梅雨明け宣言が待ち遠しいくらい大気が不安定な状態が続いています。この梅雨が明けるといよいよ夏本番となるのでしょうが、気をつけたいのが熱中症。ここ数年多くの方がご心配されていることではないでしょうか?
熱中症のことを東洋医学では”中暑”(チュウショ)と呼び、この”中”は、食中毒の”中”と同じで、暑さに中ったという意味で、暑気あたりのことを指し体内に溜まった熱を放散できず、体温の調節ができなくなった状態で、かつては熱射病、日射病、熱けいれん、熱疲労などと呼ばれていました。
では、このとき身体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
東洋医学では高すぎる気温を”熱邪”、特に夏季にのみ存在し高湿を伴う熱邪のことを”暑邪”と呼び、病の原因の一つになるとしています。
それぞれの邪には身体に及ぼす影響に特徴があり、”熱邪”が身体に及ぼす影響は次のようなものがあります。
①熱感があり、身体がほてる、冷たいものを欲する。
②炎上性がある。具体的にはのぼせや目が赤い、口やのどが渇く、頭が割れる様に痛むなどの症状があらわれる。
③神明をおかす。熱邪は精神や意識に障害を与えることがあり、暑くてイライラする、暑くて眠れないなどの現象は熱邪によって神明が影響を受けており、甚だしい場合は意識の混濁や失神等の症状があらわれます。
④毛穴を開泄して大量の汗を出し、必要以上の汗を出すために身体にとって必要な水分(津液・しんえき)を消耗する。またこの際に汗と共に”気”と呼ばれるエネルギーも放出してしまうために疲れやすい、だるいなどの症状をあらわします。
⑤発疹ができたり、出血したりする。具体的な症状としては、あせもや赤い湿疹ができたりアトピー性皮膚炎が悪化したりする。発疹部位から出血したり、熱邪の影響で鼻血がでたりすることです。
⑥けいれんする。熱邪が極まると”内風”という現象が起こります。”内風”とは身体の動きを伴う症状で、具体的には震え、眩暈、痙攣、しびれ、ひきつけ等の症状を指します。
熱中症はこの”熱邪”によって身体が犯されていると捉えています。
では、熱中症に対し東洋医学はどのような対策をしていくのでしょう。
端的に表すと、”身体から排出するもの・失ってしまうものと身体の中に入るもののバランスをとる”ことです。
夏の暑さにより発汗量や呼吸により失うものと、補充するもののバランスをしっかりとれるような漢方が必要ということになります。
水分が失われるので、水分補給や摂取量を増やせばいいのではないか?と思われる方がいらっしゃいますが、実際に汗として排出されるものは単なる水ではなく、あくまでも”津液”と呼ばれる体液です。
失われた”津液”をしっかり補い、補充することが必要になります。
具体的にこの”津液”を補うためにはどうすればいいのでしょうか。
簡単にできる方法としては、ミネラル補給できるスポーツドリンクなどに「麦味参顆粒」や「麦門冬湯」などの体に潤いをもたらす漢方を溶かして服用するのが効率の良い”津液”の補充方法です。
また、夏場は冷たいものの摂取過剰によって胃腸機能が低下し、体内の水分バランスを崩し、体が重く、だるくなったり、浮腫んだりします。
このような場合には胃腸機能を回復させて、偏在している水分を体外に排出し、体のバランスを回復させることが必要で「六君子湯」「参苓白朮散」などの漢方薬が用いられ、胃腸が冷えてしまい吐き気やめまい、下痢が続く場合は「扶陽理中湯」や「回陽救逆湯」などを用いて回復させます。
どうしても、お仕事やお付き合いなどで炎天下の下に行かなくてはいけない場合は、「感應丸(かんのうがん)」や「日水清心丸」という強心・清心作用を持つ漢方薬をカバンの中に入れておき、なんとなく変だなと感じたらすぐに服用できるようにしておくと良いでしょう。
ご自身でできる熱中症対策もあります。ポイントは単純なことで、体に冷えを溜め込まないこと。そして、もし溜め込んでしまったら早めに解消することです。
具体的にはどうすればいいのでしょうか。
答えは、朝一番とお休みになる前は冷たいものを避けて、温かいものを摂取すること。そして、寝ている間にお腹を冷やさないようにすることです。
また水分補給をする際は、一度に大量の水分を摂るのではなく一口ずつ少量の水分をちょこちょこと飲むことです。
これは一度に大量の水分を摂ることで一過性に胃酸が薄められ、身体の恒常性(一定を保とうとする働き)によって胃酸が大量に分泌され、胃粘膜が障害されてしまうのを防ぐためです。
東洋医学の知恵を用いて、夏を元気に過ごしましょう!
どんな対策をしたらよいのかわからない?!という方は、店頭にてご相談ください。
スタッフ一同、ご来店をお待ちしております。