『昭和堂薬局』

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妊娠に必要な「心」の安定

 身体に対する不安は、誰にでもあることです。特に「妊娠したい」「子供が欲しい」と思っていても中々できないと不安になるものです。しかし、その不安が思いとは逆に妊娠しにくい状況をつくってしまっている場合もあります。その不安を取り除くことでよい結果に繋がっていくのです。

 

 女性の性ホルモンの流れは、脳下垂体―視床下部―卵巣と流れていきます。この軸の中で促進したり、抑制したりしながら、ひと月の周期を繰り返していきます。ストレスなどで、この流れがうまくいかなくなると生理不順や無月経、不妊症などになってしまいます。中医学的にも、西洋医学と同じような心―腎―子宮という生殖軸があり、この流れがうまくいかないと、安定した月経周期にならなくなります。西洋医学も中医学も表現は違いますが同じことなのです。

 

 中医学でいう五臓の「心」は、心=神で情志活動を担っています。(簡単に表現するとメンタルです。)また、子宮と心は繋がっていると考えます。心は全身の血脈を主っていますので、心血と心気が下降して月経を形成しています。そして、流れてきた気血が旺盛であれば、妊娠・胎育に有利になるのです。

 

 「心は神明(メンタル)を主る」ので、心配したり考え込んだり、心(こころ)に引っかかることがあったりすると心気が下降できなくなり、無月経や月経不順、不妊症などが起こります。

 

 中医学では、生殖を主る臓腑は「腎」です。腎の力がみなぎり、天癸という陰精が一定以上に満ちてくると生理が起こり、子供が作れるようになるのです。しかし、「腎」と「心」は対極にありバランスをとっている関係にあるため、どちらかが強くなったり、弱くなったりするとバランスが崩れてしまうのです。

 

 現代社会は不安がたくさんあります。子供をつくる(妊娠する)ということに対する不安も当然あると思います。今まで多くの人の妊活をお手伝いしてきましたが、不安がない人はいないと思います。みんな不安を抱えながら漢方相談に来ているのです。

 

 この様な人たちが漢方薬を飲むことで不安が薄れてくると結果に繋がっていくのです。

 

 中国の有名な中医師の先生方も、中医学の安神法を婦人科疾患の治療に使っているようです。私も妊活の過去の処方を振り返ると安心薬が含まれている処方を使ったりしています。

 

 女性の体は非常にデリケートです。心の少しの不安が身体に影響しているのですよ。

 

 うまくリラックスできるといいですね。


昭和堂薬局 | 2021年11月13日

 

ご存じですか?「尿もれ」のこと

 40代女性の尿もれ経験率は3人に1人以上

 

 尿もれは年を取ったから経験するというものではなく、40代の女性では3人に1人以上が尿もれを経験しているという結果が出ています。

 

 女性の尿もれは主に2つのタイプに分けられ、咳やくしゃみ、大笑いした時など、お腹に力が入った際に起きるものを「腹圧性尿失禁」、急な尿意を感じてトイレに駆け込むようなものを「切迫性尿失禁」と呼びます。

 

 尿もれに悩む女性のおよそ8割が「腹圧性尿失禁」およそ5割が「切迫性尿失禁」とされ、それらを併発する「混合性尿失禁」も3割程度みられます。
原因も異なり、腹圧性尿失禁では骨盤底筋という筋肉のゆるみが、切迫性尿失禁では「脳と膀胱」の連携がうまくいかないことが原因で起こります。

 

 ~東洋医学で診る尿漏れとは~

 

 腎という臓は、開閉することで、膀胱に尿を溜めたり出したりして、水分の代謝や貯留・排泄を行っています。またその一方で腎は「老化を主る」臓でもあり、腎の衰えから開閉が不完全になってしまうために「尿漏れ」が発生してきます。
 裏を返せば、この腎の開閉がしっかり行われていれば「尿漏れ」を防ぐ、もしくは改善することができ、また腎をサポートすることで、尿漏れに限らず、老化を防ぎ、若々しさを取り戻すことができます。

 

 よく用いられる生薬

 

