『昭和堂薬局』

メンタル疾患

メンタル疾患

現代社会はストレス社会と言われるように、さまざまなストレスがあります。IT化社会や成果主義の企業、核家族化など、様々な生活環境の変化により、我々は強いストレスを受けるようになり心の病気が増加しています。人間の心と体は繋がっているため、心の不調は体の不調として現れるようになります。
私たちの身体は、ストレスに対し、その場その場で適切に反応し、体温や血圧・心拍数などを一定に保っています。この生体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するために、作用しているのが自律神経と内分泌系です。自律神経系と内分泌系の中枢は、間脳の視床下部にあります。視床下部の機能は、神経伝達物質によってその機能が保たれます。ところが、強いストレスを受けると、この機能が阻害され、自律神経系や内分泌系のバランスが崩れ、様々な身体症状が現れてきます。近年、ストレスを感知する視床下部は、人の感情行動に深い関係を持っていることが分かってきました。ストレスを受けると、不安の感情を呼び起こしたり、気分を落ち込ませたりします。また、ストレスは、免疫系にも関連していて、ストレスを受けると免疫は低下します。

強いストレスを受けたり、持続的にスレレスを受けると
○心理面の変化
不機嫌になる・イライラする・気力の低下・強い不安感・気分が落ち込む・抑うつ状態
○身体面での変化
体のだるさ・疲れやすい・頭痛・動悸・めまい・胸の痛み・肩こり・食欲不振・胃部不快感・下痢や便秘・など
○行動面の変化
たばこや酒が増える・過食・刺激物や甘い物を好む・など

不安障害

強い不安や恐怖感が特徴である神経症性障害が不安障害で、従来の不安神経症、恐怖症、強迫神経症などを含みます。パニック発作、広場恐怖などの症状が出現することもあります。
パニック障害
突然、理由のない強い不安感、脅威・恐怖感などに襲われ、動悸、胸痛、胸が苦しい、息切れ、息が苦しい、のどに物がつまるような感じなどの自覚症状が出現します。実際に呼吸器の病気があるわけではないので、生命の危険は本来ないのですが、息が苦しい感じが強まると呼吸が激しくなり、過換気症候群に至ることもあります。また、胸痛が強まり、心臓が悪いのではないかという不安にとらわれてしまうと心臓神経症と呼ばれることもあります。
恐怖症性不安障害(広場恐怖症・社会恐怖症・特定の恐怖症)
必ずしも広い場所が怖いという意味ではなく、具合が悪くなったときに、逃げることのできないような場所(たとえば、電車の中やエレベーターの中などの狭いところ)、助けを得られなかったり、恥ずかしい思いをしたりしてしまうのではないかと心配になるようなところ(人ごみの中や、人のたくさんいる広い場所)などの、慣れた場所から離れた、孤立した状況で不安を抱いてしまい、それらの場所や状況を避けてしまうことです。
このために、家から一歩も外に出ないですごすようになったりします。さらに、発作が出ていなくとも、「また発作がくるのではないか」と不安になる「予期不安」も症状の1つです。
全般性不安障害
不安を感じる程度が過大で、いつも持続した様々な不安を感じ、日常生活をすることが困難になった状態で、少なくとも数カ月連続して毎日、不安な症状を示します。
心配:気がかり、イライラ感、集中困難
運動性緊張:そわそわした落着きのなさ、緊張性頭痛、振戦、身震い
自律神経性過活動:頭のふらつき、発汗、頻脈、呼吸促拍、めまい、口の渇き

