『昭和堂薬局』

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出産後1年未満の女性の死因について

 2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人いたと、厚生労働省研究班が5日発表しました。全国規模のこうした調査は初めて。この期間の妊産婦の死因では、がんや心疾患などを上回り、自殺が最も多かったそうです。
 妊産婦は子育てへの不安や生活環境の変化から、精神的に不安定になりやすいとされています。研究班は「産後うつ」などメンタルヘルスの悪化で自殺に至るケースも多いとみて、産科施設や行政の連携といった支援の重要性を指摘しています。

 

 性差医学では、うつ病の有病率は男性の1.5~3倍といわれています。年齢別でみていくと高齢になると男女差が顕著になります。また、マタニティハラスメントや保育園待機児童などの問題も女性が受ける影響です。
メンタルと性差に関しては古くから言われていて、「ヒステリー」という言葉の語源は古代ギリシャ語のhstera(子宮)だそうです。また、妊娠・出産という心身に負担のかかることを経ていることや性差医学の結果からもホルモンの変化が関係している可能性を示唆しています。

 

 東洋医学的に見ていくと、妊娠・出産・授乳により“血”が不足して“心”に血を送れなくなり不安や不眠を招いてしまったことと、生殖にかかわっている“腎”に負担がかかり“心”をコントロールできなくなった可能性があります。
 妊娠中から“血”を補うような漢方薬を飲んでおくと、このようなことが防げます。また、この傾向が出てきてしまった場合には、原因である心血を補い、心を安定させる安心薬が入った処方を中心に服用していくといいと思います。


昭和堂薬局 | 2018年9月19日

 

どうすればいいの? -糖尿病・メタボリックシンドロームー

 糖尿病(2型)・メタボリックシンドロームは生活習慣の乱れから、内臓脂肪の蓄積とそれによる慢性炎症が生じ、インスリン抵抗性を発症することが病態の基盤と考えられています。しかし近年、その病態に腸内細菌が関与することが明らかに成ってきました。

 

 また一方では、糖尿病やメタボリックシンドロームの原因と考えらえてきた食事や運動によって腸内細菌叢を変化させることも報告されています。

 

 食事については、以前考えられていたエネルギー過剰摂取による内臓脂肪蓄積ではなく、脂質の過剰摂取による腸管の慢性炎症とバリア機能障害が、インスリン抵抗性と糖尿病発症に重要であることが示されています。

 

 この腸内細菌叢の変化と腸管機能障害の改善が、糖尿病やメタボリックシンドロームの改善につながると考えられています。実際に乳酸菌などのプロバイオティクス、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスが、インスリン抵抗性の改善した報告があります。これは、腸管機能の回復により慢性炎症が回復したことが関与している可能性があります。
 逆に悪化させる食事は、高脂肪食・低食物繊維です。この高脂肪・低食物繊維食は、腸内細菌叢を変化させ、腸管バリア機能低下により炎症性物質であるLSPを吸収し慢性炎症を惹起しています。

 

 また、日常生活の中で我々が摂取しているいくつかの食品添加物によって腸内細菌叢の変化が起こり、腸管バリア機能などが障害され、糖尿病やメタボリックシンドロームが増悪する可能性も報告されています。

 

 以上のことから、糖尿病にならないためには、腸内環境をの改善が不可欠です。食物繊維や醗酵食品をしっかり摂り、腸内環境の改善に努めましょう。


昭和堂薬局 | 2018年9月14日

 

中医学の便秘について

 前々回(8月15日)コラムで、腸内細菌叢と便秘についてお話させていただきました。 その中で紹介させていただいた「慢性便秘症診療ガイドライン」の中に漢方薬が挙げられており、エビデンスレベルが低く、また漢方の処方に偏りがあったので、実際の中医学における便秘に対する考え方をご紹介します。

 

 基本的に中医学は体全体を診る学問であるため、西洋医学と違い便秘は病気の中にある一つの症状であることが多いのですが、便秘を主症と考えてお話していきます。

 

1. 陽気が旺盛な人が、お酒や辛熱厚味の食品を過食して胃腸に熱が積して、陽の潤いを失い大便が秘結して排泄が困難になる場合(熱秘といいます。)

 

2. 過度の憂愁思慮のため情志不舒となり、気が鬱滞して通降が失調して大便が内停して下行することができず大便秘結となる場合

 

3. 虚弱な体質の人は気血両虚になりやすく、気虚では大便の伝送が無力になり、血虚では津液(水)が枯渇して大腸を滋潤できずに便秘となる場合

 

4. 陽虚で虚弱な人や老人で体力の衰えた人は、寒が内に生じて、これが胃腸に留まると、陽気が不通となり、便の伝送が困難になる場合

 

 また、便秘によって引き起こされる症状があります。便秘のため腑気が不通となり、濁気が降りることができず、頭痛・頭暈・腹中脹満、甚だしい場合は疼痛・脘悶曖気(胃がつかえてゲップがでる)・飲食減退・睡眠不安・心煩昜怒(胸がざわざわしてすぐに怒る)などの症状を伴います。長期に及ぶと痔を引き起こします。

 

 便秘は、単に下せば解決するわけではないので、病因に基づいて治療しなければいけません。 一般的に漢方の便秘薬というと下剤の類を想像する方が多いと思いますが、意外に下剤類が入った処方を使わないことが多く、すべての疾患にいえる事ですが、漢方治療においては、西洋医学の病名ではなく、漢方の診断基準を用いて、患者さんの主症状や悪化条件、体質などを分析し、きちんと判別していく事が最も重要です。


昭和堂薬局 | 2018年9月1日


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