話しさせていただきます。四季の養生法については成寿45巻をご覧下さい。 中国最古の医学書《黄帝内経》には子午流注(しごりゅうちゅう)という中国伝統医学特有の理論が掲載されています。「子午」は「時刻」の意味で一日24時間を12等分し十二支に対応させています。「流注」は人体の十二臓腑(十二経脈)の気血運行の流れを意味します。つまり子午流注は一日24時間の臓腑気血の運行リズムを現したものです。
◆時刻に対応する東洋医学的養生法
子の刻(23~1時):胆経が旺盛な時間帯
胆は消化に直接関わる胆汁を生成、貯蔵、排泄しています。子の刻は胆汁の新陳代謝が最もさかんになる時間帯です。よってこの時間帯に眠りにつくと翌朝の目覚めがよく頭もスッキリです。子の刻は陰気がもっとも盛んで人体の気血陰陽の転換点ですから身体を休めて睡眠をとることは健康を保つ上で非常に大きな意味があります。
丑の刻(1~3時):肝経が旺盛な時間帯
肝は人の思考や活動を支える血液の貯蔵庫です。この時間帯に全身五臓六腑の血が肝に集中し肝の解毒と修復機能が最大限に発揮され古い血は淘汰され新鮮な血が産生されます。 この時間帯に睡眠をとり身体を休めることが肝を養うのに最適なタイミングといえます。この時間帯に活動していると、血は肝に帰ることが出来ずにずっと諸経をめぐっていることになり新鮮な血が生み出されません。
寅の刻(3時~5時):肺経が旺盛な時間帯
肺経は十二経脈気血の運行の源であり、肺は呼吸を司り肝から推し出された新鮮な血を肺気の力で全身に供給します。この時間帯に清浄で新鮮な空気中で呼吸することが肺を養うのに適しています。早起きして窓を開け、新鮮な空気をとり入れて深呼吸をするか、屋外で軽い運動するのがおススメです。
卯の刻(5時~7時):大腸経が旺盛な時間帯
「肺と大腸は表裏の関係」と言われます。肺経から大腸経に流れ込んだエネルギーが大腸を活発にさせます。栄養と水分の吸収が終わり残渣を便として排泄します。この時間帯にしっかり排便すると大腸の排毒作用によって肺や皮膚を清浄に保つことができます。
辰の刻(7時~9時):胃経が旺盛な時間帯
胃経に気血が集中し食物の消化が最も盛んになるため、この時間帯に食事すると充分に栄養を吸収することができます。逆に空腹でいると胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすいとも言われています。 巳の刻(9時~11時):脾経が旺盛な時間帯 脾は消化、吸収、排泄すべてをコントロールし気血を生み出す源であり、清気を上げ濁気を下げ全身に気血を巡らせます。
午の刻(11時~13時):心経が旺盛な時間帯
心はそのポンプ力で血を全身に送り精神を安定させる働きをもっています。12時は陽の頂点であり心臓は陽臓と呼ばれています。心臓には全身の血液陽気が集まるところですから陰寒の産物である腫瘍はできないのです。
未の刻(13時~15時):小腸経が旺盛な時間帯
小腸は胃から送られてきた消化物をさらに消化し水分栄養の吸収を行い必要な栄養素は脾へ、余剰な水分は膀胱へ集め、食物の残渣は大腸へ送り出します。
申の刻(15時~17時)膀胱経が旺盛な時間帯
膀胱は尿を貯留し排泄する器官で、腎の気化作用によって尿の生成、貯留、排泄が行われています。また排尿によって身体にこもった熱を体外に排出します。
酉の刻(17時~19時):腎経が旺盛な時間帯
「腎は水を司り五臓六腑すべての精を蔵す」と言われ父母から受け継いだ先天の精と食物から得た後天の精を蓄えています。
戌の刻(19時~21時):心包経(しんぽうけい)が旺盛な時間帯
心包は心臓の外周にあり気血を通しながら外邪の進入を防ぎ常に心臓が最適な状態であるよう守っています。
亥の刻(21~23時):三焦経(さんしょうけい)が旺盛な時間帯
三焦(上焦・中焦・下焦)は六腑の中で最大の腑で気血を全身へ隈なく運んでいます。
現代の生活習慣では中々この理論のような生活リズムにすることはできないかもしれませんが、少しでも近づけるように努め健康的な生活リズムにしていきましょう。
現代は24時間社会となり繁華街では夜間も明かりは消えることがない程です。それに伴い、警察・消防や医療福祉関連に勤務する方々や、工場、コンビニなどの交代制勤務者が、眠らない街で働いています。日本では交代制勤務の労働者は、全体の20%位と言われています。 夜間に勤務することは、人間が本来持っている「体内時計」・「概日(がいじつ)リズム」という生命機能に影響を与えていると考えられます。また交代制勤務による夜間労働だけでなく、パイロットや客室乗務員などの時差による概日リズムへの影響もあり、近年、そのことが健康にどのように影響するのか疫学的な研究が盛んになっています。
交代制勤務による健康影響
*睡眠障害 *胃腸障害 *肥満・脂質異常症・高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム *月経の乱れ・月経痛・不妊 *流産・早産・低体重児出産 *循環器疾患(心筋梗塞・脳卒中) *悪性腫瘍(乳がん・前立腺がん)
横浜駅にある当店でも交代制勤務や時差勤務による体調不良の相談が多くございます。仕事に際して仕方ないことは当然あると思いますが、子午流注(しごりゅうちゅう)の理論も意識して健康に気を付けていただけるといいのではないでしょうか。