不安障害の発作は、強い恐怖感がともなうことがあるので、周囲の人が一緒になって不安になってしまうと、ますます本人の不安を強めてしまいます。不安障害の発作であることがわかっているならば、身体的に心配はないとはいえ、本人の苦痛・不安は耐えがたいものです。そのつらさを共有・理解してあげると同時に、身体的には心配がいらないという考えを忘れずに、あわてることなく、本人のからだや手を押さえてあげるなどして安心感を与えるようにします。
治療
選択的セロトニン再取り込み阻害剤や抗不安薬でパニック発作を抑えたり、抗不安薬の服用で不安を抑え不安の悪循環を断ち切り、それでも発作が治まらない場合は、抗うつ薬の併用などにより治療が行われます。
また、不安障害の患者さんは、さまざまなことに対して自信をなくしており、過度に悲観的にものを考える癖がついていることが多いため、それらを治していくには、認知療法や、少しずつ行動範囲を広げて自信をつけていく行動療法、認知行動療法などが有効とされています。


気分障害

精神状態のうち気分の落ち込みに注目したものが気分障害で、うつ病はこの中に分類されます。
うつ病は、憂うつ感や興味の減退、焦燥など精神症状とともに、食欲減退、頭痛、疲労感などの身体症状も多く現れる病気です。特に、気分がひどく落ち込んだり意欲が低下するなど、精神面の症状が強く現れ、近年、急激に増加している病気です。
うつ病のメカニズム
うつ病の発症の原因は、ストレスや環境・性格・遺伝的要因などが相互に作用して発病すると考えられていますが、明確には分かっていません。
しかし、生理学的な側面から、うつ病をもたらす身体的メカニズムは、かなりのところまで分かってきています。
間脳にある視床下部は、自律神経の中心ですが、人の感情に深い関係を持っていることが分かってきました。視床下部の機能は、神経伝達物質によって保たれていますが、うつ病は、ストレスのどの影響を受け、この機能に異常が生じて感情や意欲などの面で障害が起こると考えられています。そして、抗うつ薬は、これらの神経伝達物質の利用率を上げる働きがあることも分かっています。
治療
うつ病は、心身共にエネルギーが低下した状態であること、病気であって単なる疲れではなく、ましてや、決して怠けているのではないことを自分自身や家族が理解することが最も重要です。この病気の特徴として判断力が鈍っているので、重大な決断は回復してから行うようにし、死にたい気持ちがあっても、それは病気の症状であるから絶対に実行しないように伝えます。家族としては、本人を励まさないこと、本人がしたくないことの強要をしないことが大切です。
・休養
・薬物療法
SRRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を最初に投与することが多く不安の強いケースでは、ベンゾジアゼピン系不安薬を併用する。
・環境整備
予防としては、よく眠ること・よく笑うこと・趣味を持つことが重要です。

漢方治療

ストレスによる疾患を考える上で重要な臓腑は、主に心、肝・胆、脾ですが、メンタル疾患は症状が多彩であるため、時期や強く出ている症状により薬を替えたり、組み合わせたりする必要があります。
心の異常によるもの
不眠・夢が多い・気持ちが落ち着かない・うわ言・反応が鈍い・健忘・意識がもうろうとする・胸痛・胸部の閉塞感・動悸・息切れなど。
安心薬を中心に使う。
肝・胆の異常によるもの
抑うつ気分・悩みや心配が多い・ため息が多い・気持ちが落ち着かない・怒りっぽい・不眠・夢が多いなど
疏肝理気薬を中心に使う。
脾の異常によるもの
食欲不振・倦怠感・めまい・集中できない・下痢・便秘など
補脾薬を中心に使う。
この他、症状や病気が長引いている場合などで上記以外の薬や健康食品(安心薬などはお茶や健康食品で代用しなければならないことがある)を組み合わせ、変化する症状に合わせていく必要があります。

最後に…

メンタル疾患は、なかなか周囲の人から理解されず、本人が孤独になり、ますます状況が悪くなります。家族や友人が手をさしのべ、少しずつ自信が持てるようにしてあげることです。焦ることなくじっくりと時間をかけ半歩ずつでよいのですから前に進みましょう。
ぜひ一人で悩まず、私どもと一緒に考えてみませんか。


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