日本人の多くが罹っている病気の一つにアレルギー疾患があります。食物アレルギーなどは、原因であるアレルゲンを回避する生活をしていくために家族を含めた日常生活に負担がかかります。これらのアレルギー疾患に脂質(油)が関係していることが示唆され、食事から摂取する脂質の質の改善がアレルギーを抑制する可能性があることから多くの研究がされています。
我々の食事には、「目に見える油」に関しては認識しやすいと思いますし、摂取する油の質を変えることもできると思いますが、今の日本の食には「目に見えない油」が加工食品や原料に含まれているため、知らず知らずに油を摂っていることがあります。
脂肪酸は基本骨格に炭素が並んだ構造を持っていますが、炭素が16以上のものは長鎖脂肪酸とよばれ、更に炭素間の二重結合のあるなしで不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸のうち人間が合成できないため食事を通じて摂取しなければならないものを必須脂肪酸と呼びます。必須脂肪酸の中でも炭素鎖末端から3番目に二重結合があるものをω3脂肪酸といい、ないものをω6脂肪酸と呼ばれます。ω3脂肪酸はα-リノレン酸として亜麻仁油などに、ω6脂肪酸はリノール酸として大豆油やコーン油などに含まれます。
これら脂肪酸は、α-リノレン酸はエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサペンタエン酸へ、リノール酸はアラキドン酸へ代謝されます。その後、各酵素によってさまざまな脂質代謝物に変換され、その多くは生理活性をもつ脂質メディエーターとして働きます。この脂質メディエーターはアレルギー疾患の制御に関係していることが報告されています。
ω3脂肪酸から産生される脂質メディエーターはアレルギー疾患の炎症抑制に、ω6脂肪酸から産生される脂質メディエーターは炎症促進の誘導に関与するという報告がされています。
食べている油の質がアレルギー疾患の制御に関係していることが解ってきました。油を変えただけでアレルギー疾患が治るわけではないと思いますが、炎症を促進する油ばかりを摂っていると悪化の原因になる可能性は大いにあります。
アレルギー疾患が少しでも楽になるように油を変えてみませんか。
アレルギー疾患以外にも炎症が関係する疾患は多くあります。(もしかすると、全疾患炎症が関係している可能性もあります。)病気の予防に油の質の見直しをしてみるのは重要です。