『昭和堂薬局』

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空腹を満たすだけが食事の役割ではありません

 食事は、私たち人間の健康を維持していく重要な要素です。

 私たち人間は、摂取した食事を消化・吸収し代謝を受けます。炭水化物、脂質、タンパク質の一部は分解されてエネルギーとして利用されます。またタンパク質、脂質、ミネラルは、臓器、細胞、細胞小器官などの構成材料として体の組織を形成します。さらに、ミネラルやビタミンは代謝を助ける働きもあります。

 

 今回は、その「栄養素」の中でタンパク質(アミノ酸)に絞ってお話します。
人体のタンパク質を構成するアミノ酸は20種類あります。そのうち9種類が人体では合成できないため必須アミノ酸と呼ばれ、食事から摂取する必要があります。また、アミノ酸は、身体のエネルギーとなる他に、様々な組織において多様な生理機能があることが明らかになってきました。

 

 アミノ酸の基本的な性質として、一次機能(栄養機能)、二次機能(感覚機能)、三次機能(生体調節機能)があります。一次機能として、すべての必須アミノ酸は必要量を摂取する必要があります。必須アミノ酸のうち一部が足りない場合は、制限アミノ酸となり、十分なタンパク質合成ができません。二次機能として、アミノ酸は甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の5味のうちいくつかの呈味を持っています。三次機能として、アミノ酸の生体調節機能に関しては、ロイシンやグルタミンなどによる筋タンパク質合成促進、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)による運動機能向上作用、セリンによる腰や膝の痛みの改善、シスチン、テアニンによる免疫力の向上など、加齢による身体機能低下を防止し、健康寿命に貢献すると考えられています。(今回は詳しく述べませんが、これらのことは科学的に解ってきたことなのです。)

 

 以上のようなアミノ酸の機能を踏まえて、バランスの良い食生活をしていく必要があります。アミノ酸バランスが優れた食品として、肉類、魚、卵、大豆などがあげられます。タンパク質については、これらをうまく取れ入れて健康な体を手に入れて、いつまでも元気に過ごしたいですね。


昭和堂薬局 | 2022年7月6日

 

「やすらぎ通信 令和4年 お盆」のコラムを執筆しました。

 新型コロナウイルス感染症が起こり始めて、2年半も経ってしまいました。現在もまだ収束には至っておらず、このままコロナウイルスと共生していかなくてはいけないのかもしれません。

 

 ウイルスや細菌などについてはさまざまの研究がなされていますが、今回は細菌について述べたいと思います。細菌は地球上の生物の1/2~1/3を占めているとされています。それは我々人間の体も例外ではなく、外部環境と接する皮膚や粘膜面には、膨大な数の共生細菌群(常在細菌叢)が定着しています。(下の表に体の各部位のおおよその菌の桁数をまとめてあります)特に大腸は細菌の生育に最適な環境であり、地球上のあらゆる環境中でもとびぬけた高密度で細菌群が棲息(せいそく)するとされています。その数は40兆個以上とされ、宿主の人間の細胞数よりも多いのです。また、細菌の数だけでなく、その多様性が人の健康にどのように影響しているのか。これまで多くの研究報告では、様々な菌の種類がバランスよく存在することがメリットをもたらし、病気になるときにはその多様性が低下することが報告されています。例えば、特定の菌が腸内で増殖すると相対的に菌数が減少します。これは病気の人に多く見られる状態です。一方でさまざまな種類の菌がいると多くのことに対応できる状況になるのです。


表 体の各部位の菌数 

部位 細菌のおおよその桁数
結腸(大腸) 10の14乗
歯垢 10の12乗
回腸(下部小腸) 10の11乗
唾液 10の11乗
皮膚 10の11乗
10の7乗
十二指腸(上部小腸) 10の7乗


 また、環境が改善して感染症が減少してもアレルギー疾患や自己免疫疾患増加しているのは、環境中の細菌が減少したことに起因されるという「衛生仮説」が存在し、そのことを科学的に証明する研究が盛んにおこなわれています。この衛生的な環境が現代病を増加させるとも言われる中、我々はこのコロナ禍において手指の消毒やうがいを行い、更には自分達の生活圏を消毒し身の周りの菌を減らしてきました。このことが後になって私たちの体にどんな影響を及ぼすのかは、計り知れないところです。(コロナ禍の影響は、この細菌のことのみではないのですが…)