鹿茸(ろくじょう)…補腎陽・益精血・強筋骨/腎を温める力が強く、精や血が不足し、筋肉に力がない、骨が弱いなどを改善するために用いる

 

兎絲子(としし)…補陽・固精縮尿・明目止瀉/腎を温め、膀胱での尿の濃縮を高める、白内障などに伴う目のかすみを防ぐ、温めて下痢を止めるなどの効果がある

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2021年11月4日

 

子宮内細菌叢(子宮内フローラ)

 我々人間のさまざまな部位で常在細菌が注目されています。われわれ人間は細菌と共に生きています。常在細菌に助けられながら生活していると言ってもいいくらいです。
 以前は、子宮は無菌の状態だと考えられていました。しかし、1980年代に子宮内において細菌の存在を示唆する報告があり、その後、子宮内細菌叢の存在を裏付ける報告がなされました。
 近年は、細菌の解析技術の進歩により、子宮内常在菌の存在が明らかになりました。

 

 子宮内細菌叢の関する報告は多くありませんが、ラクトバチルス属が優位な状態が着床・妊娠維持に有益であることが言われています。
従来から皮膚・腸・口腔内などの細菌叢はよく知られています。また、その細菌叢の異常が糖尿病などの生活習慣病、アレルギーなどの疾患との関連が明らかにされています。膣内においてもその存在がよく知られており、その乱れが細菌性膣炎などお引き起こすとされています。

 

 子宮内細菌叢に関してはほとんどわかっていないのが現状ですが、構造的に腸と同じように、子宮内膜をムチン層が覆っているなどの共通点もあり、子宮内細菌がないかをしていることは明らかではないかと思われます。しかし、子宮内細菌叢がどのような状態が妊娠成立・維持に適しているのかはわかっていません。

 

 疫学調査では、腸内細菌叢が悪い状態になると妊娠中毒症や流産の原因になるという報告があります。また、同一人物の腸内細菌叢と膣内細菌叢は似ていると言われています。構造的に膣と子宮内細菌叢は似ていそうです。妊活中の方は腸内細菌叢をよくするようなことをしておくといいのかのしれませんね。


昭和堂薬局 | 2021年10月12日

 

なぜ、新型コロナウイルス感染症の重症化が男性に多いのか?

 新型コロナウイルス感染症は、同世代の男女の比較で男性の方が重症化および死亡のリスクが1.5~2倍高いとされています。このことは、日本だけではなくデータのある国すべてで確認されているそうです。また、新型コロナウイルスワクチンの副反応(免疫反応)も女性が強く出ると言われています。

 

何故なんでしょう⁈

 

 インフルエンザのワクチン接種に対して女性の方が、抗体化が高く成りなります。また、C型肝炎ウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者のウイルス量は女性の方が低いことが知られています。このように免疫応答に性差生まれる原因の一つに、ウイルスRNA認識に重要な受容体(TLR‐7)はX染色体にコードされているので、X染色体を二つ持つ女性の方がこの受容体の発現量が多く、その差が抗ウイルス免疫応答に性差を生んでいるのです。

 

 また、動物実験において、コロナウイルス感染後の免疫反応として、雄マウスは単球、マクロファージ、好中球などの自然免疫系の細胞が、肺出潤が強く重症化しやすいこと、雌マウスにおいて卵巣摘出を行うと、重症化・死亡の雌雄差が見られなくなることから、性ホルモンを介した免疫応答の制御の差が重症度に大きく影響していることが示されました。

 

 新型コロナウイルスの宿主受容体であるACE2発現量も性ホルモンに制御されているなど、新型コロナウイルス感染症に関する様々な因子の性差が報告されています。

 

 免疫反応の詳細については割愛しますが、この性差があるから女性は感染しても大丈夫というわけではありません。ワクチン接種など感染予防により感染者数の減少が大きな意味を持っていると思われます。(死者の数や変異株の出現などに対して)


昭和堂薬局 | 2021年9月2日

 

着床不全じゃないですか?

