運動不足が、肥満や糖尿病の原因の一つであることは皆さんご存知のことだと思います。しかし、運動してもカロリー消費が増えてどんどん痩せられるわけではありません。人間は長い間飢餓の時代を生きてきました。獲物が摂れなければ次いつ食べられるかわからない生活をしていたため、カロリー消費を節約し、摂取した物は貯めておくことで生き延びてきたのです。
人の消費カロリーを正確に測れるようになりました。このことで、今まで私たちが常識と思っていた、体を動かせば動かすほど消費カロリーは増えると思っていたことが事実でないことが判明しました。原始的な狩猟生活を送っているタンザニア北部のハッサ族の燃焼カロリーは男性1日約2600キロカロリー、女性1日約1900キロカロリーでした。これは通常都会で生活している成人と同じです(ただし、アメリカで「カウチポテト」と言われる極端に体を動かさない人たちは別にして)。運動でどんどんカロリーを消費し、体重が減ることはないのです。ハッサ族は狩猟でサバンナの原野を歩いているんですから…
しかし、よく「運動しなさい」って言われるのはなぜでしょうか
2009年にWHO(世界保健機構)が「死に至る危険因子」として高血圧、喫煙、高血糖についで「身体不活動」を4番目の原因と発表しました。「身体不活動」とは、一定の身体活動の目標値を満たしていないことです。(厚生労働省は詳しく目標を設定しています。)
身体不活動は心疾患、脳血管疾患、癌、糖尿病など様々な病気のリスクになりますが、特に糖尿病と関連があります。身体活動は骨格筋の糖代謝に影響し、糖尿病のリスクが高まります。糖尿病になると骨格筋の糖取り込みが、健康の人と比べ35~40%減少しています。糖を代謝するためには、細胞内のミトコンドリアに糖を運ぶ必要があります。通常インスリンが作用して糖を取り込みますが、糖尿病はこのインスリンが上手く働かなくなって細胞に糖を取り込めなくなるのです。これとは別に、身体活動によって筋肉が収縮するとインスリンがなくても糖を取り込めるので糖をエネルギーに変えることができるのです。
現代人は便利な物が多くあり、体を使わなくても生活ができます。しかし、飢餓の時代にできた人間のシステムは変わっていません。でも、楽しく運動出来て病気が予防できるのであればやってみてもいいですよね。