 

人の疾患と腸内細菌叢
 基本的に健康であれば腸内細菌叢の頑健性は保たれています。一方で腸内細菌叢のバランスが乱れる要因はさまざまなものが知られています。

 

・偏った食事
 長期的な食習慣がその人の腸内細菌叢のタイプを決定しています。また、短期的にも極端に食事が変化すると、腸内細菌叢は変化することがわかっています。
・ストレス
 脳と腸は迷走神経でつながっており、脳がストレスを感知すると腸の蠕動運動が影響を受け、その結果腸内環境が変動し、細菌叢が変化すると言われています。また、ストレスによって副腎資質ホルモン(ステロイドホルモン)が消化管に分泌されて細菌叢を変化させているとも言われています。
・その他
 その他には、生活環境(田舎で暮らしているか都会で暮らしているか、これは細菌が多い環境か少ない環境がということです。食事と一緒に細菌が入ってきます。)、抗生物質などの薬の摂取、加齢などが知られています。

 

腸内細菌叢がもたらす疾患
 腸管は粘膜免疫の中心です。腸内細菌叢がその人の粘膜免疫に影響していることは多くの研究で分かってきています。その中で衝撃的であった研究は、腸内細菌叢が肥満にも関係する報告でした。それは太った人・痩せた人由来の細菌叢を無菌マウスにそれぞれ移植し、その後同じ食餌条件下で太った人由来の細菌叢を移植したマウスの方が太ることを示したものでした。また、この研究では太る原因は、太ったマウスは腸内細菌叢による食餌成分の代謝により栄養素がより多く供給されることで太ってしまうことが報告されています。
 この研究をきっかけに、腸内細菌叢と消化管疾患や代謝疾患、がん、免疫疾患、精神疾患、循環器疾患など多くの病気との関連が多数報告されています。

 

腸内細菌叢をどのように制御するのか
 健康を維持していく為に、いかにして腸内細菌叢をコントロールすればいいのか。基礎研究においての代表的な制御方法はプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)やプレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維)の摂取と便移植法です。(便移植法はまだ通常の治療法にはなっていません。)
 数年前から多くの食品メーカーからいろいろなヨーグルトが発売され、ブームとなりましたが、これも腸内細菌叢が、病気に大きく関係していると分かった結果です。私たち日本人が腸内細菌叢を維持していくには、日本の伝統的な発酵食品を摂ることが一番いいのではないか、と私は考えています。長い時間をかけて伝統的な酵母菌や麹菌が、我々の腸内細菌叢を維持し健康を支えてきたのですから。だからヨーグルトではないのかなぁと…、と思ったりもします。

 

日本人には日本人特有な腸内細菌叢のタイプがあるのです。
 多くの日本人の腸内細菌を調べた研究では、いくつかのタイプに分類できました。
その中で病気になりやすいタイプの腸内細菌叢は、高たんぱく・高脂肪食(西洋食)を好んで食べている習慣がある人たちです。一般的に良い細菌叢の食事は、低たんぱく・低脂肪・高食物繊維の食生活でした。
 人間の3大栄養素であるタンパク質・脂肪・炭水化物は食生活にはある程度必要なのですが、偏ってしまうのはよくないことです。特に日本人は伝統的に食物繊維が多い食生活をしてきました。また、日本食は油の量が少ないヘルシーな食事です。いつもの食生活を見直し、その中に日本の伝統的な発酵食品をプラスする工夫をされたら宜しいのではないでしょうか。
私が子供の頃には、母親が自宅で白菜漬けやぬか漬けを作っていました。この夏、ひと手間かけてトライしてみてはいかがですか。添加物や菌を殺して出荷しているような工場で作られた漬物とは全然違うはずですよ。

 

