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妊娠の不思議

 妊娠については、謎が多いものの、妊娠についての構造や基本的な発達段階はわかってきています。受精から1週間以内に「栄養膜細胞」という特殊な細胞が胚の表面に現れます。この細胞が胚の存在を母体に知らせ、子宮壁に穴を開け、子宮に入り込みます。子宮に入り込んだ後、この栄養膜細胞は急速に分裂し、放射状に突起を伸ばしていきます。その後、栄養膜細胞から構成される「細胞性栄養膜」の上に融合した細胞層(合胞体性栄養膜)が重なり、これが胎盤の表面になります。胎盤は最終的に、分岐構造によって子宮にくっついた円盤状になります。これらの分岐は受精後2~3週間で支持細胞と血管によって満たされ始め、その後成熟して絨毛膜絨毛と呼ばれる構造になります。

 

 妊娠が順調に進むかどうかは、母体と胎児の境界部分の活動にかかっています。この境界部分が母体から胎児へ酸素、栄養、体液を供給しますが、それが適切に発達して機能するには、胎盤の細胞と子宮、更に母体の免疫系の協調が必要です。

 

 胎盤の発達と機能の詳細はまだ不明な部分が多くあります。大きな謎は、何が分娩を引き起こすのかという疑問です。分娩の時期が来ると休止状態にあった子宮筋が、大きな力で収縮して赤ちゃんと胎盤を押し出します。その時までしっかり子宮とその血管にしっかり結合していた胎盤がどのようにして分離するのだろうか?また、胎盤は通常病原体や毒素をブロックしているのに、いくつかのウイルスや炎症性物質は胎盤を通過し、胎児に達し異常を引き起こすのだろうか?

 

 まだまだ、不思議なことが多い妊娠ではありますが、もしかすると、母体の環境が大きく関係している可能性もあります。妊娠前から、血流を良くしておくこと、腸内環境を良くしておくこと、食生活などは見直しておくことが必要なのでしょうね。


昭和堂薬局 | 2018年4月9日

 

漢方療法推進会中医不妊特別セミナーの終了証を頂きました。

 

 去る12月10日に第6回中医不妊特別セミナーが開催されました。講師で中医師の周軍先生より、修了証書を頂いてきました。今年の2月から6回シリーズで不妊症に対する漢方薬の使い方から養生や周先生の症例などを丁寧にお話ししていただきました。

 

 私自身はこれまで多くの子宝に恵まれない方たちのご相談を受けてきたので、自分では十分知識があると思っていたのですが、新しい発見も多く改めてまだまだ未熟なことを実感しました。

 

 その後、最後ということもあり懇親会が開かれ、たまたま周先生の前の席に座らせてもらい懇親会でも不妊症以外にもがんの対応など、皆さんが日ごろ対応に苦労している質問に丁寧に答えているお話を聞くことができ、大変有意義でした。

 

 このような気さくな先生が身近にいらっしゃることは大変ありがたく幸せなことだと思っております。周先生ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。


昭和堂薬局 | 2017年12月13日

 

子宝のための中医学的養生法

 現代のライフサイクルの変化に伴い、子づくりをする年齢が遅くなるなどによって苦労されているご夫婦に出会います。食の変化やライフスタイルの変化による過剰なダイエット、夜更かしなど、そこまでにしてきたことやもしかするとご本人だけでなく、その親御さんの若いころの生活環境も影響している可能性があります。
しかし、過去をあれこれ言っても始まりませんので、これからどんなことをしていくといいのかを東洋医学的に考えてみたいと思います。

 

 東洋医学的に生殖を主る臓腑は「腎」です。この「腎」の力が旺盛であれば妊娠しやすいのですが、腎の力は28歳ごろをピークに衰えていきます。また、この「腎」の力は個人差が大きく、もって生まれたものや成長過程での生活環境なども影響します。

 

 その他には「肝」や「脾」が関係することが多くあり、血液の流れなども影響があります。前回のコラムで生理時の養生について書きましたが、月経期などに寒邪が入り込んで冷えてしまうこともあるかもしれません。

 

 まずは、生殖に大きくかかわってくる「腎」の養生法についてお話ししたいと思います。
「腎」の五季は「冬」でこれからの季節は「腎」の季節です。寒さも厳しくなる季節ですので冷えてしまうと腎の機能が衰えてしまいますので暖かくしておく必要があります。また、偏食や睡眠不足も腎の力を弱くする可能性があります。

