『昭和堂薬局』

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中医学の便秘について

 前々回(8月15日)コラムで、腸内細菌叢と便秘についてお話させていただきました。 その中で紹介させていただいた「慢性便秘症診療ガイドライン」の中に漢方薬が挙げられており、エビデンスレベルが低く、また漢方の処方に偏りがあったので、実際の中医学における便秘に対する考え方をご紹介します。

 

 基本的に中医学は体全体を診る学問であるため、西洋医学と違い便秘は病気の中にある一つの症状であることが多いのですが、便秘を主症と考えてお話していきます。

 

1. 陽気が旺盛な人が、お酒や辛熱厚味の食品を過食して胃腸に熱が積して、陽の潤いを失い大便が秘結して排泄が困難になる場合(熱秘といいます。)

 

2. 過度の憂愁思慮のため情志不舒となり、気が鬱滞して通降が失調して大便が内停して下行することができず大便秘結となる場合

 

3. 虚弱な体質の人は気血両虚になりやすく、気虚では大便の伝送が無力になり、血虚では津液(水)が枯渇して大腸を滋潤できずに便秘となる場合

 

4. 陽虚で虚弱な人や老人で体力の衰えた人は、寒が内に生じて、これが胃腸に留まると、陽気が不通となり、便の伝送が困難になる場合

 

 また、便秘によって引き起こされる症状があります。便秘のため腑気が不通となり、濁気が降りることができず、頭痛・頭暈・腹中脹満、甚だしい場合は疼痛・脘悶曖気(胃がつかえてゲップがでる)・飲食減退・睡眠不安・心煩昜怒(胸がざわざわしてすぐに怒る)などの症状を伴います。長期に及ぶと痔を引き起こします。

 

 便秘は、単に下せば解決するわけではないので、病因に基づいて治療しなければいけません。 一般的に漢方の便秘薬というと下剤の類を想像する方が多いと思いますが、意外に下剤類が入った処方を使わないことが多く、すべての疾患にいえる事ですが、漢方治療においては、西洋医学の病名ではなく、漢方の診断基準を用いて、患者さんの主症状や悪化条件、体質などを分析し、きちんと判別していく事が最も重要です。


昭和堂薬局 | 2018年9月1日


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