『昭和堂薬局』

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(PCO、PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(以下PCOS)とは不妊症の原因の一つで、通常はひと月に1つ、優秀な卵胞が成熟しますが、あまり優秀でない卵胞が卵巣内にいくつもできてしまっている状態で、卵胞がたくさんあってもその中身は嚢胞状(中に水を含んだ状態)に変化してしまい、1つ1つは成熟しにくくなっています。
 また卵巣の表皮が厚く硬くなってしまうこともPCOSの特徴です。そのため、もし順調に卵胞が成熟しても卵巣の皮を破れずに排卵が起こらないということも起きます。

PCOSの人の超音波写真では右図のように、黒い穴(卵胞)がネックレスのように並んでいることから「ネックレスサイン」とも呼ばれています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCO、PCOS)

多嚢胞性症候群の症状

PCOSは排卵が起こりにくくなるために発生し、下記のような様々な症状が確認されます。
○月経不順・無月経・不正出血
○男性ホルモン過剰によるにきび・多毛
○肥満
 PCOSの9割の人に排卵障害があるといい、また排卵障害の人の20~40%が多嚢胞性卵巣症候群であると言われています。

多嚢胞性卵巣症候群の原因

POCSの原因には様々な説があり、未だにはっきりとは解明はされていません。しかし現在のところは内分泌異常、遺伝的要因、肥満、あるいは糖代謝異常などが考えられています。
 POCSの診断基準は日本産婦人科学会によって明確に分類されているものの、その原因は単一ではなく複数の原因が重なり合っているとも言われています。
○内分泌異常
 視床下部→下垂体→卵巣というホルモン分泌過程でLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が出て卵巣に働き、卵胞の発育を促しますが、PCOSでは、このうちLHの分泌が増えてFSHとのバランスの不調和が原因だと考えられています。LH-RH試験ではLH高値の状態になります。
○遺伝的要因
 POCSにおいて、X染色体の構造や数に問題があるという報告があります。実際にPCOSの方の姉妹や両親には、極端な多毛や肥満などの遺伝子的要因が見られることもあります。
 欧米では男性化徴候を重視していて、多毛や肥満、声の低音化、にきび、陰核肥大などの出現率が高いですが、日本では正常上限程度の症例も多いようです。
○POCSと肥満
 一般的に肥満女性にはPCOSが多いこと知られていますが、PCOSと診断されない肥満女性にも排卵障害の確率が高いことが報告されています。
 これは肥満が「アンドロゲン」の過剰産出を促進し、排卵率を下げてしまうことが原因と考えられます。またPCOSの治療後に妊娠した肥満女性が、流産率がやや高くなることが知られています。
○糖代謝異常
 POCSにおいて、インスリン抵抗性が関与していると以前から考えられています。実際にPCOS患者のインスリン抵抗性を調べてみると、血糖値や糖代謝に異常があるケースが多いことが報告されています。
 インスリン抵抗性が増大すると血中のインスリンが高濃度となり、卵巣でのアンドロゲン生産を促進するとともに、テストステロン(男性ホルモン)の濃度が高まると考えられています。


西洋医学での治療

すべてのPCOSの方が同じ治療が有効とは限らずに、その病態によって治療法を慎重に見極めていく必要があるようです。
 根本的な治療法はまだわかっていません。 妊娠を希望される場合は排卵誘発剤クロミフェンの服用や排卵をおこすための注射療法で排卵誘発を行います。PCOSの場合は、排卵誘発を行ったときに、卵巣過剰刺激症候群とよばれる副作用をおこしやすい傾向があるので注意が必要です。
 腹腔鏡下手術で卵巣の表面に小さな穴をたくさんあけ、排卵を促すと方法も行われることがあります。
 妊娠の希望がない場合は、月経を周期的におこすような治療を行います。これには、低用量ピルなどのホルモン剤を用いたホルモン療法を行います。
 近年PCOSにおいて、積極的にインスリン抵抗性改善薬メトホルミンが使用されるようになってきています。メトホルミンは体重減少には効果はありませんが、排卵率を増加させることが報告されています。
 メトホルミンは、インスリン抵抗性が高血糖の原因と考えられるインスリン非依存型糖尿病の治療薬です。PCOSの病因は、卵巣内アンドロゲン濃度の上昇であり、機能性卵巣アンドロゲン過剰分泌と理解されています。インスリンは直接卵巣に作用して、卵巣内のアンドロゲン産生を促進する働きがあります。PCOSの患者がメトホルミンを内服すると、血中のインスリンが減少し、その結果、卵巣内のアンドロゲンが減少すると報告されています。

多嚢胞性卵巣症候群の漢方療法

中医学的には中医学の物差しでその方の体質を調べて治療していきます。一般的には排卵期は気血の巡りが活発になり排卵を起こしますが、PCOSの方はなんらかの原因で気血が巡らなくなり卵胞の周りを異物(中医学的にはオ血や痰湿)が囲み排卵できなくなっていることと、卵胞の発育がよくないために排卵できない状態です。気血の巡り良くし異物を取り除く漢方薬や卵胞の発育を良くする補腎薬を使います。
 PCOSはホルモン異常やインスリン高値などが原因で起こる病気ですから、食生活特に甘い物の摂り過ぎ(市販の飲料に注意―糖分が意外に多い)や生活習慣特に睡眠不足に注意が必要です。これから胎児を宿し育てていくことを考えても食生活と生活習慣は見直し妊娠に備えておきましょう。


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