 

 

 

 腎を助ける食べ物としては、鹹味(塩辛い味)です。塩辛いと言っても精製塩の塩化ナトリウムではなく、ミネラル豊富な天然塩です。天然塩には苦汁が入り、苦味は腎と対極にある心を助ける味です。また、お節料理は新年を祝う日本の伝統料理ですが、腎を補う食材がふんだんに使われています。黒豆や田作り、昆布などがその代表です。

 

 最後に、食べ物は自分の体をつくるものです。インスタント食品や加工食品のような化学物質が入ったものでよいのでしょうか?食材から作った本物の食事で自分の身体を作ってあげないと、いい子孫ができないのではと思ってしまいます。


昭和堂薬局 | 2017年11月27日

 

生理の時、気を付けてますか?

 月経は女性特有の生理現象です。女性は月経の時は何かと面倒なことが多いし、生理痛や頭痛など不快な症状も多く、養生なんてと思われるかもしれませんが、自分ではたまたまと思っていることが生理の時に起こっているのです。

 

 漢方相談をしていて感じることは、女性が風邪を引くのは生理中が多く、これは月経中は血室(子宮)が開いているので邪気が侵入しやすく、また月経によって出血すると同時に気も出ていくので体を守る力も落ちているため風邪を引きやすくなるのです。

 

 月経中は、月経による出血で体力が低下している時ですから、激しい運動をして体力を消耗したり、雨に濡れて体を冷やしたりすることは好ましくありません。寒邪や湿邪などを感受して、気血の流れが悪くなり月経痛がひどくなったり、月経不順になったりしますので、月経期間中は冷えないよう保温に注意をしましょう。

 

 また、仕事や勉強で夜更かしして睡眠時間を減らすこともあまりよくありません。睡眠中に陰血は補われるので十分な睡眠が必要です。基本的には女性は男性より1時間は多く寝た方がいいと言われています。

 

 食事も節度を持って、激辛の食べ物を過食すると熱を発生するかもしれませんし、逆に冷たい物を食べ過ぎると体が冷えてしまいます。忙しいから簡単にお菓子やインスタント食品で済ませるのも可能な限り減らすよう努力してみてはいかがでしょうか。

 

 月経期間中以外も何をしてもいいわけでもなく、男性であれ養生は大切なことなのですが、女性の月経期間中は特に注意をした方がいい時期です。気持ちが昂るようなことは避けて、睡眠を十分とり、養生をしてみてください。


昭和堂薬局 | 2017年11月2日

 

中医学的にみる性差 ~女性の中医学的特徴~

 人には、男性と女性の違いがあります。解剖学的にも、生理機能的にも違いがあります。中医学において男女を陰陽で分けると男性が陽、女性が陰となっています。
また、女性には月経、妊娠、出産、授乳があり血を消耗しやすいという特徴があります。これらのことから女性にとって血が重要な要素になります。

 

 異なった側面からの見方をすると、気持ちが塞ぎ込むことで、気が停滞し、血が滞るといろいろな病気になりやすくなります。女性はその傾向が顕著であり、これは肝は血を蔵すこと、肝は条達(のびのびとする様の事)を好む性質があること、情志と深く関わっており、血の不足が肝経におよび気血の伸びやかさが失われることにより衝任(前回コラムで説明)を損傷し月経、妊娠、出産に関係する病が発生してきます。

 

 婦人科疾患において五臓のうち、肝を調節することが重要です。肝は女性の先天であるという言い方もあり、これは肝が女性の発育と生殖に携わることを表します。また肝は乳頭部を管轄していることから、乳房部の疾患も肝経に関わっています。

 

 女性は肝や血とかかわりが深いことがご理解いただけたでしょうか。
そこで、今回は、女性のよくある症状であまり取り上げられない症状の一つである「月経前に乳房部が脹る(ひどいと痛む)」に注目してお話ししてみたいと思います。

 

 月経前の乳房部の脹りは、女性のよくある症状です。しかし、この症状を訴えて来店する方はほとんどいません。しかし、この症状は女性の心身の健康や妊娠・出産に影響する可能性のある症状です。実際、子宝の漢方相談に来られる方で、高プロラクチン血症がある方のほとんどは、月経前の胸の脹りがあります。その逆、胸の脹りがあると高プロラクチン血症というわけではないのですが…

