『昭和堂薬局』

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がんには免疫を上げればいいの?

 アスピリンを長期服用している人達が、服用していない人達と比べ大腸がんの発生が有意に低下することが疫学調査で示されました。アスピリンは非ステロイド性抗炎症薬で、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害してプロスタグランジンという痛みや炎症に関係する物質の生成を阻害する薬です。このことから研究が進み、COXががんの発現や転移、増殖に関係していることがわかってきました。

 

 このプロスタグランジンは、脂質中のリノール酸からアラキドン酸という物質を経てこのCOXによって作り出されます。正常細胞が何らかの影響でCOX-1によってつくられたプロスタグランジンE2が関係し、前がん病変ができ、その後、その組織の間質細胞で誘導型のCOX-2が発現していき、がんを発現させていくのです。

 

 また、国立がん研究センターのコホート研究では、いくつかのがんと魚の摂取量ががん罹患率に関係していることが示されています。この研究の考察では炎症抑制に働く魚に含まれる油の摂取が多いほど、ガンに罹り難いと言っています。

 

 この2つのことから脂質、特に多価不飽和脂肪酸の摂取ががんの発現や転移、増殖に関係がありそうです。

 

 このようにがんに対する研究が進みいろいろなことがわかってきており、疫学データも多く出てきています。

 

 一般的に、がんは何らかの要因で免疫力が下がり、それが原因でがんができてしまうと思われがちですが、それほど単純ではなく身近でも非常に元気な人ががんになってというような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに免疫が結果的に下がってしまうことはあるかもしれませんが…

 

 がんを予防する為や不幸にしてがんを患ったからといって、やみくもに免疫を上げればいいわけではありません。場合によっては逆にその行為ががん細胞を助けてしまうことにつながる可能性もあります。

 

 がん組織では炎症が起こっています。この炎症が起こらないようにすることががんの予防につながる可能性があるといえるでしょう。


昭和堂薬局 | 2016年1月27日

 

肥満遺伝子

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 日経サイエンスに“姿現す肥満遺伝子”という題目のお正月明けで気にしている方も多い肥満について興味深い記事が載っていたのでご紹介させていただきます。

 

 今日、現代人の肥満が問題視されています。肥満が原因で糖尿病などの生活習慣病が増えてきました。その原因はある遺伝的な変化が原因ではないかというものです。
 人類の祖先となった類人猿は,ある種の酵素の遺伝子が変異した結果、飢餓を生き延びたとみられています。現代における肥満と糖尿病の蔓延は,大昔に生じたこの遺伝子変異のせいである可能性が浮かび上がってきました。
 その遺伝子変異は“ウリカーゼ(尿酸酸化酵素)”という酵素の遺伝子に生じたもので、この“ウリカーゼ”はもともと尿酸を分解する酵素で、この酵素の遺伝子が変異したことによって食べた物を、その場でエネルギーとして燃焼するのではなく脂肪として蓄えられるようになったからだと言っています。しかし、飽食の時代の現在では、この変異が肥満や糖尿病の一因になっているというのです。

 現代の多くの人が慢性的に贅沢な(欧米型)食事を摂り過ぎているため、尿酸を分解する“ウリカーゼ”を持たない人間は尿酸が上昇してしまいます。しかし、食習慣によってこの上昇は変化し、人によってはその食生活で尿酸が上昇したりしなかったりするのです。その原因食品の一つに果糖があげられています。確かに生成された砂糖や加工食品などに使われる異性化糖(ブドウ糖果糖液など)が多く使われています。これらが増えるにつれますます肥満や糖尿病が増えていると指摘しています。これら精製された果糖を減らし、その分新鮮な果物などからとれば、果糖や尿酸の影響を抑えるビタミンCや抗酸化物質が含まれるので様々な病気の予防につながるだろうと述べています。

 

 日経サイエンスで述べている疫学調査や科学的理論については割愛しますが、自然に近い食べ物を食べ、適度に運動することが現代人には必要だと思われます。確かに簡単に摂れる便利な食べ物や飲み物が重宝されていますが、それによって病気が起こっているのであれば、すぐにでも止めたいですよね。


昭和堂薬局 | 2016年1月11日


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