主な発酵食品

豆類   : 納豆 醤油 味噌 豆板醤 豆腐ようなど

魚介類  : 鰹節 塩辛 くさや 魚醤 アンチョビ 酒盗など

肉類   : 生ハム サラミなど

乳製品  : チーズ ヨーグルト サワークリームなど

野菜・果物: ぬか漬け キムチ ピクルス ザーサイ メンマ かんずりなど

穀物   : 甘酒 米酢 黒酢 みりんなど

 

 日本で手に入る発酵食品です。この中から自分に合った発酵食品をいくつかとっていただけるといいと思います。


昭和堂薬局 | 2022年6月29日

 

夏の養生法

 日本は島国でもあるため、高温多湿でとても過ごしにくい国です。また近年は地球温暖化でとても蒸し暑い日が続きます。この高温多湿の日本の夏をいかに養生して健康に過ごすかが重要になります。

 

 夏は陽の気が、もっとも強くなる季節です。「木・火・土・金・水」の五行のうち、「火」にあたるのが夏です。熱く、明るく、上へ上へと向かって広がり、燃えさかる「火」のイメージが夏です。人体の中で、「火」を司っているのが、「心」です。東洋医薬学には「心は血脈を司り、神を蔵し、神志を主る」という働きがあります。「心」の働きは血液循環をコントロールしています。同時に、「神」の意味は人間の精神や意識、思考活動、いわば「こころ」をさします。私たちの精神活動のすべては「心」がコントロールしているのです。
 夏の暑さが厳しくなり、陽の気が最大になると、この「心」の働きも亢進し、オーバーヒートしやすくなります。
 私たちの体は、暑くなると汗を出して、体内の熱を逃がし、上手に体温を調節するようになっています。しかし、汗は同時に、血液中の水分とミネラル分も、一緒に排出してしまうため、血液の濃度は高くなり、ドロドロと流れにくい状態になります。汗をかけばかくほど体温は下がって涼しく感じられますが、一方で心臓は、流れにくい血液を全身に運ぶために、フル活動しているわけです。
 「心」がオーバーヒートすると、胸が苦しくなり、脈が早く打つ頻脈になったり、不規則になる不整脈を起こしやすくなります。血液循環も悪くなり、動悸、息切れ、不眠、動脈硬化、ひいては心筋梗塞などの心疾患につながりかねません。

 

夏の「暑邪」と「湿邪」
 東洋医薬学では夏の暑さも病因のひとつと考え、これを「暑(熱)邪」と呼んでいます。「暑(熱)邪」に侵されると、体がほてる、のぼせる、息切れがする、寝つけないなどの熱症状が出現します。汗が多くなって必要な体液やエネルギー(気)も出てしまうため、体力が奪われて非常に消耗し、熱中症などになりやすくなってしまいます。
 日本の夏のもう一つの特徴が高い湿度です。この高い湿度が、さらに私たちの体に悪影響をもたらします。これを「湿邪」といいます。
 夏季は暑さのため、冷たい飲み物や食べ物を摂ることが多くなりますが、これも胃腸にダメージを与える原因です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」といわれ、冷たい飲み物は、のど越しはいいものの、胃腸内の湿度を高めて冷やすために働きが弱まり、消化不良、食欲不振、下痢、だるさなどの胃腸障害を起こすことになります。
 湿度の影響は全身にもおよびます。水分の摂り過ぎで余分な水分が体内に滞るために、筋肉や関節が冷えて、むくみやだるさ、痛みを招くのです。とくに汗をかいたあとに冷房で冷えたり、長い時間、手足を冷気にさらしたりすると、とたんに四肢がだるく感じられます。湿気が筋肉や関節にとどまると、筋肉や関節が縮んでしまいこむら返りや関節痛を起こすこともあります。梅雨時などに腰痛を起こしたり、首を寝違えたりする人が多くなるのも「湿邪」の影響です。
 東洋医学の考え方で、夏を健康に過ごすための食べ物は、「体を冷やす」食べ物を取ることよりも、夏は熱がこもりやすいので、「体内の熱を冷ます」食べ物を取りましょうと言うことになります。体内の熱を冷ます食べ物の代表が、「苦味」の食材です。それと苦味には、物を下におろす作用(消化作用)があります。まさに夏の一杯のビールは、その代表と言えます。その他に、苦瓜(ゴーヤ)を中心に、タケノコ、フキ等の山菜類、ゴボウ、魚の内臓、緑茶、紅茶、コーヒー、抹茶、この季節、冷たい抹茶も美味しいです。果物では、グレープフルーツなどがあります。
 ふきのとうやうどのように、まだ肌寒い春先にとれる苦味は、体を温める温性の食材が多いのに対し、夏にとれる苦味の野菜は、寒涼性のものがほとんどです。
 これら苦味のある食物は、強心、消炎、止血、解熱、鎮痛作用があり、体内の熱を冷まして、夏にオーパーヒートしやすい「心」の高ぶりを鎮める効用があります。逆に働きすぎで疲弊した「心」を補い、正常に戻す作用もあるとされます。
 夏の炎暑に苦味のホップが入ったビールが喜ばれ、鹿児島や宮崎、沖縄などの南の地域でゴーヤー料理が郷土食として食べられるのも、暑気を避ける生活の知恵といえるのです。