 

 生理痛や生理前の胸の脹りなどはあって当たり前と思っている方が多いようですが、健康であれば無くてよい症状なのです。その時はつらいけど生理前後だけだから我慢することはあまりいいことではないかもしれません。もしかすると何か(病気)が隠れてるかもしれないですから…


昭和堂薬局 | 2017年10月16日

 

東洋医学的女性の生理

 前回お話ししたように、東洋医学における婦人科には長い歴史に培われた理論があります。
西洋医学的教育を受けてきた我々には理解しにくい点もあるのですが、2,000年前の書物に書かれてあることが今なお受け継がれ、理論として成立しています。

 

 下の文章が「黄帝内経」上古天真論に書かれた女性の生理です。
「女子は7歳になると腎気が盛んになり、歯が生え変わって髪が長くなる。14歳になると天癸が至り、任脈が通じ、太衝脈が盛んになり月経が下るようになる。そのため子どもをつくることができる。-中略― 49歳になると任脈が虚し、太衝脈が衰え、天癸が竭き、月経が停止する。そのため子どもをつくれなくなる。」

 

 14歳ごろ初潮が来て、49歳ごろ閉経するとありますが、現代もほとんど変わりません。食事や環境の変化はありますが、私達の体は2,000年前とほぼ変わっていないのです。

 

 以上のことから月経は、天癸(てんき)・臓腑・気血・経絡が協調して子宮に作用することにより生じる現象です。これら天癸・臓腑・気血・経絡の関係が崩れるとうまく月経が起きませんし、子供もできにくくなります。

 

 天癸とは、男女を問わず人体の成長・発育・生殖に影響する精の一種です。

 

 経絡は、情報伝達ルートとなり人体の各組織・器官を結び付けており、同時に気血の運行に関与して、全身を栄養します。その中で、女性と密接な関係があるのは奇形八脈の衝脈・任脈・督脈・帯脈であり、主にその生理機能は気血の運行に対して蓄積と溢出の調節を行うことです。その中で任・衝脈は婦人科疾患に特に重要であると言われています。衝脈の衝には要衝の意味があり、臓腑経絡の血すべてが帰り、十二経絡の要衝としての役割を果たしています。また、衝脈は経絡の海であることから「血海」と呼ばれ、月経は血によって機能するため、衝脈が盛んであれば月経は正常に行われます。任脈の任には任(妊)養、担任の意味があります。任脈は全身の陰脈を妊養するとともに、女性の妊娠機能に関与しています。

 

 少しわかりづらい東洋医学用語が多く出てきてしまいましたが、体は繋がっているため、各々の組織・器官が正常に働くことが重要ですが、特に天癸(精)が充分に満ちていて、妊衝脈が機能していることで、女性の月経・妊娠・出産のコントロールができるのです。


昭和堂薬局 | 2017年10月2日

 

婦人科と東洋医学 ~長い歴史に培われた漢方~

 古くから婦人科疾患には漢方薬がよく使われてきました。現代においても婦人科疾患は漢方薬の得意分野であることは変わっていません。これは東洋医学の歴史の中で古くから婦人科を専門科として設置し、その後長い歴史と経験を積み重ね、現在の日本や中国においても大きく貢献しています。

 

 3,000年以上前の紀元前17世紀、殷の時代の甲骨文卜辞には出産問題などが記載され、現存する古典著書「易経」に「婦孕不育」「婦三歳不孕(結婚後3年経っても妊娠しない)」などの記載があります。

 

 以前このコラムでも少し紹介していますが、2,000年以上前の最古の医学書と言われている「黄帝内経」には、女性の解剖・生理・診断などが記載されており、女性の成長・発育・老化(初潮や閉経など)のメカニズムが示されています。

 

 その後、張仲景という人の著書「金匱要略」では、月経病、妊娠病、産後病・雑病などを症候の描写や方剤治療について、現在も使用されている処方が30種類以上記載されています。2,000年近く前の処方が現在の多く使われていることは、その効果の裏付けではないでしょうか。

 