 体外受精・胚移植において複数回の胚移植にもかかわらず着床が成立しない場合を反復着床不全といいます。(3~4回の良好胚移植で妊娠が成立しない場合)
 着床不全の原因としては、胚の質や子宮内病変などがあげられますが、それらが問題なくても着床しない場合、免疫因子が関与していると可能性が考えられています。(子宮内の細菌叢が着床・妊娠維持に関係していると考えられています。この細菌叢も免疫因子に関係しているのかもしれません。)

 

 妊娠は半分非自己である胚を母体が受け入れるために免疫寛容が必要で、免疫寛容のメカニズムはさまざまな因子が絡み合い妊娠の成立・維持が行われています。しかし、そのメカニズムは完全には解っていませんが、着床不全や不育症はヘルパーT細胞(Th細胞)やナチュラルキラー細胞などの免疫異常が関係していると言われています。

 

着床のメカニズム
 黄体中期の着床時期になると子宮内膜組織へ免疫細胞の浸潤、接着分子やケモカイン、成長因子、サイトカインの同時発現が起こります。子宮内NK細胞は細胞障害性が弱く保護的に働き、TNF-α、Th1細胞、IL-15などの炎症誘導性サイトカインや免疫細胞が、接着分子や非接着分子を調整することで胚の接着が完成します。子宮NK細胞はサイトカイン(IL-8)などを産生し、子宮内膜の間質細胞が分泌するケモカインとともにトロホプラスト(胎盤をつくる絨毛細胞)の浸潤を調整しています。マクロファージはアポトーシス性トロホプラストの排除と子宮内膜のリモデリング(再構築)を調整し、胚の浸潤を調整しています。子宮内の免疫寛容誘導性樹状細胞は制御性T細胞(Treg)の活性化や増殖をコントロールし、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、細胞性免疫の主役である白血球(顆粒球、単球)の分化誘導作用をもち、Th細胞が産生している)はこの樹状細胞を調節する重要な因子です。

 

 非常に難しい説明になってしまいましたが、簡単にいうと月経期から着床期は1型免疫反応(Th1)が優位になり着床していきます。その後、2型免疫反応(Th2)が優位になり妊娠が維持されます。

 

 以上より、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーがあったり、何らかの原因で体に炎症があったり、強いストレスがあるなどで着床しにくくなるのです。

 

 日頃から、生活のリズムを整え、食生活を疎かにせず、適度な運動などでストレスを発散しましょう。コロナ禍で、思ったような生活がしにくいと思いますが、工夫をしながら上手く生活していくコツを掴んでみてください。


昭和堂薬局 | 2021年8月28日

 

ポジティブな感情がアレルギー反応を緩和する

 「医学のあゆみVol277.No13」という雑誌のトピックスに、「脳内報酬系の活性化はアレルギーを緩和する」が載っていました。

 

 それは、「花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の臨床試験では、患者の前向きな感情が薬効と無関係に治療効果を高め“プラシーボ効果”が強く出て、薬効評価が困難になることが多い」らしいのです。そこで、マウスを使って、実験的に前向きな状態である脳内ドパミン報酬系を活性化して、アレルギー反応に与える影響を研究しています。

 

 結果、前向きな感情をつかさどるドパミン報酬系の活性化はアレルギー反応を緩和する。また、ポジティブな精神状態を生み出す脳内ネットワークとアレルギーを生じる免疫の仕組みが密接にリンクしていることを証明しました。

 

 以前より、プラシーボ(偽薬)効果は、この薬が効くのではないかという期待が報酬系を活性化して起こっているのではないかと言われていました。それを実証した事と神経が免疫系を調整し、アレルギー反応を緩和したことを証明した事は、単なるアレルギー症状を緩和する抗アレルギー剤では解決できなかった。本当の意味でアレルギーを治す事への可能性が見えてきたことではないでしょうか。

 

 東洋医学では、起こっているアレルギー症状から体の変化を東洋医学の尺度で判断し体のバランスを整えて症状を起こらないようにしていきます。また、養生していただくことで再度同じ様な状態にならないようにしていきます

 

 多くの方がアレルギー疾患で苦しんでいますので、もし、自分でポジティブな脳の状態を意識的に作ることができれば、アレルギーが緩和されるのかもしれませんね。ネガティブな思考の人が病気になりやすいのですが…


昭和堂薬局 | 2021年8月17日

 