 

胃腸を冷やす苦味の食材
 体内の熱を冷ます夏にふさわしい苦味の食材ですが、摂りすぎると胃腸を冷やす食害があります。冷え性の人や胃腸の弱い人も摂りすぎには注意が必要です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」ため、冷やしすぎは機能の低下を招きます。
 苦味による胃腸の冷えを未然に防ぐため、苦味には温める作用がある辛味の食材を組み合わせるのです。
 しょうが、唐辛子、からし、わさび、ねぎ、しそ。これらスパイスや薬味といわれる食材は、すべて辛味に属します。スパイスの利いたカレーを食べると、顔から汗が出てくるように、辛味成分は体を温めて、体内にこもっている熱気や余分な水分を発散して体温を調節する効果があります。同時に、大腸や呼吸器を活性化させる働きもあるので酷暑のインドで、カレーが常食されるのも、暑さから体を守るための食習慣にほかなりません。たっぷり含まれている辛味が胃腸を温め、食欲を増進し、発汗を促すため、胃腸が疲れやすい夏場にはぴったりです。


昭和堂薬局 | 2022年6月22日

 

不妊治療の保険適応が実施されて2ヶ月が経った

 不妊治療の保険適応が4月から実施され、2か月が経ちました。当店に漢方相談に来ている方達も、それまでの助成金制度で不妊治療を実施していた方達も保険に移行が始まりました。そこで問題になってきているのが、現在行っている治療が保険適応範囲内なのかどうかという問題です。保険適応は範囲が決められています。通院回数や保険適応ができる薬などです。基本的に保険診療の中に自費診療が入ってしまうような混合診療はできませんので、そのようなケースは自費診療になります。一般に効果が認められたもの(スタンダードな治療法)が保険適応になっており、まだ新しい治療法でスタンダードになっていない治療法は保険適応になっていません。しかし、先進医療として子宮内膜検査や子宮内細菌叢の検査などは、保険適応の患者さんでも自費で受けることが可能になっています。

 

 当店のお客様は、スタンダードな治療で保険診療を選択して体外受精した方やスタンダードな治療ではなく自費診療をした方など様々です。(不満を言っている方もいらっしゃいます。)スタンダードな治療でやや不満足なケースでは、漢方や鍼灸で補えるといいのですけど…。

 

 まだ始まったばかりですから、今後その溝が埋まり、多くのお子さんを望んでいるご夫婦が喜んで治療を受けることができるようになるといいなぁと思っています。

 

 しかし、一昔前と比べると格段に進歩したと思いますし、厚生労働省の少子化に対する取り組みは評価に値することだと思います。不妊治療や子育てと仕事の両立支援事業など本気になってきている気がします。

 

 まだまだ満足いく段階には来ていないと思っている方が多いと思いますが、これから、さらに良い方向に向かっていくことを願っています。


昭和堂薬局 | 2022年6月9日

 

コロナによるライフスタイルの変化で増えた「瘀血」

 今、ライフスタイルの変化やストレス過多、自律神経の乱れなどの影響により、気血のめぐりが悪くなり起こる「瘀血」という病態が増えています。そこで、当店でも登場頻度が高くなってきています「冠心逐瘀丹」の

 