 女性には月経、妊娠、出産、哺乳といった女性特有の生理現象があります。「本草綱目」という書物には、「女性は陰の類であり、血を主とする。その血は上では太陰(月)に応じ、下では海潮に応じ、月に満ち欠け潮に満干があるように、月事も1月に1回あり、これに一致する。ゆえに月信・月水・月経という」と述べられています。

 

 「女性は血を主とし、血によって機能する。」また、「女科撮要」では、「経水は陰血であり、衝任二脈が主る。上がっては乳汁となり、下っては月水となる」と述べられており、月経の発生と調整は血の盛衰の影響を受けることを説明しています。これらのことから、女性は血の不足を起こしやすく、漢方的養生は補血が中心になります。

 

 以上のことからも、紀元前の昔から人間の体はそれほど変化していないのです。しかし、人間を取り巻く環境は激変しています。いろいろな面で便利になった現代ですが、便利になりすぎて体にとってはある意味、いい環境ではないのかもしれませんね。


昭和堂薬局 | 2017年9月13日

 

2月7日の読売新聞に主な医療機関の不妊治療実績が掲載されました

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 読売新聞は、昨年高度不妊治療を行う医療機関に2014年の治療実績などをアンケートし、その実績を発表しました。

 

 当店でも子宝についての漢方相談は多く、そのほとんどの方が医療機関にかかられています。ご相談に来られると、一応どこの医療機関に行かれているかを聞いています。最近は人気のあるところはなかなか予約が取れないそうです。しかし、読売新聞の実績を見ても、成績が良い医療機関にかかるのがいいように思いますが、当店に来られる方たちの評判を聞いていると、必ずしも表の上位にあるからいい訳でもないようです。

 

 漢方薬局選びもそうだと思いますが、医療機関を選ぶときも数字だけではなく、相性やその医療機関の姿勢なども考慮して選ぶことが大切なんでしょうね。

 

 今回、読売新聞の実績をみて、今か受診している医療機関を信頼されてるのであれば、すぐに変えたりしないほうがいいように思います。


昭和堂薬局 | 2016年2月10日

 

炎症と不妊症

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 女性の生殖器系の炎症が不妊症の原因の可能性の一つとして挙げられています。その炎症を発生させる代表的な物質がプロスタグランジンという脂質メディエーターです。このプロスタグランジンは痛みを起したり、子宮を収縮させたりします。一般的に痛み止めはこのプロスタグランジンの生成をブロックすることで痛みを抑えています。

 

 以前、このコラムで書きましたが、排卵は卵子だけが卵胞から飛び出るのではなく、卵丘細胞と卵丘細胞が分泌したヒアルロン酸を主成分にした細胞外マトリクスが卵子を守る形で排卵されて、排卵時の衝撃やプロテアーゼ(分解酵素)などから卵子を守ります。その後、卵管膨大部で精子と出会うと、精子は精子自体が持っている酵素でヒアルロン酸を分解しながら卵子に到達します。このときに同時並行で起こっている反応として、排卵時にはケモカインという物質が卵丘複合体を固くして守り、その後、精子と出会う頃にはプロスタグランジンにより卵丘複合体がほぐされて、受精を促しているのです。

 

 排卵前後で痛み止めを飲むと受精が阻害されることがいわれるのは、このプロスタグランジンが十分働けないためなのです。

 

 しかし、このプロスタグランジンは妊娠過程において良いことばかりをしているわけではありません。不妊症につながる代表的な疾患に子宮内膜症があります。子宮内膜症は子宮内腔に存在するはずの子宮内膜が卵管や卵巣、腹腔といった異なる場所で子宮内膜が増殖してしまう疾患です。このとき、子宮内膜細胞などでプロスタグランジンを作る酵素が亢進し、結果的にできてしまったプロスタグランジンの刺激により子宮内膜細胞自体がエストラジオール(卵胞ホルモン)を産生して、更に子宮内膜を増殖しているのです。

 

 では、どうしたら良いのでしょうか?