新型コロナ感染症重症化リスクが高い肥満

 肥満は、いろいろな病気の第一歩です。生活習慣病はもとより、心・脳血管系の病気や癌などあまり関係なさそうな病気までリスクが大きくなります。

 

 最近、言われていることが、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクです。実際医療現場ではそれを直面しているそうです。また、肥満の程度によりますが、脂肪がつきすぎて挿管ができなかったり、エクモという人工肺がつかえないケースもあるそうです。
 相対的危険度が1.2~1.8とされています。約2倍です。かなりリスクが高いと言えるのじゃないでしょうか。
鳥インフルエンザのときにも、肥満のリスクは知られていたので、新型コロナウイルス感染症だけというわけではないのですが

 

 そのメカニズムは解っていないのですが、①肥満症ではウイルス感染効率が高まる、②ウイルスに対する防御が低下する、③過剰な炎症反応で、血栓ができやすく肺血栓・心筋梗塞・脳梗塞につながる。などがあるそうです。

 

 一般的に肥満がそれほど体に悪いことだと思っていない人が多いように思います。しかし、実際に新型コロナウイルス感染症になって重症化して、太っているので挿管などできないので… と言われたら

 

 現在、かなり感染者数が増えています。今のうちに対策をとっておいたほうがいいのではないでしょうか。


昭和堂薬局 | 2021年8月3日

 

「精神疾患の病因は脳だけじゃなかった」

 表題の「精神疾患の病因は脳だけじゃなかった」は実験医学6月号の特集の見出しです。精神疾患は、一般的にはうつ病や統合失調症、自閉症などですが、神経変性疾患に伴う認知症など、高齢化社会を迎えた現代は益々増えてきそうな疾患です。

 

 そのような中、精神疾患に関する研究が進んでいます。しかし、精神疾患の治療は、多くの研究が反映することなく、未だに脳内伝達物質であるモノアミンをターゲットにした薬物治療です。これは病態生理メカニズムの理解に基づいた治療ではないと、この書籍では言っています。(所謂対症療法?)

 

 多くの精神疾患の方が漢方相談にお見えになります。精神神経の病名のほとんどは、過去に相談されているように記憶しています。

 

 東洋医学の考え方は、何かが起こっている場所だけを見ることはありません。例えば、今回の精神疾患であれば、脳で起こっていますから、脳だけのことを考えて薬を選ぶことはありません。どうして、どこから、脳に至ったのかを心身の全体像から判断します。(脳といいましたが、東洋医学では、脳の機能と物質である脳自体を区別して考えるのですが)

 

 東洋医学での精神疾患に対する見立て方は、元々脳だけじゃなかったのです。
今後、精神疾患に対する研究が進み、よりよい対処法が出てくれば良いですが、まだ暫く時間がかかりそうですので、東洋医学的アプローチもしてみてもいいんじゃないですか。


昭和堂薬局 | 2021年7月31日

 

日野にある善行寺の季刊誌「やすらぎ通信」より

 日野にある善光寺発行の季刊誌「やすらぎ通信」に掲載されたコラムを私が担当したので、ここでその内容を紹介させていただきます。

 

 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まり少しずつではありますが、一安心している方もいらっしゃるかもしれません。(引き続き感染予防はしなくてはいけませんが…)
 2019年末に中国から出現した新型コロナウイルス感染症。それから1年半たった今でもまだ収まる兆しすら見えていません。5月31日現在、日本の累計患者数746,933人。日本の人口当たりでは0.596%。死亡者数は13,059人で、人口当たり0.01%、感染者数当たりでは1.75%です。数字にするとそれほど多くない感じがしますが、近年これ程の感染症はありませんでした。

 

 人類の歴史においては、様々な感染症と戦ってきました。14世紀のヨーロッパで流行したペストが有名です。(余談ですが、この時、医師は逃げてしまいましたが、薬剤師が最後まで患者さんの対応をしたことで、ヨーロッパでは医師より薬剤師の地位が上なのだそうです)

 