 ご紹介とともに、「瘀血」について解説します。
 「瘀血」とは、人体の血液の粘稠性が増したり、巡りが遅緩、停滞したり、固まりとなるなどの状態です。病気の過程に生じた病理産物でありますが、ほかの病気を引き起こすたり不快な症状の原因でもあります。
 瘀血の原因としては気虚(エネルギー不足)、気滞(気の滞り)、血寒(冷え)、血熱(熱)、 血虚(血の不足)、外傷などがあるが、現代人では、瘀血の発症原因や機序は昔より変化してきました。現代人は生活の変化による食生活も乱れなどによる気虚(胃腸虚弱でも起こります)から、生活環境の改善より弊害で冷房などによる冷え、七情(ストレス)の損傷や生活リズムの乱れにより、「瘀血」が生じて疼痛、動悸、めまい、胸 悶、腫瘍などの症状がよく見られるようになっています。

 

 また、コロナ禍での特徴として、会社や学校に行かないことによる運動不足(通勤・通学は意外に体を動かしているのです)、リモートでのデスクワークで体が固まる(オフィスに行っていたときにはトイレに行くにも歩いて体を動かしています)などで、どんどん「瘀血」が増えています。

 

現代人の瘀血の主な原因
ストレス、各種のプレッシャー、慢性的な睡眠不足
食生活の乱れ、食べ過ぎ、酒の飲み過ぎ、喫煙
運動不足(血行不良、筋肉の虚弱、冷え性)
加齢老化(血液の動力不足、動脈硬化、微小循環 障害)

 

瘀血によく見られる症状
顔色暗、めまい、動悸、胸悶、手足のし びれ、舌暗瘀斑
疼痛、肩こり、骨関節の痛み、生理痛
脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、 腫塊腫瘍
脳出血、生理不順で塊がある、皮膚下 の出血

 

 冠心逐瘀丹の主成分である丹参は、優れた活血祛瘀(かっけつきょお)の生薬で、中国などでは注射薬としても使われたりしてます。丹参の他には、紅花、川芎、芍薬も活血します。また、川芎、香附子、木香は理気(気を巡らせる)効果があり、丹参、川芎、芍薬には養血の効果も併せ持っています。
 日本では、「桂枝茯苓丸」が活血薬では有名ですが、この「冠心逐瘀丹」が日本に入ってくることにより幅広く使えるようになったと思います。


昭和堂薬局 | 2022年6月1日

 

ドラッグストアやお医者さんで処方されて飲んでいる方が多い半夏厚朴湯

 我々漢方薬局でも使うことはよくあります。しかし、漢方薬の中でも、やや対症療法的な要素があるのかなぁと思う処方です。

 

 では、どんな時に使うのでしょうか。

 梅核気(ばいかくき)がこの処方の目標です。梅核気とは、咽喉中に何かが詰まったようで、排出もできず、呑むこともできない状態です。(俗に言う「えへん虫」ですね)
どんなことが原因で、梅核気が起こるのでしょう。

 

 処方解説によると、「七情が不暢で肝気が鬱結して疏泄が失調し、気機が停滞し、肺気、胃気が宣降できなくなり、津液の布散が障害されて痰を形成し、痰と滞気が結びついて咽喉で結するため、咽に梗塞感があり嚥下しても喀出してもとれない梅核気が生じる。肺気が宣粛できないので胸苦しい、咳嗽、喘鳴などが、胃気が和降しないので悪心、嘔吐、腹満がみられ、七情不暢による憂鬱、抑鬱などを伴う。」
難しい文章ですが、要はストレスなどで五臓の「肝」がうまく働くなり、気や水を巡らすことが出来ずに、喉のところで気がうっ滞してそこに痰が形成されて起こります。

 半夏厚朴湯は、このうっ滞した気を巡らせ、胃の気を上から下に正常な気の運行にして、痰を取りはぶく方剤です。起こったことを元の状態に戻す方剤なのです。

 

 ここまでお話しすると、ピンとくる方も多いと思います。最初にお話しした、ストレスなどによる「肝」をうまく働かせる方剤が含まれていないのです。(そのことが対症療法的と言ったのです。)その原因の方剤を加えたもので有名な物が、柴朴湯という方剤です。