 

 子宝希望の場合は、むやみに痛み止めを飲まないほうが良いと考えられます。(特に排卵前後)
プロスタグランジンは脂肪酸から作られる物質です。主に大豆油やゴマ油に含まれるリノール酸から作られます。この系統をω6系脂肪酸といい、現代の人達が好む加工食品などに多く使われています。そしてその加工食品の中の油は熱や酸化によってトランス脂肪酸が多く含まれています。このトランス脂肪酸からはプロスタグランジンはできないようです。しかし、このトランス脂肪酸は炎症の原因ともいわれています。

 

 いい働きをする反面、痛みや炎症を起こすプロスタグランジンなどの対極にある脂質がシソ油や亜麻仁油のω3系脂肪酸です。これらの脂肪酸をバランスよく摂取して過剰に働くことを防いであげるといいですね。

 

 どうしても、痛み止めが必要だったり、すでに子宮内膜症になってしまっている場合は、漢方薬で対応することもできますのでご相談ください。

 

 

 


昭和堂薬局 | 2015年11月10日

 

受精 ~卵子から見た受精~

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 生殖細胞は男性の場合は性成熟後も増殖、分裂が継続しますが、女性の場合は胎児期で終了してしまいます。これが、男性は高齢になっても生殖能力があるのに対し女性は生殖期間に限りがある所以です。女性の生殖細胞は、お母さんのお腹の中にいるときが一番多く、約600万個存在しています。その後、生まれた時には300万個になります。減数分裂(染色体が半分になる分裂)は第1減数分裂前期で停止しています。そして、生殖細胞(卵母細胞)は性成熟期(子供が作れる時期)には2万個に減少し、成熟して排卵に至る生殖細胞は400個程度と言われています。周期にもよりますが30年から40年間排卵することになります。45から55歳くらいまで排卵するということです。

 

 性成熟期の卵巣では、卵胞の発育は、原始卵胞から始まります。性腺刺激ホルモンの制御を受けるようになると発育を開始した卵胞(1次卵胞)はさらに発育し、顆粒膜細胞の増殖と第1卵母細胞の容積の増加が起こります(2次卵胞)。この時期の卵胞の発育には顆粒膜細胞と卵母細胞が互いに増殖調整因子を分泌する機構が存在します。さらに発育が進むと卵胞内に、卵胞液の貯留が起こります(胞状卵胞)。生理的には通常、最も発育の早い主席卵胞のみがグラーフ卵胞(成熟卵胞)となり、脳下垂体からの一過性のホルモン刺激であるLHサージ(黄体形成ホルモンが一過性に放出される現象)に反応して、LHサージ開始から36~42時間後に排卵が起こります。

 

 一方、LHサージを受けると、胎児期から休止していた第1減数分裂が再開します。形態的には卵核胞が消失し、減数分裂は完了します。このとき分離する染色体の組み合わせにより遺伝子の多様性は増加します。第1卵母細胞は第1極体(減数分裂により排除された核)を放出し、第2卵母細胞となります。細胞内に残った染色体は直ちに第2減数分裂中期に入り、細胞は卵子となります。ここで第2減数分裂は再び休止し、精子の進入によって再開します。排卵および精子進入は第2減数分裂中期に起こりますが、正常な発生に至るためには精子の進入は排卵後12時間以内に起こる必要があるとされています。このことから、卵子の寿命は12時間くらいということになります。

 

 排卵は、卵子とその周囲に護衛艦のように卵丘細胞や細胞問マトリックス(細胞間に存在する分子構造)からなります。また、卵子の周囲には透明帯と呼ばれる細胞外マトリックスが存在し、受精において重要な役割を担っていて、多精子受精を防いでいます。

 

 精子が卵子細胞膜と融合すると卵子の第2減数分裂が再開し、染色体は分離します。これによって、卵子から子孫に受け継がれる染色体の組合せが決定します。半数の染色体は第2極体として囲卵腔に放出され、卵子側に残った半数の染色体は前核となります。前核形成は卵子内の細胞質因子により制御されるので、精子の前核形成と同時に起こります。2前核期は約12時間継続し、精子、卵子の前核はDNAの複製に伴い容積を増しながら細胞の中心部に移行し融合します。次に前核の融合により4倍体となった染色体は直ちに分離し、第1卵割を経て2細胞期胚となります。

 

 この様にして受精は成立します。受精は単純に卵子の中に精子が入ることなんですが、非常に複雑なシステムで成り立っていたのです。
 この複雑で、神秘的なシステムがストレスや食べ物の影響を受けるわけですから、実際に妊娠に適した状態はそれほど多くないんです。だから、生活習慣や食生活が重要になっていくんですね。


昭和堂薬局 | 2015年3月30日


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