 その後感染症の病原体や対処法がわかり始めたのが、19世紀後半と言われています。その頃からは感染症の死亡数も減少しています。しかし20世紀後半から、エイズやSARSのような「新興感染症」や結核やマラリヤのような「再興感染症」が問題となっています。そして、新型コロナウイルス感染症です。どうしてまた、感染症が問題になっているのでしょうか?
 ある程度克服したはずなのに…。

 

 前置きが長くなりましたが、このようなことが世界的に起こった背景には、もしかすると現代の食生活や生活習慣に問題があるのかもしれないと私は思っています。(アレルギー疾患が多くなっていることと同じようなメカニズムではと思います)

 

 我々人間は、多くの細菌と共存しています。皮膚や腸管などの粘膜に細菌は存在しています。その代表が腸管で、500~1000種、数は100兆~1,000兆個の腸内細菌が腸内細菌叢(フローラ)を形成し、我々人間と共生関係にあるのです。近年、この腸内細菌の生理的・免疫的役割が少しずつ解ってきています。この腸内細菌叢に影響を与えている物は、食事やその人の生活環境です。衛生的な環境が、アレルギーを多くしているとする説もあります。(あまり雑菌だらけなのも問題ですが…)。そこで、食生活を改善し腸内環境を整えて、病気にならない体づくりをご提案します。発酵食品の薦めです。日本人は昔から多くの発酵食品を摂ってきました。また、日本人は食物繊維も多く取っていたので、腸が長かったそうです。(胴長短足⁈)そして便も多かったらしいですよ。

 

 発酵とは一体何なのでしょう
 発酵とは、微生物の働きによって物質が変化し、人間にとって有益に作用することをいいます。微生物という目に見えない小さな生き物が働いた結果が「発酵」です。発酵を行う微生物のことを総称して「発酵菌」といいます。発酵菌は、発酵により香り成分や新しい味わい、色、栄養価を作り出します。それらの成分がとても美味しく、健康によく、食品の保存性を高めるため、私たち人間は古くから「発酵食品」を作って食べてきました。はるか遠い昔、アラビアの旅商人が山羊の胃袋で作った水筒にミルクを入れて旅立ったところ、数日後に水筒の中から独特の旨味のある白い塊が出てきました。これが発酵食品の起源ではないかと言われています。

 

 紀元前の中国の古書「周礼」や孔子の「論語」、日本最古の医学書「医心方」にも記述がみられる発酵食品は、洋の東西を問わず人々の食生活に影響を与えてきたようです。先人たちは発酵食品が身体にいいことを知っていたのですね。

 

 発酵食品は、その国の気候風土、産物、嗜好性が大きく反映されています。世界各国の民族性や信仰などと関わりを持ちながら、伝統的な食文化を作り上げています。

 

発酵のメリット
・香りや旨味が増す 

 発酵食品を美味しく感じるのは、発酵作用を行う微生物により、元の食材にはない独特の香りや味わいが生まれるからです。
・栄養価が高くなる 

 微生物が、食材を分解・発酵するときに産生される酵素の作用で、新しい栄養成分が生み出されます。また乳酸菌や酵母のように、発酵させる微生物自体にも良い影響を与えるものがたくさんあります。更に、発酵によって体内へ食品栄養成分の吸収がよくなります。
・消化が良い

 食べる前から微生物の働きである程度分解されたものであるため、体に入った際に吸収しやすくなっています。
・保存性が良い   

 発酵によって、発酵菌である微生物が増えているため、他の菌の繁殖を抑えるので、腐敗菌の増殖が抑えられ、保存性が高くなります。

 

 腸内環境
 腸内細菌叢は、食事や生活環境などの影響を受けます。人はその人の母親のお腹から出てきた段階から細菌を受け入れて、母乳によって少しずつその人の細菌叢が決まってきます。
腸内細菌叢を構成する菌種は、多様な分子構造により我々人間の腸管免疫系の誘導・教育・機能獲得などに影響を与えます。近年、腸内細菌叢の乱れが炎症性腸疾患だけではなく、肥満、糖尿病、脳神経系の異常、アレルギーなど様々な疾患との関連が報告されています。
そのような観点からも、発酵食品を取り入れることで腸内環境を整え、健康な生活を送れるようになりたいですね。

 