 

 また、胃腸の不調が関係することがあります。この場合、「肝」系の薬ではよくならないケースです。梅核気以外の症状を考慮して方剤を変えたり、加えたりするといいと思います。

 

 半夏厚朴湯で調子はいいけどやめられない方や半夏厚朴湯では効果がなかった方は、原因を改善するような方剤と組み合わせてみては、いかがでしょうか。


昭和堂薬局 | 2022年5月25日

 

腎臓病が増えている

 腎臓病は、世界で約8億5千万人の人が罹患しており、2040年には死因の第5位に上がると推定されているそうです。腎不全のために透析や移植などを受けている患者は、世界で約260万人いるそうです。そして、透析医療には多大な医療資源などが必要で、持続可能な医療体制の構築が必要なようです。

 

 日本を含む世界的に高齢化社会が叫ばれている今、増える疾患の変わってくることは当然考えられることだと思います。

 

 腎臓病の根本原因はさまざまで、糖尿病性腎臓病、腎炎、高血圧性腎硬化症などがあります。慢性腎臓病の進行は、尿細管とその周囲にある間質領域の障害です。どこの臓器での同様ですが、炎症と線維化が病気を進行させます。

 

 今のところ、腎機能を回復するような薬はありません。これからもしばらくは、進行を抑制する薬の開発になるようです。現在は、最終的には人工透析です。

 

 東洋医学においても、透析に移行したような末期の慢性腎臓病を治すのは難しいですよね。


 東洋医学では、「腎」は成長と発育、生殖を主る臓器です。ですから、「腎」は加齢で衰えていく臓腑なのです。高齢化社会だから腎臓病が増えてるのですね。

 

 このことを踏まえて、初期の段階から補腎や活血薬などの漢方薬を服用し、進行を少しでも抑えるようにすることが大切だと思います。

 

 また、日ごろから生活習慣や即生活に気を付け養生することや養生の一環で補剤の漢方薬を服用していくのも健康を維持していく秘訣かもしれませんね。


昭和堂薬局 | 2022年5月17日

 

鼻茸(はなたけ)とは?

 鼻茸とは、鼻の奥にある副鼻腔の粘膜にできる膨らみのことです。粘膜にキノコが生えるように見えることから「鼻ポリープ」とも呼ばれています。

 

 鼻茸は、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)やぜんそく(気管支喘息)、アレルギー性鼻炎などと併発します。粘膜が炎症を起こし、そこに腫瘤ができ、進行してどんどん大きくなることで鼻茸になっていきます。

 

 鼻茸が小さいサイズであれば自覚症状が出てこないでしょうが、大きくなると鼻の穴の空気の通り道をふさいでしまい、鼻呼吸がしにくくなります。

 

 呼吸がしにくくなれば、気になって集中力が欠けやすくなり、日常生活に影響が出てくるようであれば、病院で手術をしてとることもできますが再発しやすいです。再発がみられる場合は再手術になることもあります。

 

 鼻茸の治療では、鼻茸の多くはアレルギーが原因で引き起こされるため、治療にはアレルギーを抑えるためのステロイド剤の点鼻薬や内服薬が用いられます。また、副鼻腔炎などの炎症による病気が原因の場合には、それらを改善するための抗生物質や炎症を鎮める作用のある薬が使用されます。

 

 しかし、これらの薬物療法はうまくいかないことも多く、重症な場合には薬のみで治すことは困難です。このため。手術などで鼻茸を切除する治療が必要になることも少なくありません。

 

 そこで、漢方薬の出番です。

 鼻という場所は、「肺」に属しています。合併しているおおもとの病気(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など)に対する漢方薬は、東洋医学の尺度でそれがどうして起こってしまったのかを検討して処方を決定していくのですが、鼻茸は、元も病気によって鼻粘膜の炎症が「鼻ポリープ」になっています。鼻茸だけを東洋医学で表現すると、血や湿の滞りでできたものです。血の滞りでできたものを「瘀血」と呼び、湿の滞りで起きたものを「痰湿」と呼びます。

 

 漢方の対応としては、元の病気に対する処方と「瘀血」を取りはぶく活血薬の併用です。但し、一般的な活血薬では中々対応できない場合は、破血剤(水蛭など)が必要になります。


昭和堂薬局 | 2022年4月14日

 

不妊の漢方にはコツがある!

