中医学では、腹部腫瘤のすべてを癥瘕(ちょうか)と呼ばれています。その癥瘕には、西洋医学でいう子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤内炎症性腫瘤、卵巣嚢腫などが該当します。
癥とは、征(触れることができる)であり形があり堅硬で移動性がないものです。瘕とは、假(はっきりと触れない)であり、形が聚まったり散らばったりするものです。大雑把にいうと癥は血が集まったもので、瘕は気が集まったものと解釈しますが、臨床的には明確に区別ができないので癥瘕として扱い、問診で判断していきます。多くのケースは両方があると判断することが多いと思います。
19世紀後半から上海で活躍した三大大家のうちの一人、朱氏婦人科の書籍では、病因を4つに分けています。
① 産後に風寒を感受したもの
② 月経時に寒邪が入ったもの
③ 寒湿を下焦に感受したもの
④ 産後や月経時に、食事の不摂生や気候の変調があった物
以上の原因から血脈が渋り、経絡が滞り、トンネルが塞がったのであると述べています。
また、中医学の多くの古典でも寒邪の影響だと述べていますが、実際には寒邪の影響と判断されることは、それ程多くないように感じます。
処方的には活血理気薬を中心に使用しますが、形を伴うものであるために破血消瘀薬が必要なケースも多くあります。また、子宮筋腫など腫瘤を消失させることはなかなか難しいことです。一般的には閉経後、筋腫や内膜症などの腫瘤は自然萎縮することが多いようです。
しかし、妊娠希望のケースは月経を整えながら同時に筋腫や嚢腫が邪魔をしないように考慮していきます。