主な発酵食品
豆類   : 納豆 醤油 味噌 豆板醤 豆腐ようなど
魚介類  : 鰹節 塩辛 くさや 魚醤 アンチョビ 酒盗など
肉類   : 生ハム サラミなど
乳製品  : チーズ ヨーグルト サワークリームなど
野菜・果物: ぬか漬け キムチ ピクルス ザーサイ メンマ かんずりなど
穀物   : 甘酒 米酢 黒酢 みりんなど

 

 

腸内環境のちょっと難しい話
 人の腸内には人の全細胞を上回る数の常在微生物が存在しています。その微生物叢は「マイクロバイオータ」と呼ばれています。マイクロバイオータは宿主(人や動物)における免疫応答やエネルギー代謝のみならず、神経系の発達や機能にも関係しています。
 マイクロバイオータは植物残渣を発酵分解し、宿主のエネルギー源となる短鎖脂肪酸や補酵素(ビタミンBやビタミンKなど)を提供しています。生体で消費されるエネルギーの約1割は、この微生物発酵で供給されています。その他にも、インドール系化合物や水酸化脂肪酸、ポリアミンなど多くの代謝物を産生し、その一部は宿主と微生物間の伝達分子として作用しています。 さらにマイクロバイオータは、セロトニンやドーパミンのような神経伝達物質や酪酸などのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を産生します。(免疫に関係)
 このようにマイクロバイオータは宿主と良好な共生関係を築き、生体機能に有益な作用をもたらします。一方で、共生バランス失調は、免疫関連疾患や代謝性疾患など全身性疾患の素因や増悪因子になります。その共生バランス失調は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患や自閉症、統合失調症といった精神疾患においても観察されています。


昭和堂薬局 | 2021年7月1日

 

新型コロナウイルス感染症の重症化メカニズム(サイトカインストーム)について

 新型コロナウイルス感染者数が下げ止まり、緊急事態宣言も再々延長される可能性があります。

 

 多くの方が、この感染症に恐れや不安を抱えて生活されているのではないでしょうか。重症化することなく治ってしまえばいいのですが…

 

 この感染症の重症化のメカニズムであるサイトカインストームについて、今言われているメカニズムについてお話します。

 

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の肺への感染に伴って局所の自然免疫系が活性化し、少し遅れてウイルス特異的な獲得免疫系が活性化します。通常はこの時点でウイルスは除去され重症化に至りません。

 

 しかし、T細胞、特にヘルパーT細胞がより活性化してサイトカインが産生され、それらを受けとる非免疫系細胞、特に肺胞上皮細胞、血管内皮細胞でのIL-6(炎症性サイトカイン)アンプ(IL-6産生増幅回路)が活性化し、NF-κB(転写因子)経路が過剰に活性化すると、IL-6を含む大量のサイトカイン、ケモカイン、増殖因子が産生される状態となります。

 

 この時、SARS-CoV-2ウイルスがACE2(レニンアンジオテンシン変換酵素2)を介して感染することより炎症反応を強める結果となります。これらの強い炎症反応から産生される大量の液性因子は、ウイルス排除に重要なT細胞の疲弊、アナジー(不応答)を引き起こし、その結果、ウイルスが肺以外の臓器に血管内皮細胞を介して感染します。

 

 こうして炎症反応が拡大し、更に大量の液性因子が産生されます。このような大量の液性因子は、血栓誘導も含めてさまざまな臓器の機能不全をもたらし、人のの命を奪います。特に、加齢、既往歴、ストレスなどをもつ場合には、老化した線維芽細胞などの非免疫細胞が過剰にIL-6を産生し、IL-6アンプを過剰に活性化します。

 

 ここでは、IL-6は、主に非免疫細胞にNF-κB信号を増幅する副信号のように機能してサイトカインストームを誘導します。

 

 以上のようなメカニズムのようです。このことをなるべく防ぐためには、元々体が炎症(慢性炎症)を帯びていない状態にすることが重要です。日ごろから油の多い食事を避け、発酵食品や食物繊維を意識してとるようにして、規則正しい生活をしましょう。元気で健康な体作りが予防の早道です。


昭和堂薬局 | 2021年3月13日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。