 いよいよ、不妊症の保険適用がスタートしています。調剤薬局にはすでに不妊の薬の処方箋が来ているようです。

 

 不妊症の方たちの多くは、不妊症のクリニックで治療を受け、同時に漢方薬局や鍼灸院に行くケースがあります。

 

 中医学では、人によって違いはありますが、生殖を主る「腎」を補います。主に腎陽と腎精を補います。まれに基礎体温が全体に高いケースでは、腎陰も補っていきます。しかし、この際一般的によく知られている「八味地黄丸(腎陽を補う)」や「枸菊地黄丸(腎陰を補う)」では力不足です。

 

 また、仕事(ちょうど働き盛りの年齢)や不妊症から精神的な抑鬱傾向になると、「肝」という臓がうまく働いてくれなくなるので、排卵や月経がスムーズにできなくなってしまいます。これが続いてしまうと「瘀血」という血の滞りが起こってしまい、妊娠しても流産の原因になったりします。

 

 そのほか、女性は毎月月経で気血を経血として出すので、気血の不足を起こしやすく、体質的に脾気虚(胃腸虚弱)だったりする場合は、脾胃を補って気血を十分に作れるようにしていきます。

 

 少し大まかではありますが、こんな事をして妊娠できる体づくりをいていきます。(妊娠率を上げる)
不妊の漢方は、「この処方とこの処方を飲むと妊娠します。」というものではないと思いますし、いろいろな処方を沢山飲めばいいものでもないと思っています。問診して必要最小限から初めて、必要があったら処方を増やす方法を基本に考えています。(漢方薬局によってはたくさんの処方を提案するところもあるようですが…)

 

 また、経験的に足していく順番もあるように感じています。中医学は理論があり、それに従って進めていくと、そこそこうまくいくのですが、その先は経験がものをいう「匙加減」があります。
折角、漢方薬を飲むのですから、自分でネットで調べたり友達がうまくいった物とかではなく、漢方薬局で相談して服用していただいた方がいいのかなあと思います。


昭和堂薬局 | 2022年4月9日

 

いよいよ、4月から不妊治療の保険適応がスタートします

 いよいよ不妊治療の保険適応がスタートします。
 これを機会に不妊治療をはじめる方が多いのではないでしょうか。実際当店店頭でも、不妊治療の保険適応がスタートすることの話題をよく聞くようになってきています。
この機会に不妊治療をはじめる方は、高度不妊治療をすれば妊娠できると思っている方が多いのではないでしょうか。

 

 現在、日本では約15人に1人が体外受精で生まれています。しかし、1回あたりでお子さんを授かるのは20%程度です。そして、初回の体外受精でうまくいかなかったケースは、その後5年間での出生率は49%です。そう考えると高度不妊治療で子供を授かる確率は約60%ということになります。ある報告では、不妊治療のコンプライアンスが十分得られた場合は、妊娠率が15%上昇することが期待できるということです。不安がなく治療を受けることができると妊娠率が上がる可能性があるということになります。

 

 受精・着床・妊娠・出産のメカニズムは、まだわからないことが多くあります。しかし、出生率を上げるためにはメンタル面をケアすることが大切だということです。

 

 中医学においては、生殖を主る臓腑は「腎」です。不妊の中医学的対応は、補腎を中心に考えますが、ストレスによって「肝鬱」という状態にも対応していきます。中医学では、身体のバランスが崩れると妊娠しにくくなると考えるのです。不妊治療中の方が漢方薬を求める方が多いのは、この様な中医学の考え方の基づく、心身のバランスをとることの有用性を感じるからなのでしょうね。

 

 不妊治療が保険適応になることで、高度不妊治療に踏み切った方達は、期待と不安でいっぱいでしょう。これは夫婦で臨むことです。奥さんだけに多くの負担がかかりますが、ご主人もサポートしていかないとうまくいかないことは知っておいていただきたいです。


昭和堂薬局 | 2022年3月29日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。