前回のコラムでは腸上皮細胞は6種類の細胞からできているとお話ししました。その上皮細胞は、生体バリアシステム構築のため、細胞間接着が強固になっていて上皮細胞シートが構築されています。その上皮細胞シートが強く結びついていることによって、容易に外からの異物を内に入れないようになっているのです。
では、6種類の細胞の解っている働きを簡単にご説明します。
(吸収上皮細胞・胚細胞・パネート細胞・タフト細胞・M細胞・腸内分泌細胞)
吸収上皮細胞は、その名の通り栄養素の吸収が主な役割です。一方で吸収上皮細胞は腸管上皮細胞の中で一番多い細胞で、防御機能も備わっていて、後でお話しするパネート細胞ほどではないのですが抗菌ペプチドを産生し、免疫細胞を活性化するサイトカインを産生しています。
胚細胞はムチンを産生することで粘液層を形成し、腸管上皮細胞に微生物が接着しないようにしています。(次回、もう一度、ご説明します。)
パネート細胞は、抗菌ペプチドを大量生産することで細菌感染に対する生体防御に貢献しています。また、パネート細胞は、腸陰窩部に存在する腸管上皮幹細胞ニッシュ(微小環境)の維持にも必要な細胞です。
タフト細胞は、存在自体は以前より認識されていたのですがその役割はまだわかっていません。しかし、昨年(2016年)に2型自然リンパ球という免疫細胞を活性化するサイトカイン(IL-25)を供給していることが明らかとなりました。
M細胞はパイエル板をはじめとする腸管関連リンパ組織を覆う上皮細胞層に分布し、微生物などの抗原を捕捉し免疫細胞にすみやかに受け渡すことで、抗原特異的な免疫応答を惹起しています。
腸内分泌細胞は、生体バリアに直接関係していませんが、消化管ホルモンなどを分泌して健康維持に貢献しています。
簡単に説明しましたが、これらのシステムが非常に重要で、細胞間接着が弱まってしまったり、腸管上皮幹細胞から6種の上皮細胞が適正に分化せず、極端にどれかの細胞が少なくなってしまうと我々の体の存在すら危ぶまれてしまいます。
腸上皮細胞は3~4日のサイクルで入れ替わると言われています。食事による食物繊維や細菌が刺激になり、これら上皮細胞は正常に分化し、正常に機能するのです。